【インタビュー】ロバート・ターナー(EMG,Inc)

インタビュー by 編集部 2010年1月5日

Xシリーズ、アレキシ・ライホ・モデルなど、新たな展開を見せながら進化を続けるEMGピックアップ。その総帥であるロバート・ターナーのメール・インタビューをお届けしよう!

 

ギター・マガジン09年12月号でEMGのピックアップ、Xシリーズについて紹介するとともに、ロバートのインタビューも掲載したが、その誌面には収まらなかった彼のピックアップへの思いを存分に語ってもらおう。

【The X Seriesについて】

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–Xシリーズにおいて、トーン・コントロールをアクティブ設計にしていると聞きました。今までのEMGのトーン・コントロール(25KΩのポットと0.1Mfのコンデンサー)との違いはどこにあるのでしょうか?

 

この質問は多くの方向を示唆するものですね。多くのギタリストたちはトーン・コントロールをほとんど使いませんが、中には頻繁に使うプレイヤーもいます。パッシブのトーン・コントロールは多くの点で制限をもたらします。パッシブもしくはアクティブ・ピックアップで使用する時の機能は、高いフリケンシーのピックアップ・インピーダンスによって異なるのです。典型的なシングルコイルには250KΩのポットと0.047Mfのコンデンサーを、ハムバッカーには500KΩのポットと0.022Mfのコンデンサーの組み合わせを用いています。抵抗値かコンデンサーの容量を下げることによって周波数帯を上げ、逆にそれらのいずれかを上げることによって周波数帯レンジを下げることになるというのが定説です。さまざまな種類のパッシブ・ピックアップ、例えばコイルの巻き数が多いピックアップ、ビンテージ、セラミック、アルニコを例に取ると、それぞれ異なった出力インピーダンスを持ち、結果的に思いもしないパフォーマンスを行なうのです。パッシブ・ピックアップはシグナルが固定されていて、インプットはありますが、個別の出力があるわけではありません。よって一方のピックアップにトーン・コントロールを付ければ、両者が選択された際には両方のピックアップに作用してしまいます。なので、特定のトーン・コントロールのために個別にピックアップを選ぶことができません。EMG-VLPFアクティブ・トーン・コントロールは独立したインプットおよびアウトプットがあるので、ほかのピックアップもしくはギター全体のシグナル・チェーンに影響を出さずに、目的のピックアップに対して効果を発揮させることができます。また、どんなピックアップのシグナルをも、どんなアクティブのEMGのトーン・コントロール(VLPF、 SPC、 RPC、EXB、BTC、その他のEMGのコントロール)に送ることも可能で、選択したピックアップのみに機能させることができます。これによってあなたの楽器のトーン・コントロールに従来の2倍の能力を持たせることが可能です。ひょっとしたら今までトーン・コントロールを使わなかったようなプレイヤーたちが、これを使い勝手の良い機能として取り入れていくこともありえるでしょう。

–Xシリーズのアクティブ・トーン・コントロールは、EMGのXシリーズではない他のアクティブ・モデルにも用いることができるのでしょうか?

EMG-VLPFアクティブ・トーン・コントロール・システムは我々が今までに作ったどのピックアップ,そしてどんなパッシブ・タイプにも用いることができます。VLPFの入力インピーダンスは250KΩで、どのピックアップにも用いることが可能ですが,VLPFの出力インピーダンスはXシリーズ(2KΩ)と同じになっていて入力感度が変化してしまうので,アクティブ・ピックアップとパッシブ・ピックアップが混在して搭載されたようなギターに用いることはできません。VLPFの出力インピーダンスをパッシブ・ピックアップの高い出力インピーダンスとミックスしても、うまく混ざりはしないでしょう。シグナルは常に抵抗が最も低い箇所を通るので、もうひとつのパッシブ・ピックアップと組み合わせた際にはVLPF搭載のパッシブ・ピックアップがシグナルを占拠してしまうことになります。

–Xシリーズの新しいプリアンプの特徴として、ヘッド・ルームがさらに大きくなったということがあります。EMGのウェブサイトにおいて、従来のモデルに18Vを用いることで同様の効果が得られると示されています。これらは何が違うのでしょうか? また、Xシリーズにおいて18Vのパワー供給を行なうことも可能なのでしょうか?

ある意味ではあなたのご指摘は正しいです。オリジナルEMGの供給電圧を18Vにすることによってほぼ同じ結果につながることでしょう。それでもプリアンプが高めのゲインで動いることには変わりなく、そうなるとプリアンプ自体がフルで動いていることになるので、プリアンプの伝達関数が違ってくる可能性もあるし、伝達関数が異なれば当然サウンドも変わってきます。またXシリーズを18Vで稼動させることも可能です。電源は最大で27Vまで用いることができます。

 

【ALX with ABQ EQ/Boostについて】

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–新しいモデル、”ALX with ABQ EQ/Boost(以下ABQ)”にまつわる開発エピソードを教えて下さい。

アレキシ・ライホ・モデルは、我々にとってメジャー・アーティストとエンドースを結んだ初のパッシブ・ピックアップです。何年も前、アレキシは所有のジャクソンのギターに誰かが設計したプリアンプを搭載して使っていましたが、これにはいくつかの欠点があったのです。我々は(彼が持っていた)昔のプリアンプを徹底的に再現したものと、まったく新しい設計のものを搭載した2本のギターを用意し、彼にテストしてもらったところ大きな笑顔とともに再設計したものを高く評価してくれたのです。アレキシは”これが俺の欲しいものだ。ありがとう!”と言い、それ以上の言葉は必要なかったのです。

 

–ALXのピックアップ・セクションはH2に基づいているものとうかがいました。どのような改良点が施されているのでしょうか?

 

ALXは典型的なH2に比べて若干巻き数が多いというところです。頭に浮かぶのはそれくらいのことだけです。

– ABQスイッチをオンにすることでどのような効果が得られるのでしょうか?

オリジナルのジャクソンのギターと同じように、EMGのABQは3点式のレゾナンス・スイッチとなっています。これのおもしろいところは、異なるピックアップにおいて異なる働きをすることです。そしてパッシブ・ピックアップのインプットに合わせて設計を行なっています。アクティブEMGとABQを組み合わせて使う場合は、ディップ・スイッチ(基板に組み込まれたプリセットのスイッチ)は、より高いインプット・インピーダンスを求めるため、ディップ・スイッチは機能しなくなります。一方でパッシブ・ピックアップはそれとはかなり違う出力インピーダンスを持っていることから、結果はかなり劇的に変わります。ブーストはまったくの別物です。アンプはある一定の量の入力があればフルパワーを出すことができます。ABQのオーバードライブや、楽器に組み込んだブースト・プリアンプを用いることで、アンプを即座にドライブさせることが可能なのです。アンプの入力部でのオーバードライブと、マスター・ボリュームを使って得られるダーティなトーンを得ることではディストーション・サウンドに大きな違いが生じてきます。入力部でのオーバードライブはよりダイナミックです。入力管をハードにドライブさせていて、ほかの段階からはディストーションを受けることはありません。これらでは結果がまったく異なります。これは真空管なのかトランジスタなのか、アンプがどんなスタイルのインプット部を有しているかに依存しますが、オーバードライブは真空管によるインプットのほうがわかりやすいと思います。

 

– ABQによって何dBのブーストが可能なのでしょうか?

トリムポットはゲインの量を調節可能にさせていて、プリアンプにより20dBまでのブーストが可能です。ただしプリアンプによってゲインを得れば、その分だけヘッド・ルームが減ってしまうことを念頭に置いていて下さい。9Vの電池により単一のゲイン(ゲイン1)を得る時は8.5Vのシグナルをクリーンな状態で得ることができます。ブーストを求めるとなると、例えば倍量のゲインを得ることによってプリアンプのヘッド・ルームは半分にまで切り落とされることになるでしょう。アンプをオーバードライブさせているだけでなく、ABQプリアンプをもドライブさせていて、ディストーションをさまざまな方法で作り出しているのです。

 

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▲ABQ


【その他の質問】

 

–EMGのアクティブ・ピックアップに搭載されたプリアンプは各モデルによって異なるのでしょうか? もしそうであれば各モデルの違いや施した変更点について可能な限り教えて下さい。

 

はい、各モデルすべて異なるプリアンプを搭載しています。コイルには異なる素材のマグネットを搭載していて、そのインダクタンス、コイルのスペーシングやその間隔も異なります。ですからプリアンプは低音域におけるキャラクターが異なっていて、共鳴する周波帯もさまざまです。これはEMGの製品のすべてにおいて言えることです。

–EMGのアクティブ・ピックアップのコイルの巻き数は今までのパッシブ・タイプのものよりも少ないそうですね。およそどのくらいの割合で少ないのでしょうか?

平均値を取ると30%ほど少なめになっています。いくつかの場合、例えばハムバッカー(81と85)では20%ほど、シングルコイルではモデルにもよりますが40%少なめです。

–アルニコ・マグネットについて、アルニコV以外のもの(例えばアルニコIIなど)を用いたモデルはあるのでしょうか?

アルニコVとIIの違いは微々たるものです。すべてのアルニコ・マグネットの組成の50%は鉄であり、これが設計上の最も重要なポイントとなっています。もしアルニコVを搭載したピックアップでたくさんプレイをすることがあっても、アルニコIIとの違いを十分に言い当てることはできないでしょう。2、3時間プレイしてもマグネットの特性によるサウンドに耳が慣れてしまい、ブラインド・テストで違いを当てることは不可能だと,私は確信を持っています。

 

【オカダインターナショナル(EMG)ホームページ】

ギター・マガジン09年12月号

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