【インタビュー】杉本善徳

インタビュー by 編集部 2009年9月18日

日本人の琴線に触れるメロディを生かしたジャンルレスな作風と、計算された奔放なギター・プレイが魅力の杉本善徳。現在発売中のギター・マガジン10月号にて、前作から実に2年半ぶりとなる2ndアルバム『オルタナティヴ』、そして、11月29日に渋谷AXで行なわれる『The END.』と題されたライブについてのインタビューを掲載中だ。ここでは本誌では紹介しきれなかったインタビューをお届けしよう。

ほかの人からすると予想外の弦をミュートして弾いていて、

“逆に、それどうなってんの?”みたいなのも多いみたい。

●ギターはツイン・ギターがベーシックなアレンジ・アプローチですよね?

○もしくはトリプル・ギターですね。

●それらは、ある程度コードをフォローするものと、いわゆるウワモノ的なものとを分けて考えますか?

○そういうのも多いし、今、ライブでは(サポートの)ギタリストをふたり置いているから、そのふたりの特色をある程度考える部分もあります。

それに、ここ数年、(キーボードの)パッドとかストリングスみたいな音楽的要素の”壁”になる部分で、特にパッドがダサイと思っていて。壁感をできるだけ違うもので出したくて、それがギターになることが増えました。

あとは単純に、案外、全員早いもん勝ち系出たとこ勝負系のプレイヤーを集めてやっていて、ベースも”ボトム”ってタイプのベースじゃないから、ギターに関して2本入れるんだったら、2本とも主張して”俺、ギターやってるよ!”みたいな感じにするよりは、ボトムになる部分として、どこかでフォークソングというか弾き語りにした時にも歌えるようになっている部分があったほうがいいのかな、と。

●Bメロになると、どちらかのギターが細かく遊ぶのが定番ですか?

○どうだろう?……サビが遊ばない曲は多い気がするけど、Aメロから悲惨なやつとかもけっこうあると思うし(笑)。

アレンジのクセで、あんまり最近はA、B、Cって構成になっていないけど、仮にBメロからサビにいく曲の場合は、もうBメロの段階でサビで通用するメロディを乗せることが多いんです。

で、例えばリズムがハーフのAメロの曲に対して、Bメロで倍テンしちゃうと、サビで強引に盛り上げないとダメで、それこそパッドとかで広げないとダメになる。レンジを広げてサビ感を出すよりは、リズムとメロディでサビ感を出したいので、じゃあBメロはリズム楽器に関してはAメロと同じノリで、今の例えだったらハーフのままいってくれと。でも全部がハーフのままだと曲が重いから、ギターでは16のものを入れるっていうのがけっこう多いですね。それで、サビのギターは16でリズム楽器はエイトとか。

●例えば、「LIFE」Bメロ右チャンネルの暴走系単音オブリは計算したプレイなんですか?

○「LIFE」はもう悲惨でしょ、ギターは(笑)。でも、これは計算してます。あの曲はけっこう退屈というかメロディもKeyが低くて単調で。だからスピード感を補う意味で、けっこうワザと突っ込んで録ってるし、その突っ込みに耐えるような音色にしている。

これ、たぶん、波形だけで見ると相当突っ込んでいるんですよ。ただ、その突っ込みがそこまで突っ込んでいないように聴こえるのは、もともとテンポが速いからわかりにくいっていうのと、音色をファズで作っていてねちっこいから、ピッキングがどこにあるかわからないフレーズになっているからかな。それは狙ってやったことで、録り方も”このサオとアンプの組み合わせで、このHA(マイク・プリアンプ)にこのマイク立てて”って、けっこう真剣に考えました。

●「KOTAE」のBメロも細かくなりますよね。

○「KOTAE」はBメロだけやたら細かいですよね。あれは、いきなり転調するから曲調も変えたほうがいいかなっていうのもあって。あの曲は仮タイトル「転調」で(笑)。イントロからAメロで転調するし、Aメロの中で転調するし、Bメロの中で転調するし、Bメロからサビで転調するし。その意味が出るようにフレーズを変えていっているところがあって、あそこはスピード感の出し方もけっこう悩みましたね。

●「KOTAE」の転調は、メロディがそうなっているというよりも、そのコード進行的なところがやりたかったんですか?

○う〜ん、両方かな。けっこう、俺、適当って言ったら変だけど、ひらめきで曲を書いているイメージがあるみたいなんです。もちろん、自分でもそれを重視してやっているんですけど、今回、俺が最初にCDを出してから10周年のアルバムで、”こいつ10年間運だけで曲を書いてきやがった”じゃ、まずいかなと思って(笑)。

そういう意味で、経験してきているものがちゃんと蓄積されていて、計算された曲も書けるんですよというのを出したほうがいいかなと。それでタイトルにも”答え”っていうのを出してきたんです。

今までも、けっこう転調は使ってきたけど、いつも”メロディがこういってしまったし、こう変えるしかないよな”みたいなのが多いから、今回の「KOTAE」に関しては少なくともコードもメロディも考えて書きました。

●以前から、”スケールやコード・ネームはわからない”と言ってますけど、それは経験としては知ってるけど、世間一般で言っている名前は知らないということですか?

○それも当てはまるし、経験としても知らないかもしれない(笑)。

人の曲を聴いていて”どうやって押さえてんの?”と思うこともよくあるし、そこで、”こうだよ”って言われて、”てことは、俺で言うと、この押さえ方しているフレーズ?”ってやると、”そんな押さえ方はないだろ”みたいな(笑)。

人の曲を聴いて、”この歌にこのコードでこの響きおもしろいな”っていうのが頭の中に残っちゃってることが多いけど、それを耳コピしてっていうほどもCD聴かないし、覚えてる記憶の中から、”こんな感じだったかな”って弾いてみると、ほかの人からすると予想外の弦をミュートして弾いていて”逆に、それどうなってんの?”みたいなのも多いみたいだし。全然学んでないよな、みたいな(笑)。だから「KOTAE」以外は、本当に理論的じゃないと思う。

 

音楽的な絶対音感はないけど、

「ガーリッシュマインド」の絶対音感はあるみたいな(笑)。


 

●Waive(杉本が以前やっていたバンド)時代の代表曲「ガーリッシュマインド」を新録していますが、バンド時代を含めて3回目の録音ですよね。なぜこの曲を?

○特に大きな意味はなくて。”10周年”って言うのと、9月30日にWaiveのベスト・アルバムが出るんですよ。そこでは「ガーリッシュマインド」はやっぱりはずせない曲だから入るだろう、と。その時にスタッフから「新旧のガーリッシュマインドが聴けるようにしたらおもしろいんじゃない?」って話が出て、それは理解できる話だと思ったんです。

で、「ガーリッシュマインド」って、もともとWaive用に書いた曲じゃなくて。結果的にその時Waiveってバンドをやっていたからそこでリリースをしたけど、”例えば、俺が自分で歌うならこういう曲がしたいな”って持っていった曲だったから、そろそろその時に思っていたことを具現化してもいいのかもなぁって自分でも思って。

●それでは、作曲した時の自分の意向が、ここでようやく形になったと?

○でも、そういう意味で言うと、真逆なんです(笑)。

もともと「ガーリッシュマインド」って、もっとパンクっぽい曲で。今のバージョンも含む3バージョンに、デモを足した4つの中で、デモが一番ガレージパンクっぽくて無茶苦茶でカッコイイんです。一番最初に無料配布した「ガーリッシュマインド」はドラムが打ち込みで、デジロックとしてはおもしろかったと思ってるけど、パンクっぽさなんか出るわけもなく。2作目はバンドでやってて、まぁ、言ってしまうと当時の演奏はヘタクソで。今回、前の「ガーリッシュマインド」のBPMはいくらか計ろうって、曲を鳴らしながらクリックを合わせたけど、全然合わない。”どのテンポやねん、これ”って(笑)。それぐらい無茶苦茶で、それはそれでカッコイイと。

で、今回はそれじゃ意味がないので、ちゃんとクリックでBPMを決めて録ったら、バックバンドでやってるからっていうのもあるかもしれないけど、うまくてちょっとどっしりしてて。”リズムだけで聴いてるからそう感じるのかな。ギターと歌が入ったら、そんなこともなくなるのかな”って思ってギターを入れても、”え、重!”って(笑)。

たぶん、俺も何年かギター弾いているうちに少しはうまくなってるからノリが変わっていて、”ずいぶんハードな「ガーリッシュマインド」やな”って感じになったんですよ。そういう意味では、曲を書いた当初に思っていたものとは、一番遠いんじゃないかなって。でも、歌を録ってできあがったものを聴いてみたら、これはこれで今のリアルな感じだし、カッコイイかもなぁって思うものにはなったから、これはこれでアリだとは思ってます。

それに、9年前に書かれた曲なのに、このアルバムに入って一番新しい曲と並べて聴いても、斬新さで別に負けてない感じがあって、そこにも入れる意味があったかなとも思う。

●この曲はリズム体さえしっかりしてれば、ギターはもう遊びまくるみたいなアプローチですよね?

○リズム体がしっかりしてない頃から、ギターは無茶苦茶ですけど(笑)。だから、あんまり考えないで弾くと、こうなる。でも、これも適当に弾いてるんじゃなくてちゃんとフレーズを決めて弾いてるから、同じように弾けるんですよ。

●自分の頭の中で鳴る、ちょっと不協和音感のある感じが、自分のベーシックなコード感のひとつとしてあるということですか?

○それもあるし、今は、曲を書いてから歌メロが自分に馴染んでないうちにギターを録っていることが多くて。そうなると、俺はもともと歌を歌っていたわけじゃないから、変な音が入っていると歌えないんですよ。

それで、歌のことを考えると、ギターは無難な音に逃げたくなっちゃう瞬間がある。でも、「ガーリッシュマインド」は何年もやっていて、もうどんな音が鳴っていても、一番最初にKeyのコードを鳴らさなくも歌い出しの1音目がわかるくらいに聴いてきた曲だから。音楽的な絶対音感はないけど、「ガーリッシュマインド」の絶対音感はあるみたいな(笑)。そのへんがどの音にいってもいいってことにつながって、”ギターはこういう音にいったほうがアプローチとしてはおもしろいよね”ってところに素直にいける。

今回のアルバムの中でも、”実はこの曲はだいぶ前から自分の中でメロディが決まっていた”って曲のほうが変な音を弾いてるし、曲を書いてる途中で、それこそギター弾いてから歌メロを変えるだろうみたいな、フィックスしてないメロディにギターのフレーズを乗せていったところは、歌メロがどの音にいくかわからないから、ギターは無難なところを弾いておこうってなってる(笑)。そんへんの差は如実に出てますね。

 


『オルタナティヴ』
ブロウグロウ IKCB-9508

杉本善徳オフィシャル・サイト
http://ys1126.com/

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