【インタビュー】SUGIZO

インタビュー by 編集部 2008年8月11日

LUNA SEA在籍時から開始したソロ・ワークスも昨年で10周年を迎え、遂にその軌跡をまとめたベスト・アルバム『COSMOSCAPE』を発表したSUGIZO。

「大事なのは、作り手が全身全霊を込めること。」--SUGIZO

さまざまなジャンルを行き来しながらも、まさに彼にしか創造できない唯一無二の世界観を提示する全15曲は、”ギター”という楽器の表現力の可能性を存分に感じさせてくれる。

『ギター・マガジン2008年9月号』に掲載しきれなかった彼のインタビューをお届けしよう。

インタビュー:ギター・マガジン編集部

機材が進化していなかったからこそ、詰まっている熱さは、当時にしかできない。

--本作には一部新録や新ミックスの曲もありますが、過去の作品に対して、今のスキルから考えると”こうしたら良かった”っていうこともありますよね?

それは死ぬほどありますね。お金と時間が許すならすべて録り直したい(笑)。でも正直、当時の自分の全身全霊で作ったもので、”あの気合いは今はできないな”って曲もありますね。

例えば「Le Fou」は、気合いで延々とアルペジオを弾ききっている曲なんですよ。今だったら、ProToolsでペーストしたくなっちゃいますもん。実際には途中で息切れしちゃってパンチインしたところもあるんですけど、当時はProToolsが、まだ自分の制作環境にはなかったので最後まで弾ききっている。だから、よく聴くといろんなところでいろんなことになってるんですけど(笑)。

当時、今のように機材が進化していなかったからこそ、詰まっている熱さっていうのは、当時にしかできない。もちろん、あえてリフをバチっと弾いてループさせて作った曲もありますけどね。

--「THE CAGE」のメイン・リフですか?

そうですね。あれは16小節間をループさせています。まぁ、どういうニュアンスが欲しいかによってチョイスして、ループさせずに絶対弾いたほうがいいっていう場合はもちろん今でも弾きますよ。

この曲はやっぱり機械的なニュアンスを出したかったんです。それでも、今よりは作業が簡単じゃなくてすごく時間もかかっていますよ。今じゃ数秒でできることが、当時は何分もかかったりして苦労しました。

--その苦労の中でこそ見つかる偶然の発見などもあるんですよね?

やたらと時間はかかっているけど、それが無駄な時間だったのか、実験と発見をするための有意義な時間だったのかっていうのはとらえ方によるんですけど、音楽を作るうえでそういう時間は絶対必要ですよね。フォーマットどおりのものを作るっていう意味合いでなければ。

--レコーディング技術の進歩に関連して、プラグインというツールも発展してきましたが?

僕は頑固ジジイに思われるかもしれないけど(笑)、プラグインはどうも薄っぺらい気がして嫌いなんです。すごく便利だしずいぶんリアルに近づいているなとは思うんですけど、手間暇かけてちゃんと結線して、そのケーブルの特性も出て、個体差や電源の違いも出てっていうアウトボードのほうがどうしても好き。エンジニアには面倒くさがられますけど(笑)。

人はどんどん便利なものに慣れてしまうけど、便利になって楽になったぶん失われるものも多いと思いますね。だからプラグインを使う時は、失ってもいいレベルのもの。”そんなに重要じゃないからプラグインでもいいよ”っていうものはいいんですけど、絶対にプラグインじゃダメだっていうものもハッキリあって。重要なコンプやディレイ、アナログ的なテープエコー、フィルターものはできるだけプラグインは使わない。

自分の作品は8対2くらいでアウトボードですね。2は、もうエンジニアさんにサービス(笑)。プリプロでもこれまではプラグインも多かったんですけど、近年はボスのGT-8、最近はGT-10を使い始めて、もうこれが素晴らしいからギターやベースのデモ録りはこれで全部やってしまってますね。

自分の好きなものを、自分の時代に自分のスキルでよみがえらせるには、自分のハンコを押さないといけない。

--ソロ作品において、インストと歌モノの境界線ってあるんですか?

あんまりないんですよね。でも、今、自分が認識しているのは、やっぱり自分はギター弾きで、ギターを中心としたインストものが一番作りやすい。自分が歌ものを作る時っていうのは、さんざんロック・バンドをやってきてるので、ロック・バンドの形態で、ちゃんと自分が歌ってほしいシンガーがいる場合のほうが作りやすいかな。

自分が作るメロディも、けっして歌いやすいものではなかったりもするんですよ。そういう歌を自分の歌のスキルで表現するのにはけっこうムリがある。自分が歌っていて気持ちいいものが生まれることもあるけれど、自分の稚拙なボーカリゼーションでは難しいものばっかりで、それは人に歌ってもらったほうがいいってことが多いですね。

--「TELL ME WHY?」や「THE CAGE」も、歌詞はありますがインスト的な構築の仕方の曲ですよね。 ボーカルも楽器の一部のような。

まったくその通り。基本的には音楽が先にあって、どうしても言葉や肉声が欲しかったから入れたみたいな。だから、このアルバムの中にいわゆる純粋な”歌もの”の曲はないと思ったほうがいいですね。

どのボーカルも楽器の一部、表現の一部、どうしても言葉が必要だったから入っている。「SWEET」や「VOICE」は最初から歌ありきだったけど、それでも、あくまでも自分のスキルで歌えるものというか。自分が歌っていて心地よくて、聴いていて人に迷惑をかけないレベルのものですね(笑)。

--ボーカルが入っていると、そのメロディや言葉を聴かせたいというのが普通だと思います。ところが、例えば「DELIVER…」はメロディがしっかりあっても、実はそのメロディ自身ではなく、それも含めたボサノバ的な空気感、サウンドスケープを聴かせたいといった感じですよね。

そうですね。コンセプト自体に意味があったんです。そう考えると、「SWEET」や「VOICE」は歌詞の内容そのものが楽曲のコンセプトで、それをどうすればカッコ良く伝えられるかということが重要でしたね。

--「DELIVER…」は本格的なボサノバ・ミュージックですが、中間部以降で、いきなり凶暴なノイズ・ギターがボサノバのけだるい空気を切り裂いていくあたりがSUGIZOさんらしいのかなと。

これが僕にとっての初めてのボサ的な音楽のレコーディング体験で、今考えるとグルーヴが固いんですよね。今だったらもっと良いリズム・ギターが弾ける(笑)。

それ以降、すごくボサ・ギターにハマって、けっこう研究をしてきました。今や自分の最も重要な音楽のひとつ。でも当時のその固さがむしろサイボーグ・ボサっぽくていいかなとも思える。だから、本格的なボサ・ギターからするとすごく甘ちゃんなんです。ギターだってこれはガットじゃなくてマーティンのD-28で、すごく死んだ弦でやってるから音に艶がなくてたまたま良い結果になったんですよ。

ボサノバの素養はずっと子供の頃から根付いてるもので、それがずっとグルグル自分の中で回っていて、自然に弾くようになったのが11~2年前。だから、やっと自分が子供の頃に好きだった音楽、刷り込まれていた音楽を表現できるように自分のスキルがマッチしてきたのが20代の後半だったんですね。

--幼い頃からボサ的な音楽に親しんでいたんですか?

自分が子供の頃に聴いていた音楽って、父親が自宅で作っていたオムニバス・カセットテープばっかりで。50年代60年代のいわゆる軽音楽や映画音楽がいっぱい詰まっているテープを父親からもらって、小学3年から中学くらいまでは、それらが自分の子供時代のサウンドトラックだったんです。

もちろん、曲名もアーティスト名もわからなくて、ただ良い音楽だなって聴いていただけなんですよ。その中に大人になってから知ったんですけど、好きな音楽がたくさんあった。バート・バカラックの多くの楽曲、映画『慕情』や『男と女』、『黒いオルフェ』のテーマ音楽、ビートルズの有名な音楽をオーケストレーションでアレンジしたもの、なかにはフィラデルフィア・ソウルのインストがあったり。

どれもレベルの高い音楽で、それを自分で表現できるようになるには30代近くまで待たなければならなかった。その最初の子供の頃の原体験と表現のミックスに当時90年代後半に自分がすごくハマっていたノイズを合体させた強引な曲が「DELIVER…」ですね。

--そして、その合体に自分がやる意味があると。

そうですね。自分の好きなものをそのままなぞっても先人たちにかなうわけがないし、それを自分の時代に自分のスキルで甦らせるには自分のハンコを押さないと。それはミュージシャンシップとして必要だと思う。

--ところで、SUGIZOさんの音楽には、多くのギタリストが持つブルースの要素が少ないですよね?

いわゆる”ブルース”はほぼ通ってないですね。BBキングやアルバート・キング、そしてスティーヴィー・レイ・ヴォーンは好きですよ。でも、彼らを追求して練習して、あのアメリカ南部の感覚を染みこませなきゃって思ったことは一度もない。

ただ、自分の尊敬するミュージシャンは、ザッパでありジミヘンであり、ギタリストじゃないけどマイルス・デイヴィスであり、みんな根がブルースですよね。その人たちの影響をメチャクチャ受けているので、間接的にブルース的な何かはあるのかもしれない。でもそれを自分のプレイとして率先してはやってこなかったってことなんです。

でも、ザッパやマイルスを聴いていれば、自分は十分にブルースの歌心を知っているつもりだし、あえてやらなくてもいいかなって思うんですよね。変な話、ブルースの人たちに混じってジャムった場合、自分流のタッチの味わいや深みは30代後半になってその年齢相当にはあると思うので、自分の個性を出しながらおもしろいことができそうな気はしますよね。

大事なのは、作り手が全身全霊を込めること。

--映像喚起力の強い楽曲が多いですが、作曲する時もまず映像が先に浮かんで、それに合うサウンドトラックをつけていくようなイメージだったりしますか?

とてもあります。基本的に映像というかビジョンは大きいですね。自分が見えている色というのか。それが最初に降ってくる場合もあるし、メロディが思いつく場合もあるし、コンセプトが思いつく場合もあるし。

「EUROPA」は適当にギターを弾いていたら生まれたフレーズで、その一発のフレーズからバーンって映像が浮かんで曲になっていったんです。「Synchronicity」は元々映画のための音楽で、監督からいろんなイメージをもらっていてそれが音として出て生まれた曲ですしね。

--サウンドコラージュというか、絵画的な構築の仕方も多いですね? 具体的なフレーズを聴かせたいというよりはサウンドの全体像的なところで伝えたいとか?

景色みたいなものですよね。ここに伝えたいメロディがあります、ここにある建物があります、でも、そのうしろには空があって山があってそこには川が流れているかもしれない。普段は自分のうしろ側にも、自分のまわり360度に景色があるじゃないですか。自然の中にいると、自分のうしろから鳥のさえずりが聴こえてくるのは普通のことだったりしますよね。

だから音源で全然違うところから音が鳴ってくるのも好きだし。普段、五感から第六感、七感くらいまでビシバシにフルで作動している時の感覚をそのまま音に詰めたい。そうすると自ずと情報量が大きくなっちゃうんですけど(笑)。

今後の自分の課題としては、いかに音の情報量を少なくするか、ですね。過去10年間は、伝えたいことやイメージすること観たい絵が多すぎて、どんどん音が増えていた。それを今度は、アコースティックっていう意味ではなくて、いろんな絵が降ってくるサイケデリックなものなんだけど、いかに音を少なく表現できるか。

--「Rest in Peace & Fly Away」、「Synchronicity」は、バイオリンの美しいしらべとアコギの素朴な響きがメインの曲ですが、音楽はやはり単なる娯楽なだけでなく、芸術になり得るんだなと思えるほどにドラマが詰まっていますね。

音楽に限らず映画も絵画も、娯楽は娯楽で素晴らしいと思うんです。しかも、娯楽としてクオリティの高いものが300年残ったりするわけだし。ただ、みんなの好き嫌いとかその時代のニーズだけで消化されてしまうものは寂しいですよね。

僕は好きなアーティストたちが偉大な人たちばかりで、自分も音楽にどっぷり浸かっている中毒患者なので、自分が音楽を生み出して、その音楽が10年、20年、50年、100年、300年、500年あとでも聴いてもらえればすごく本望。

かといって、100年後に残るものはどうすればいいんだって、一生懸命研究しているわけではないですけど。大事なのは、作り手が全身全霊を込めることだと思うんですよ。それが失敗に終わることもあるし成功することもある。自分も半分以上は失敗してきているけど、今まで自分にできることを全力でやってきました。

消化されて終わってしまう音楽っていうのは小手先で作れる音楽ですよね。例えば、その時代のヒットソングを作る時って、フォーマットがあって、コード感や構成のケースがあって、それを合体させてドンって作るわけですよ。それは商品の音楽としては素敵なものだと思うし否定はしないけど、自分はやることはないかなって。

--「Rest in Peace & Fly Away」、「Synchronicity」のバイオリンとアコギのアコースティックなサウンドは癒しの効果もありますよね。

ありがとうございます。激しさと癒しを同時にやりたいですよね。自分にとっては、トランスでガンガンに夜通し踊った朝から、今度はダラ~っとチルアウトで気持ちいいっていうのは、実は両方とも同じ効果で、表と裏なんですよね。ガンガンにアッパーに行くものとたゆたう癒し効果のもの、そこが自分のコンセプト。

そうすると今度はガンガンのものの中にも癒し効果が入ってくるし、癒しの中にある時だけバーンっとアッパーなものが入ってきてもいいし、そういう極端なものが好きなんですよね。

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SUGIZO
『COSMOSCAPE』

Sephirot
POCS-21008/3,150円
2008年7月23日発売

[SUGIZO公式サイト]

TUNECORE JAPAN