【インタビュー】グレッグ・フェスラー(フェンダー・カスタムショップ)

インタビュー by 編集部 2008年9月16日

“好きな音楽はアイアン・メイデン”と語る名ビルダー、グレッグ・フェスラー(Greg Fessler)。もともとは電気通信関係の仕事をしていたということだが、知人の紹介でフェンダーに勤めることになる。ゼロからのスタートだったにもかかわらず、見事マスタービルダーに登り詰め、これまでにロベン・フォード・モデルを始め、さまざまなモデルを手がけている。

「自分の作ったギターが顧客の要望を満たし、満足させられれば、僕はハッピーになれるんだよ。」--グレッグ・フェスラー

TOKYO GUITAR SHOW 2008に合わせて来日した彼のインタビューは、ギター・マガジン2008年9月号に掲載したが、ここではそのノーカット版をじっくりとお届けしよう。

インタビュー:ギター・マガジン編集部  翻訳:守屋智博

必要な知識と経験を持った人が集まっているだけで、マスタービルダーになるための決まったルールなんてないよ。

--フェンダー・カスタムショップで働く以前の経歴を教えて下さい。

電気通信関係の技術者をやっていたよ。特に電話通信を担当していて、あらゆる消防局の通信システムの修理や設置、メインテナンスまで幅広く手がけていた。アナハイムのオレンジカウンティにある消防署にはすべて出入りしていたんじゃないかな。まあ、ギターとは無縁の仕事だったよ。

--どういったきっかけでフェンダーに勤めるようになったのでしょうか?

かつて働いていた会社は規模が小さくてね、事業に失敗して倒産してしまった。僕は職を失ってしまったわけだけど、ちょうど僕がギターを弾くことを知っている友人がカスタムショップで働いていて、職探しをしている僕に”ここで働いてみたらどうか?”と話を持ってきてくれたのさ。

--あなたは以前からギターを製作してみたいと考えていたのですか?

いや、まったくそんなことは考えていなかったよ。

--イチからスタートということで、マスタービルダーになるのにもかなり時間がかかったのでは?

実はまったくそんなことはなくて、僕は4年程度でマスタービルダーになることができたよ。93年の暮れ頃だったと思う。

--4年でマスタービルダーになるというのは、平均的に見て早いほうなのでしょうか?

確かに早かっただろうね。多くの人たちはもっと時間をかけているはずだよ。僕より鍛練を長く積んでマスタービルダーになった人はたくさんいるし、僕は運が良かったんだよ。当時の僕の上司はジョン・ペイジだったんで、彼がたまたま僕に目をかけてくれたから異例の昇進が可能だったんじゃないかな。もちろん才能を認められて僕よりも早く昇進する人たちも数多くいたしね。

僕が聞いた話だと、クリス・フレミング、ユーリ・シスコフ、デニス・ガルスカといったビルダーたちは、みんな異なるバックグラウンドを持っていてさまざまなタイプの楽器を作ってきたからこそ、カスタムショップ内での確固たる地位を築けたということだよ。

ジョン・クルーズのように叩き上げで登り詰めた例だってある。必要な知識と経験を持った人が集まっているだけで、マスタービルダーになるための決まったルールなんてないんだよ。

--あなたはロベン・フォード・モデルの開発に携わっていましたよね。製作時にあなたのアイディアはどのような形でフィードバックされましたか?

3本のベーシックなモデルがあって、僕はトップの形成やボディのデザインに関与しているよ。基本的にはfホールのあるホロー・ボディが特徴的なんだけど、最も大々的な改良は、トップにカーブをつけたことじゃないかな。

ロベンは自分が改良したい点を詳細に教えてくれたから、こちらから大きな提案をするようなことはなかった。僕としては、当時、彼が使っていたギターのスペックをそのまま適用する形にしたかった。だって、僕の好みに合わせても仕方ないからね。

--トップにカーブをつけたことに関して、ロベンはどのように評価していましたか?

かなり気に入ってくれた様子だったよ。ルックス的にもより一層美しく仕上がったからね。トップを持ち上げてエンドに大きな角度をつけたんだ。それはトーンを狙ったものではなくて、外観のデザインを意識したものだった。こちらのほうがよりエレガントな雰囲気になるからね。

--ロベン本人から強くリクエストされた点は?

ロベンは特定のネック・シェイプを強く好むというギタリストではなかった。むしろ、せっかくリクエストにこたえて作ったのに”このネック・シェイプは嫌だからもう作らないでくれ”と言うことさえたびたびあったんだ。シェイプよりも厚みにこだわることが多くて、ある程度厚みのあるネックを求められて作製しても”もうこんなに厚いのはいらないから薄くしてみてくれないか?”と頼まれたり、すぐにその逆を依頼されるという具合だった。

ロベンと最後に会った時は、サンプルとして彼のギターを2本持ってきてもらったんだけど、その2本というのがとてもネックが太いES-355と、ネックが細いエピフォンのカジノだった。ネックに関してはまったくタイプの違う2本を持って来られて”一体この人はどんなギターが欲しいんだろう?”と思ったよ(笑)。結局、その時にちょうど製作していたスタンダードな形状のネックを見せたら、とても気に入ってくれたようだった(笑)。

ロベンに限らず、対極にあるようなものをオーダーされることが時折りあって困るんだけど、そもそも多くの人々が好むネック・シェイプというものがあって、大体の人がそれに納得してくれるものだよ。

--今までロベン・フォードのために製作したギターは何本ぐらいですか?

6本くらいかな。全部ネック・シェイプが異なっていて、細かいスペックが微妙に違っている。電気系統とピックアップはすべて同じだったけどね。

--ジェフ・ヒーリーにも製作したということですが、ほかにはどんなプレイヤーたちのギターに携わりましたか?

そうだな……二?ル・ショーンから話が来た時はうれしかったよ。当時、彼はギブソンと契約をしていたにもかかわらず僕のギターに興味を持ってくれたんだ。

彼は僕が作ったストラトキャスターをナッシュビルの店で購入したらしく、僕に電話をかけてきてくれた。”ハイ、ニール・ショーンだよ”ってね。最初はイタズラ電話だと思ったよ(笑)。彼は受話器をアンプの前に置いてギターを弾き始め”ほら、こんなにご機嫌なストラトキャスターを作ったのは君だろ?”って言ってくれたんだ。

それ以来、彼のためにレギュラー・ラインのストラトキャスターを作り、カスタム・モデルも製作するようになった。シングルのピックアップが4つ搭載してあるモデルさ。

ほかにもプリンスのバンドでベースを弾いているロンダ・スミスや、311というバンドのためにも作った。カントリー・バンドのブルース&ダンというグループにも作ったよ。ニールには4本のレギュラーのストラトキャスターを提供したし、ダブル・ネックのギターも作ったね。

僕が作るネックは独特なシェイプになっていると思うよ。

--フェンダーからは年代ごとのさまざまなモデルが発売されていますが、あなたが得意としているモデルはありますか?

どんなモデルも得意にしていると信じたいよ(笑)。偏りなくすべてを作れるようにしているし、どの年代がぬきんでて良いというわけではないと思う。テレキャスターやストラトキャスターだけでなくベースもたくさん製作してきたしね。

--では、個人的に好きなモデルはありますか?

テレキャスのサウンドが好きだけど、ルックス的には69年のストラトキャスターかな? ラージヘッドでいかにもジミ・ヘンドリックスの時代という感じがするからね。ルックスもサウンドもやっぱりしっくりくるし、最近僕がプレイするギターには69年型のピックアップを使うことが多いよ。

--50年代のモデルは1本1本の個体差が大きいと思いますが、レギュラー・ラインにおける50年代モデルのスペックは、どのような統計によって決められたものなのでしょうか?

実際に僕らが作っているものも当時と同じように個体差があるのさ。57年製はおおむねソフトなDシェイプのネックが特徴ではあるけれど、重さという部分ではかなり個体差があるしね。そのブレっぷりも50年代の仕様になっているんだよ(笑)。

--例えばネックのサンディングといった工程は、各ビルダーの感性に任されているでしょうか?

そうだね。すべてのビルダーが独自のやり方でやっているよ。

--マスタービルダーの名前が冠されたギターは、木材の選定から完成まですべてひとりで行なっているのですか?

カスタムショップの姿勢としては、1本のギターに対してそのビルダーがすべての責任を負うというスタイルをとっている。しかし、内容によっては誰かに任せることもあって、例えばペイントに関してはひとりの人間がすべてのギターを担当する形をとっている。

マスタービルダーが9人いても、スプレー・ブースは1箇所しかないのでビルダーたちが並んで順番を待つようなことはできない。だから、その作業だけはマスタービルダーが注文したものをペイント担当者にやってもらうことになるけれど、その注文内容は非常に細かく指示されていて、正確に再現することを求められている。

例えば黄色のペイントをしたとして、ちょっとでもイメージと違ったりしたら、その場でビルダー本人がペイントをすることだってあるよ。誰かに任せるようなことがあっても、最終的にヘッドストックに名前を入れるわけだから、すべての工程において監督として責任を持たなければならない。フレットのサイズにいたる細かいところまで求められたとおりのギターを作らなければ、マスタービルダーはその責任を果たしたことにはならないのさ。

--最近はレリックが人気ですが、専門のスタッフがいるのですか? それともそこも個々人のビルダーが行なっているのですか?

木材や最終的なレリック加工に関しては自分でやっているよ。しかし、ハードウェアの加工は、パーツ単位で専任の技術者にやってもらっている。彼らのほうが扱いに長けているからね。

例えばジョイント・プレートやブリッジには、わざわざ打ち付けるような加工を施さなければならないし。ビルダーによってレリックの施し方も好みがあるから、ここでも細かく注文をすることもある。僕は、特にペグやブリッジの加工に関して好みがうるさいほうだね(笑)。

--TOKYO GUITAR SHOWのデモンストレーションでは、ネックの組み込みなどの最終的なセットアップを行なっていましたが、普段も同じような作業をあなた自ら行なっているのですか?

いくつかは僕がやるけれど、僕は数人の見習いを抱えているから、彼らにやってもらうこともある。次世代の育成も兼ねていて、僕の希望を伝えてそのとおりにできているかのチェックする必要があるのさ。もし、オーダー主が僕による作業を希望すれば僕がやることにしているけどね。

次のマスタービルダーたちを育てることも僕の仕事だし、一緒に作業しないことには何かを学ぶことはできないわけだからね。

--ギター製作においてあなたが特に大切にしていることはありますか?

ネック・シェイプは最も重要だと思う。直に握ってプレイする部分だからね。ほぼ、すべてのマスタービルダーに独自のディテールがあるし、僕が作るものもやはり独特なシェイプとなっていると思うよ。

ボディのコンターは50年代や60年代と大方の決まったシェイプがあるけれど、ネックの場合はビルダーの嗜好がかなり反映されていると思う。クリス・フレミングやマーク・ケンドリックが作れば”彼らのネック”ができあがるわけで、それらはシグネイチャー・モデルと呼べるくらいの個性を持っているのさ。

--ちなみに、あなたの名が冠されたギターは平均すると月に何本くらい製作されるのですか?

それは企業秘密(笑)。例えばイングヴェイ・マルムスティーン・モデルを新規に発表するとなると、ほかのモデルの製作ペースは当然落ちる。そうなると、通常のモデルの製作本数は変動するんだ。やはり、トリビュート・モデルや新たなシリーズが計画されると、それにかかりきりになってしまうからね。

--今後、あなたが個人的に製作したいと考えているモデルはありますか?

さっき話した69年製を軸とした60年代後半のストラトキャスターを作ってみたいと思っていて、ひっそりと研究をしているところだよ。クールだと思える本物のギターを持っている人に遭遇するたびに、写真を撮らせてもらっている。

実はビルダー側としても、キャリアのときどきで作りたいモデルが変わってくるものなんだ。ちょっと前まではロベン・フォード・モデルに関わっていたから、トップにきれいな装飾を施したものに夢中だったわけだからね。

ーー以前、クリス・フレミングに同じような質問をしたら、テレキャス・シェイプで中身はストラトキャスターというものを作りたいと話していました。あなたもそういった一見奇抜なモデルを作ってみたいとは思いませんか?

今はストラトキャスターを作ることに十分満足しているし、顧客からの需要があるものを提供することが僕の仕事だと思っているよ。

この仕事をやっていて最もやりがいを感じる瞬間というのは、僕が製作したギターを購入してくれた人たちから電話を受けて”これこそが僕の求めていたギターなんだよ”と言われる時なんだ。それがどんな形のものであったとしても、自分の作ったギターが顧客の要望を満たして満足させられれば僕はハッピーになれるんだよ。

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