続・分数コードとは?/初心者集まれ!指板図くんのギター・コード講座 第12回

指板図くんのギター・コード講座 by 編集部 2010年7月27日

今日は、分数コードが使われているコード進行の例をいくつか紹介します。

前回は数ある分数コードのうち、比較的よく使われるタイプのものを紹介しました。しかし分数コードは、それ単体で弾いてみても一体何の役に立つのかがわかりにくいものです。

そこで今日は、コード進行の中で分数コードが使われた例をいくつか紹介します。

例1:三和音の転回形である分数コードを使った例

まず、三和音の転回形である分数コードを使った例を示しましょう。

右の図は「パッヘルベルのカノン」のコード進行です。ギターで弾きやすいようにキーをCに変え、C-G-Am-Em-F-C-F-Gという進行にしています。ここではまだ分数コードは出てきません。

※「パッヘルベルのカノン」は、バロック時代の曲ですが、このコード進行やこれを少しアレンジしたものは、今のポップスにもよく使われています。また最近では、この曲をロック・ギター・インストにアレンジした「カノンロック」がWEBで広まったため、ロック・ギター・ファンにもより広く知られるようになりました。

右の図の下には「ベース音の動き」という図を添えました。これは、各コードの中からベース音のみを取り出し、その動きを番号と矢印で示したものです。

ベース音は、5弦と6弦をわりとジグザグに動くことがわかっていただけると思います。また実際にギターでベース音だけ弾いてみるとわかるのですが、音自体はかなり安定感のある流れになっています。

さて、この「パッヘルベルのカノン」のコード進行に分数コードを取り入れたものが、次の例です。

右の図は、Gの代わりにG/B、Emの代わりにEm/G、Cの代わりにC/Eを使い、さらに最後から2つめのFをDm7に変更したコード進行です。

分数コードを使うことによって、ベース音がC-B-A-G-F-E-D(ドシラソファミレ)と滑らかに下降するようになりました。

※ギターのチューニングの関係上、C/EからDm7にかけては、ベース音が6弦から4弦に跳ぶことになりますが…。

また、この例におけるG/B、Em/G、C/Eは、すべて三和音の転回形です。

※C/EとG/Bは、コードの構成音にもともと含まれる3(長3度)を、Em/Gは♭3(短3度)を、それぞれベース音に持ってきたものです。

最後から2つめのDm7はFのままでもかまわなかったのですが、極力ベース音の流れをなめらかにするために、Dm7にしてみました。なおDm7はF/Dと表記してもよかったかもしれません。Dm7とF/Dの構成音は同じだからです。

元のコード進行と、分数コードを取り入れたコード進行の響きの違いは、下の「音の鳴る指板図」で確認してみてください。上段が元のコード進行、下段が分数コード入りです。各指板図の音符ボタンをクリックすると低音弦から順に鳴りますので、その最初に鳴るベース音に注意を払いつつ聞いていただくのが良いと思います。また手元にギターがある方は、ぜひこのコード進行を自分で弾いてみてください。

※音の鳴る指板図はFlashで作られているため、お使いの環境によっては表示されません。ご了承ください。

例2:四和音の転回形である分数コードを使った例(その1)

次に、四和音の転回形である分数コードを使って、ベース音の動きを滑らかにした例を紹介します。

右の図の上段は、C-C7-Fというよくあるコード進行です。分数コードは使っておらず、ベース音はCが2回続いてFに跳ぶようになっています。

下段は、C7の代わりにC/B♭を、Fの代わりにF/Aを使うことにより、ベース音がC-B♭-Aと滑らかに下がっていくようにしたものです。

C/B♭はC7という四和音の構成音の中の♭7(短7度)をベース音に持ってきたものです。コード名をC7/B♭と書いてもかまいません。

なおF/Aの方は、Fの構成音に含まれる3(長3度)をベース音にしたもので、つまりは三和音の転回形です。

各コードの響きは、次の音の鳴る指板図で確認してみてください。

例3:四和音の転回形である分数コードを使った例(その2)

マイナー系の分数コードを使ったコード進行例もひとつ示しておきましょう。

右の図の上段は、Am-Am△7-Am7-Am6というコード進行を、すべてロー・コードで弾いた例です。

基本的にはAmのまま、その中で、A(3弦2フレット)-G♯(3弦1フレット)-G(3弦開放)-F♯(1弦2フレット)という、特徴的な音の動きがあります。これは「クリシェ」(下記注参照)の一種です。ベース音は、4つのコードを通じてAのまま、まったく動きません。

そして下段は、A-G♯-G-F♯という音の動きをベース音にしたものです。固定されていたベース音が半音ずつ下がるラインになるため、面白味が出てきます。

なお、Am/G♯、Am/G、Am/F♯は、それぞれAm△7、Am7、Am6といった四和音の転回形なので、コード名をAm△7/G♯、Am7/G、Am6/F♯にしてもかまいません。

※注【クリシェ:cliche】
同一のコードが連続している部分に装飾的に加えられる慣用的なラインを指し、作・編曲上の技法のひとつとされる。コード自体を変化させるものではなく、同じコードの中で半音または全音によるスムーズなラインを設定し、それによって同一コードの連続による退屈さからの脱出を図るもの。(書籍『ハンディ版 音楽用語事典』より)

各コードの音は、音の鳴る指板図で確認してください。

例4:テンション・コードの代わりとしての分数コードを使った例

前回は、分数コードを次の3つに分類しました。

1:三和音の転回形
2:四和音の転回形
3:その他

このうちの「三和音の転回形」と「四和音の転回形」を使ったコード進行は、今見ていただいた通りです。

そして前回は「その他」の例として、C/DとAm/Dのふたつを挙げました。前回はほとんど説明しませんでしたが、この2つに関しては、D7にテンション・ノートが追加されたテンション・コードを分数コードの形で表記したものと捉えてみてください。そうすると使いどころも見えてくるようになります。

まずC/Dですが、これをDをルートとしたコードと解釈して名前を付けると、D7(sus4,9)になります。sus4を1オクターブ上の11とみなして、D7(9,11)でもよいでしょう。

Am/Dは、D7(9,omit3)です。omit3は省略してD7(9)でもよいかと思います。

ようするに、C/DやAm/DはD7の親戚のようなもので、コード進行においても、ふつうはD7やD7sus4がハマるようなところに使えることが多いのです。もっとも実際に使えるかどうかは曲のキー(というもの)次第ですが、ここでは思い切り説明をはしょらせていただき、実例をひとつ挙げることにします。

右の図の上段は、C-D7-Gという、Gのキーでよくあるコード進行です。

下段は、D7の代わりにC/Dを使った進行です。

D7とC/Dは、それ単体で比べるとけっこう響きの違うコードですが、このコード進行の中では、わりとどっちでも良いような気がしませんか? D7と比較するとC/Dはやや浮遊感が漂うとは思いますが、曲によってはC/Dの方がオシャレになったりします。

なお、Am/Dは、Am-D7-Gというコード進行において、D7の代わりによく使われます。またAm7-D7-G△7のように四和音が主体となったコード進行の中では、D7の代わりにAm7/Dがよく出て来ます。

以上、舌足らずな説明ですみませんが、ポイントは、分数コードはしばしば、複雑なテンション・コードを簡単に表記するために使われるということです。

たとえば同じコードでも「D7(sus4,9)」と書くのと「C/D」と書くのとでは、「C/D」の方がパッと見わかりやすいですし、ギタリストにとっては「Cコードを押さえてから、ベースだけDにすればよい」ということで、フォームも見つけやすいはずです。

各コードの音は、音の鳴る指板図でどうぞ。

例5:ペダル・ノートを維持した結果、分数コードになったもの

さらに分数コードには、ペダル・ノートを維持した結果、分数コードになっちゃったもの、というのがあります。次はこの例を紹介します。

右の図の上段は、A-E-D-Aというごく単純なコード進行です。

下段は、どのコードにおいても、ベース音を5弦開放のA音に固定し、A-E/A-D/A-A、というコード進行にしたものです。この場合の固定されたA音をペダル・ノートと呼びます。

※ついでに2、3、4弦が、それぞれ全音や半音で下がっていくようなフォームにしています。

そしてベース音をAに固定した結果、E/AとD/Aというふたつの分数コードができました。

このうちD/Aは三和音の転回形なのですが、さて、E/Aは一体何なのでしょうか?

E音をルートとしてコード名をつけるとEadd11となりますが、感覚的にはどうにもこうにもEadd11の転回形とは思えない響きです。

一方、Aをルートとするとコード名はA△7(9,omit)になりますので、テンション・コードを分数コードで表記したもの、と言えなくもないのですが、やはり感覚の上では、ここでのE/AがA△7の親戚的なコードであるとも思えません。

ということで、ここはあまり深く考えず、「ペダル・ノートを維持した結果として生じた分数コード」ということで良いのではないでしょうか。

今日はここまでです。分数コードの使い方はまだまだ多様なものがありますし、分類の仕方も人それぞれかもしれません。ただ、この先分数コードに出会ったとき、今回の内容を思い出していだだければ、わりと簡単に理解できるのではないかと思います。

さて、第6回目の「コードの構成音一覧」からは、コードの構成音をテーマとし、三和音四和音テンション・コードomit3・add9・sus4、そして分数コードと、順に説明してきました。これにて、コードの構成音についての解説はひとまず終了となります。

次回の題名は、「コード・フォームは平行移動で覚えよう」を予定しています。

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初心者だって大丈夫! コードが自分で作れちゃう! 指板図くんのギター・コード講座

著者 指板図くん
定価 1,620 円(本体1,500円+税)
仕様 B5変型判/144ページ
発売日
ISBN 9784845628322
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