【ライブレポート】佐野元春『SOMEDAY』再現ライブ

コラム by 2013年11月13日@Zepp Divercity 文:藤井 徹(ギター・マガジン) 2013年12月20日

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MUSIC ON! TVで企画された“名盤ライブ”の第一弾として、佐野元春の『SOMEDAY』が取り上げられ、11月16日に東京はZepp DiverCity、同24日に大阪の堂島リバーフォーラムにて各日2部ステージが開催された。ここでは東京公演の2ステージ目の模様をレポートしていこう。

このプレミア公演のチケットを手に入れた幸運なファンたちが見守る中、ステージ背後のスクリーンに、『SOMEDAY』のアナログLPを持った男性の手が現われた。丁寧にレコード盤を取り出し、ターンテーブルに乗せた瞬間に聴こえる独特の音。そのワクワクを引き継ぐように名盤ライブがスタートした!

今回のライブはアルバム1枚を可能な限り再現する主旨のため、曲順はあらかじめわかっているのだが、それがより一層に当時すり切れるまで聴いた自身の感覚とリンクすることになる。甘く切ない思い出とともに……。そうした心の琴線にピッタリなスウィート・ナンバー、「Sugartime」が鳴り響く。白いシャツにベスト、タイトなパンツの佐野が軽快なステップで歌い始めると、観客から手拍子が湧き起こる。ギターは上手側にジャズマスターを抱えた長田進、ベースの井上富雄を挟んで、下手側では佐橋佳幸がストラトを手に微笑む。このツイン・ギターってだけでも感涙モノだ。

軽快なピアノ(見ているところでは西本明かDr.KyOnのどちらかわかりませんでした)に先導されて「Happy Man」が続けられる。思わず体が動き出す感覚は31年前とまったく同じ。そしてお待たせのダディ柴田のサックス・ソロ! ハートランドの顔でもあった彼の登場で会場が一気にヒートアップする。長田の8ビートの刻み、佐橋の12弦が響く「DOWN TOWN BOY」が終わると、原曲で染みついていたシングル・ノートを長田がしっかり再現してくれた「二人のバースデイ」だ。佐野が“80年代にワープして、おかしくなるぐらい楽しんでいって!”と語ったように、心はすでに青春時代へひとっ飛びしている。ふたりのギタリストがアコースティック12弦で荘厳な音の壁を作り上げたスロー・ナンバー「麗しのドンナ・アンナ」では、古田たかし(d)のスネアに深いリバーブがかけられ、当時の音像そのままに届けてくれる。

そして説明不要の代表曲「SOMEDAY」。ウォール・オブ・サウンドと呼ばれる手法を導入したドラマティックなアレンジ、色褪せることのないメロディと歌詞に支えられてきた人も多かったのだろう。歌いながら涙を見せる姿もちらほらと見受けられた。佐々木久美と堂島孝平の美しく力強いコーラスをバックに、佐野のシャウトにも力がこもっていく。アルバムのハイライトを終えると、再び映像が挟み込まれた。そう、アルバムはここからB面になるのだ。

通算7曲目は「I’m in blue」。スパム(perc)の軽快なシェイカー、そして長田のストラトによるカッティングが溶け合う。優しくささやくように歌う佐野の声に包まれる、ストリートの風景が目に浮かぶ名曲のひとつ。続くは井上のなめらかなベース・ラインがビートルズを彷彿させる「真夜中に清めて」。叫ぶように歌う佐野の声が会場に響きわたっていく。9曲目は沢田研二に提供され、『SOMEDAY』収録の佐野バージョンでは同氏がコーラスに参加した激しい曲「Vanity Factory」だ。長田のジャズマスター、佐橋のストラトからもこの日一番のエッジィなサウンドが放たれる。

一瞬の静寂のあと、佐野とファンのアンセム、「Rock & Roll Night」のイントロが流れ出す。リフレインされる“今夜こそ、たどり着きたい!”というフレーズに、当時の若者にどれだけの希望を与えていたのだろうか。少なくとも僕はそのひとりだ。ヴァースあとに早口で紡がれる街中の孤独にどれだけのリスナーが共感したことか。そして続く佐野のシャウトに心が震えたことだろう。そしてエンディングに向かうピアノの調べに、この日も癒されたのだと思う。

ラストはアルバム同様に盟友・伊藤銀次を迎え入れて、「サンチャイルドは僕の友達」で本篇の幕を閉じた。ふたりのこのハーモニーを今この時代に味わうことができた僕らは本当に幸せだ。

演奏が終わり、ひとりずつメンバーを紹介する佐野。もちろん最後はダディ柴田で締める。ハートランドお約束の光景も、この名盤ライブの素晴らしきシーンのハイライトとなった。アンコールは『SOMEDAY』と同じ82年にリリースされた『NIAGARA TRIANGLE VOl.2』から「Bye Bye C-Boy」、「マンハッタンブリッヂにたたずんで」、「彼女はデリケート」の3曲だ。

この名盤ライブ、原曲とほぼ同じアレンジを佐野のバック・バンド、ハートランド、ホーボー・キング・バンドから選ばれたスペシャル・メンバーが演奏するというものだったわけだが、決して懐古主義に陥ることもなく、現代のライブとして“再現”したことに意義がある。第二弾、第三弾を心待ちにしたいと強く思った素晴らしい夜だった。

 

SOMEDAY(小)

『SOMEDAY』佐野元春

TUNECORE JAPAN