第3回 『全部ヤメてカッパになる!』 ~やけのはら〈新アルバム〉編~

SEX山口のなんだチミは!? by SEX山口 2013年5月31日

梅雨入りでございます。部屋の中はジメジメ、股間もムレムレのソフト蒸しポークソテー状態でございます。皆さんこんばんは、ベッドルームの大きな妖精ことSEX山口でございます。誠にありがとうございます。

さて!前回のやけのはらインタビュー〈音楽活動編〉いかがでしたでしょうか? 固定概念に捕われるな!ライブで相撲やっても良いんだぜ!なんて無責任な感想を綴ってしまいましたが、非常に頷ける内容でしたね。初回の〈音楽との出会い編〉と併せて読むと、やけくんの青年期の音楽にまつわるアレやコレの全てがほんのちょっと大胆にまるっとグイッと簡単に分かる仕組みになっております。目で見るんじゃなく行間を心で感じるんでございます。おおまかに。おおまかに。

130531-sexyama-3-1

さて、今回が最終回のやけのはらインタビュー、〈新アルバム編〉をお届けいたします。

去る3月20日、約2年半ぶりとなる待望の2ndアルバム『SUNNY NEW LIFE』を発表。BETA PANAMA、VIDEOTAPEMUSICDORIANキセルMC.sirafuATOMLUVRAW高城晶平(cero)平賀さち枝遠藤里美と多彩なゲストを迎えた本アルバムには、全13曲を収録!

アルバムを聴く中で、自分なりの目線で気になっていたことを聞いてみましたぞ。

ではでは、やけのはら〈新アルバム編〉いってみましょう。

SEX山口:それでは、新アルバム『SUNNY NEW LIFE』のお話に。まず最初に聞きたいのですが、1stアルバム『THIS NIGHT IS STILL YOUNG』発売後に、やけくんなりに「こうしておけば良かった」「ああしておけば良かった」みたいなものが、今回のアルバムに反映されているとしたらどういったところですか?

やけのはら:まず、ひとつの色味・ひとつのフォント・ひとつの音の鳴り方とかの好き嫌いがものすごく細かいタイプで、1stは録音もMIXも基本的にはほとんど自分でやって時間的にものすごくキツかったんですよ。時間があればもっと詰めたかったところや、直したいところも凄いいっぱいあるというか。っていう1stを踏まえて、今回の声の録音は外のスタジオ入ってエンジニアさんにお任せしたりしました。物事の時間は決まっているので、音楽性とは別で、制作という面で前より多少分業制が進みましたね。

shakke:それって歌詞とかにも反映・影響されたりしました?

やけのはら:いや、そこは関係ない。実質的な制作の時間配分の話。内容の音楽面は、いろんな人のタイプだったりテーマだったりがあると思うんだけど、自分は今のところアルバム1枚でまとまりがあるもの、テーマがあるものを作りたいと思っているから元から1stの続編っていう考えは頭になくて。最初から“若者”や“夜”とかっていうワードを全部NGワードにして作り始めましたね。

一同:ほほ~。

やけのはら:今回はシンガソングライターっぽい、弾き語りっぽいもっとパーソナルな感じにしたかったっていうのがあって、それは2ndだったからできたのかな~とは思いましたね。1stはもうちょっと気持ちが外に向いている内容だったから。2ndだからこそで出せたパーソナルな感じってのはありますね。

SEX山口:確かに1stのアグレッシブさから見ると、いい感じに角が取れた感があります。

やけのはら:それはそうしたかったっていうのがありました。1stからそれを作れたか?っていうと、それをやる勇気はなかったんですよね。

一同:ふむふむ~。

やけのはら東日本大震災があって、自分の気持ちや世の中の空気的にも「ワーッ!」っていう曲をやりたい気持ちではなかったので。1stは盛り場とかで「イエーッ!」みたいな感じだとすると、2ndは部屋で友達と過しているような空気感というか、最初からパーソナルなビジョンがあって作り始めました。

SEX山口:家では朝食時に聴いてますよ。フライパンに玉子を落として、トースト焼いて。今朝は食べ終わる頃に9曲目の『JUSTICE against JUSTICE』が流れて、フックを口ずさみながら食器洗いました。

やけのはら:マジですか。それは嬉しい。

shakke:震災があって、その前と後で生活がガラっと変わって『JUSTICE against JUSTICE』にすごいそれが表れていると思うんですけど。

やけのはら:2012年の12月に書いたので、選挙(第46回衆議院議員総選挙)の時なんですよね。それまでも911のこととかをいろいろと考えていたりもしてたんですけど、直接的に言うとその選挙の時期。どこまでパフォーマンスか分からないですけど石原慎太郎が「カマすぜ!」みたいなことを言ってるの見て、なんかそういうのはちょっと違うんじゃないかと思って。声がデカい奴が民衆を催眠状態にして引っ張っていくみたいな、もうそういうのにはさすがにNOを言いたいと思いましたね。

SEX山口:うんうん、おかしな空気作りしてんじゃねーよ!って日々思います。

やけのはら:例えば、日本人の99.9%が戦争なんかまったくしたくないのに「あそこの国は悪い国だ!だから戦うべきだ!しょうがないからやっつけよう!」みたいなロジックになっちゃう。そういう罠っていうか、例外を作ってみんなの中でそういうことにするというか。その違和感がちょうど選挙時期の石原と被って、そういうのをテーマにした曲を作りたいなと思って作りましたね。

SEX山口:『JUSTICE against JUSTICE』はアツいです。食器を洗う手にも力が入っちゃいましたね。

130531-sexyama-3-2

shakke:アルバムを作り始めると塞ぎこんだりというか周りが見えなくなったりすると思うんですけど、没頭していく中で心を和ませるようなことってどんなことがありますか?

やけのはら:ええ~、分かんない。教えて欲しい。

一同:だははは!

やけのはら:毎回そうなってキツいなって思ってますけど(笑)

shakke:割とそうなることが当たり前みたいな感じですか?

やけのはら:まだ今の時期は、そこでやれるまでもがいたほうが良いというか。飲み会での話みたいになっちゃうんだけど、自分の好きなミュージシャンでもキャリアを重ねていって、ちょっと手癖みたいなノリでなんとなく作った曲が増えるとかあるじゃないですか。自分はまだもがけるだけもがきたいというか、まだ自己更新できるんじゃないかって思ってやってますね。

shakke:ふむふむ。

やけのはら:今のところは毎回、今までの精神や体力を越えてもう一歩先へ行こうと思って作ってます。声入れの録音は外でやったけど、自分で打ち込みして自分で歌詞を書いてさらにチマチマした編集作業が待っていたりして、どうしても陰に行くっていうか…。「俺の作ってるこれは大丈夫なのか」とか「誰が聴いてくれるのか」とかになっていき、挙句の果てには「俺は何のために作ってるんだろうか」とか「人間とは?」とかもっとディープになったり(苦笑)

shakke:まったく逃げ場なしにするってこと?

やけのはら:してるわけではないけど、やっていくうちにそういうところに達してしまうというか。

SEX山口:そういう時期って続きました?

やけのはら:飛び飛びではありましたけど、何度かそういう時期はありましたね。精神がブレたというか。「もうダメだぁ~、もうヤメよう。全部ヤメて俺はカッパになる」とか思ったり。

一同:だははははははは!

SEX山口:妖怪!

やけのはら:「もう俺は河原で生きる」とか(笑)カバーのない文庫本とかを20円で買って、そういうのを読みながら山とか見て暮らしたいなとか思ったりしましたね(笑)

SEX山口:制作してる時に手応えというか「これはアルバムの芯になる曲だな」とかの発見ってありました?

やけのはら:う~ん、テーマや雰囲気があとからできたっていうより「こういう雰囲気で」とか「このタイトルで」とか、最初から枠を付けて制作していくタイプなので、ちょっと進んで合わないものが出てきたりしたらそれはすぐに省いちゃいましたね。アルバムタイトルの3つのワード“SUNNY” “NEW” “LIFE”が今回のテーマだったので、そこに向けてなんとなく集まったパーツをまとめていくというか。結構前からアルバムのビジョンはあったので、ちょっとづつパーツを作ったり集めつつって感じですね。歌詞もフリースタイルっぽい感じではないと思うので、全体の雰囲気を決めないと適したものにならない。最初から「こういうのを」って決めて作りました。

SEX山口:ゲストの皆さんも最初から決めていたの?

やけのはら:ゲストは進めていく中で決まっていきましたね。ただ、アコースティック楽器は増やしたいっていうのは最初からありました。

SEX山口:あとジャケ。すごい好きなんですよこの感じ。1stのジャケも相当好きだけど、2ndも相当好きです。音と合ってるなぁと。

やけのはら信藤三雄先生。自分の親より年上で緊張しちゃうんですよね。1stアルバムを気に入ってくれてて、飲み会の機会があったりして、1年ぐらい前にお会いできて。2nd製作中にスタジオ遊びに来てくださったことがあって、雑談の中で見せてくれた写真なんですけど、ピンときて使わせていただいたんですよ。

SEX山口:ホント、ステキなジャケだと思います。大好きです。

130531-sexyama-3-3

shakke:そう言えば、やけくん1st出したあとに「しばらくラップアルバム作る気はない」みたいなこと言ってましたよね。

やけのはら:ええ~、うそぉ~? 全然作る気だったよ。口が滑ったんじゃないかな?

shakke:「女の子のプロデュースがしたい」みたいなこと言ってましたよ。

やけのはら:ああ~、それは今でも思ってる。自分で前に出たいとかあんまりないので…。音の全体の枠組みと歌詞を書いて、可愛い女の人が歌って欲しいって思いはあるなぁ。プロデュースっていうか、演者だけ違うみたいな感じで。

SEX山口:それは見たいなぁ。

やけのはら:ライブは楽しいけど、自己表現欲みたいもので音楽を始めた感じではないので。上昇欲とか前に出たい欲とか、そういう表現がうまくできる向いてる人っているじゃないですか。自分はそんなに前に出たいってタイプじゃないなって思うし、人に好かれるかわい子ちゃんとかが歌ってくれたらいいなって。そっちのほうが売れるんじゃないかなって思いますね(笑)

SEX山口:今後の音楽との付き合い方ってそういう感じになっていきそう?

やけのはら:いや、わかんないですねー。人との出会いもありますし、今のところはまだ同じ感じでやろうと思っていますが。最終的に裏方のほうが向いているじゃないかと思ってますね。

shakke:ライブはライブでやっていきたいと?

やけのはら:そうですね、音源ではかわい子ちゃんが歌ってて、ライブでは素知らぬ顔で自分が歌うみたいなことがやれたら最高ですよね。ライブは楽しいんで。反応がダイレクトだし。ライブとかで人前に出たくない、とかまではないですよ。ただ、どっちかっていうと自分はお膳立てをやって、とかのほうが向いてるかなぁと思います。

shakke:では、SEX山口がアルバムを作るとしたら…。何かありますか?

やけのはら:どういうアルバムにしたいんですか?

SEX山口:それはもう、楽しくて気持ちいいアルバムにしたいですよね……やっぱり。

やけのはら:じゃあ、楽しくて気持ちいい曲をパクるってどうですか(笑)

一同:だははははははは! なにそれ!

やけのはら:アルバムって自分の曲じゃないとダメなんすかね? 例えば10曲中9曲は自分の曲で、10曲目にフランク・シナトラの曲がそのまんま入っていたり。逆もしかりで、9曲他人の曲で1曲だけ自分の曲、それをアルバムとして出す。それを「オリジナルアルバムです」って言ったらそれはもうオリジナルアルバムなんじゃないのかな? ザ・ロネッツの『ビー・マイ・ベイビー』とか入れましょうよ!

SEX山口:ああ~、もうそれは絶対良いアルバムだ。ってただのコンピレーションじゃねえか!

 

やけのはら〈新アルバム編〉いかがでしたしょうか?

皆さんがこの『SUNNY NEW LIFE』を聴くことで、いろいろ思うことがあったり、目の前に浮かぶ風景をそれぞれが楽しんだり悩んだりしてみて欲しいなぁ、と願う一心であります。IMAGE!

この3回のインタビューで人間・やけのはらの面白さをお伝えできたら最&高だと思っております。

さぁ、3rdアルバムが楽しみですね。気長に待ちますよ、やけくん!

やけのはら

yakeinohara

DJ、ラッパー、トラックメイカー。「FUJI ROCK FESTIVAL」「METAMORPHOSE」「KAIKOO」「RAW LIFE」「Sense of Wonder」「ボロフェスタ」などの数々のイベントや、日本中の多数のパーティに出演。数多くのミックスCDを発表している。またラッパーとしては、アルファベッツのメンバーとして2003年にアルバム「なれのはてな」を発表したのをはじめ、曽我部恵一主宰レーベルROSE RECORDSのコンピレーションにも個人名義のラップ曲を提供。マンガ「ピューと吹く!ジャガー」ドラマCDの音楽制作、テレビ番組の楽曲制作、中村一義、メレンゲ、イルリメ、サイプレス上野とロベルト吉野などのリミックス、多数のダンスミュージックコンピへの曲提供など、トラックメイカーとしての活動も活発に行なっている。2009年に七尾旅人×やけのはら名義でリリースした「Rollin’ Rollin’」が話題になり、2010 年には初のラップアルバム「THIS NIGHT IS STILL YOUNG」を発表。その後Stones Throw15周年記念のオフィシャルミックス「Stones Throw 15 mixed by やけのはら」を手がけ、2012年にはサンプラー&ボーカルを担当している、ハードコアパンクとディスコを合体させたバンドyounGSoundsでアルバム「more than TV」を完成させた。2013年3月、新しいラップアルバム「SUNNY NEW LIFE」をリリース。http://yakenohara.blog73.fc2.com/

SEX山口

SEX山口

1976年生まれ、神奈川県出身のメガネをかけた牡羊座。幼少時に観たM.J.のパフォーマンスに多大なる影響を受け、小2で“ムーンウォーク”を習得。と当時に、たけし軍団や志村けん、とんねるずといった“ハードかつタイトな東京のお笑い”への尊敬と憧れを現在までKeep Onし続ける。最近はやたらしゃべるディスクジョッキーとして日本各所でメイクサムノイズしつつ、音楽専門誌・web等で小粋な執筆もちょろちょろ。自身のトレンディーアパレルブランド「S.E.X.Y. by NAOKI YAMAGUCHI」のアイテムや危ないおMIX CDも随時デリバリーしております。あと、宇多田ヒカルが大好き。



TUNECORE JAPAN