『ザ・バグを取り巻く人や環境、制作に影響を与えている要素』強烈な重低音の世界を魅せるザ・バグのロングインタビュー 〜Part.3〜

コラム by 編集部 2014年10月2日

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Photo:Tadamasa Iguchi
Interpretation:Emi Aoki

Part2:“武器倉庫”であり“宇宙ロケット”でもあるザ・バグのスタジオ環境

 

ザ・バグを取り巻く人や環境、制作に影響を与えている要素

今回共演をするアクトレスはどんな人物ですか? 印象を教えて下さい。

The Bug アクトレスとは去年アメリカで会ったけど、吸いすぎでぶっ飛んでいた(笑)。昨日会ったときは、そうではなかったから別人のようだったよ。でも、両方のアクトレスに好感が持てた。昨日は、彼とフロウダンとディナーをしたが、とても楽しい会食だったね。話のテーマが幅広く、アクトレスは深みのある人物だったからな。俺は知的な人は好きだが、たまにその知性を誇示する人もいる。もしくは、言葉をたくさん並べて混乱させようとする人もいる。彼はそういうことをしない人だ。それは、俺からすると称賛に値することだよ。

一緒に出演するグライムのMC、フロウダンはアルバムにも参加していますが、最初はどこで知り合ったのですか? 共演のきっかけを教えて下さい。

The Bug ダブステップ黎明期にダブステップをかけていたのは、ロンドンのFWDというイベントだけで、そのイベントにコード9が連れて行ってくれた。そこにいたのは、ダブステップのプロデューサーだけだったんだ。スクリーム、マーラ、ローファー、コキや彼らの仲間が観客だった。観客も多くなくて、20人くらいだったね。ダブステップのプロダクションも好きだったが、俺がそれ以上に好きだったのは、グライムのMCたちがFWDに来てライブに参入するときだった。ロール・ディープのクルーは、UKで最もフレッシュなラッパーたちだと俺は思ったね。UKのウータン・クランのような感じで、過激でアウトロー、そして燃えるようなエネルギーがあった。ライブを見ていても、ステージ上で、そしてフロアでケンカが勃発していることが頻繁にあった。そういうワイルドでパンクな態度が俺にとっては魅力的に映った。フロウダン、リコ、ワイリー、ゴッズギフトなどは、初期のダブステップのパーティでマイクを握り、トラックに合わせてラップをしていた。俺はロール・ディープのマネージャーと知り合いになり、実は最初、リコと一緒に仕事がしたいと言った。するとマネージャーは、“リコを紹介するけど、フロウダンとも話してみるといい”と言った。当時のフロウダンは、ラッパーとしての成長を始めたばかりだったと思う。当時も上手かったけど、今の彼は本当に素晴らしい。今ピークを迎えつつあるアーティストだと思う。その成長を目の当たりにし、自分も彼の成長に関わっているということは、とても嬉しいことだ。最初に俺がアプローチしたのは彼ではなく、リコだったからね。フロウダンもリコをとても尊敬している。リコはフロウダンにとって兄貴的な存在だから、トーンもリリックも声も、リコを兄のように尊敬している。ロール・ディープのマネージャーが俺とフロウダンを取り持ってくれて、本当にラッキーだったよ。リコは俺の提案に最初、興味を示さなかった。実は、最近になってリコと仕事をしたんだけどな。今後も一緒に仕事をする予定だ。失礼な言い方だけど、フロウダンは俺の第一希望じゃなかった。だが、運命の奇妙な取り合わせで、今となってはフロウダンと仕事ができた方が満足だったと思っている。フロウダンのトーンやリリックは、ずば抜けているし、今のUKシーンで彼より素晴らしいMCは思い付かない。

10月にリリースするEP『Exit』には、どんなストーリーが込められていますか?

The Bug 本当は、アルバムの前に出す予定だった。EPの制作中に、EPに合うビデオを作っていたが、その制作が遅れたためアルバムの後に出すことになったんだ。ビデオは、EPに収録されている「Void」と「Function」のコラージュになっている。だから、この2曲が入っていることが大事だった。ほかの2曲は、アルバムに収録しないことにした曲だった。アルバムの物語に添わなかったからだ。1曲は、グルーパーのリズ・ハリスとの曲。もう1曲は、長年の仲間であるダディ・フレディとの曲。彼とは過去に一緒に日本に来たこともあるよ。EP自体は、アルバムの延長と捉えてもらえれば良いと思う。それから、11月の初めにもう1つEPを出す予定で、『Bug VS. Earth』というコラボレーションEPだ。ディラン・カーソンという、アースのギタリストでカート・コバーンとも共演したことがある、ドローンメタルの第一人者と一緒に作ったEPだ。俺はドローンメタルが好きなんだ。彼と制作したEPは、俺にとって非常に新鮮なサウンドの作品となった。リリースするのが楽しみだよ。このEPの曲を、自分のアルバムに入れることも考えたが、アルバムの制作を続けていく過程で、自分がどんなことをやろうとしているのかを問い続け、考え続けた。アルバム制作中に、作品の物語性を失いそうになり、再構築していかなければいけなかった。アルバムの物語性は今回、非常に重要なものだった。

ドローンメタルですか。面白そうですね。

The Bug メタルと言う名が付いているけど、全然メタルっぽくないよ(笑)。すごくヘビーな音楽だ。そしてとても強烈だね。

では、ザ・バグの音楽はどんな場所で聴くことに適していると思いますか?

The Bug それはもちろん、小さ過ぎる部屋で、大き過ぎるスピーカーで聴くこと! 屋外のイベントやフェスにはあまり興味がない。俺に言わせれば悪だと思う。人気があるのは分かるが、俺が大切だと思っている、アーティストとの意思疎通が出来ないと思う。屋外の広々とした所でアーティストを見るよりも、小さなクラブでアーティストを見たい。最近はレコードも売れなくなってしまったから、昔以上にアーティストがライブで印象を与えるということが重要になった。人々が印象深いライブを体験し、ほかの人にその体験を語るというのは、とても重要なことだ。俺のライブが嫌いでも構わない。気に入ってくれる方が嬉しいけど、“嫌い”という極端な反応の方が、ライブ中におしゃべりされるより俺は好きだ。ライブというのは、身体的に圧倒されるものであってほしい。観客を最大限に混乱させたい。そういう反応を引き起こせる要素は、俺にとって非常に重要だ。その点において、ダブステップの起源となったクラブPlastic Peopleは最高だったんだ。狭いクラブなのに、サウンドシステムは巨大だった。そこで音を聴いていると、意識が別世界に行ったと思うくらいに持っていかれた。さっき、音楽を通してドラッグから得るような刺激を得ると話したけど、ドラッグは脳のある部分を刺激する。音楽もそれと同じ部分が刺激できるのが、最高の音楽なんだ。俺は、音楽を単なるライフスタイルを飾る物とは思っていない。音楽は俺にとって生活必需品であり、最前面に必要な物である。そこには大きな違いがある。俺は音楽のために生きている。俺は音楽を愛している。音楽は俺の人生を変えてくれた。これは世界中で起こっている問題で、日本でもそうだと聞いたが、音楽が人々にとってあまり重要で無い物になってきている。使い捨てできる所有物の1つになってしまった。そのように崩れてしまったバランスを調整できるのが、ライブだと思っているんだ。

音楽の制作に影響を与えている物は何ですか?

The Bug チョコレートかな(笑)。いや、人生全てだよ。俺は、ドラムンベースやヒップホップなど、ダンスミュージックのプロデューサーのインタビューを良く読むが、音楽にインスパイアされると多くの人は語っている。音楽は、俺にインスピレーションを与える物のほんのわずかでしかない。もちろん、音楽は俺にとって全てだ。だが同時に、世界情勢や外交、文化交流、今世紀の人類における変化などに本当に関心があれば、そういうこと全てに影響を受けるものだ。映画や写真にも影響を受ける。俺はとにかく、人生全般においてハングリーなんだ。人生に圧倒されるときもある。そういうときは、それを自分の音楽に反映させる。“俺の音楽制作をインスパイアするのは、ほかのプロデューサーだ”なんて答えは本当につまらないと思う。俺は、人生の浮き沈み全てに影響を受けているよ。

音楽の製作は、どんな時間帯に行うことが多いですか?

The Bug もちろん夜だね。

そう思いました。夜型っぽいですよね。

The Bug 夜に仕事すると、昼とは違った意識で作業が出来る。さっきも意識の変容状態について話したけど、夢を見ている状態、つまり夜の状態はクリエイティブな作業に向いていると思う。夜は、昼間には作用していないような化学作用を、脳がもたらしてくれるんだ。

日本の音楽からは影響を受けたことはありますか? 日本のアーティストで知ってる人がいたら教えて下さい。

The Bug 大好きな日本の音楽は、たくさんあるよ。Corrupted(コラプテッド)はドゥームメタルと表現されるバンドで、数年前にコラプテッドがゴブリンというバンドのサポートでやっているライブをロンドンで偶然見る機会があった。ゴブリンは映画音楽などを作曲するバンドで、そのとき俺は、コラプテッドがどんなバンドであるかは全く知らなかった。彼らのライブを見たらぶったまげたよ。72分間の曲を1曲だけ演奏した。曲は、感情の波が衝撃のように襲ってくる感じで、どんどんヘビーになっていった。ボーカルは曲をスペイン語で歌うんだ。インタビューは一切やらない。現在、ボーカルは投獄されているらしいね。くだらない話だ。俺はそんなコラプテッドの美学が大好きだ。彼らの活動には、アナーキストのような反抗的エネルギーが感じられる。そういうアプローチは俺が若い頃にとても重要視していたもので、今でも自分が共感できるものだ。彼らの活動は燃え上がるように熱く、音楽活動において細部にまで気を配っているところが素晴らしい。ほかにも、パーティで共演するGOTH-TRADは仲の良い友人だ。彼の音楽活動を、俺は心から応援している。過去には、DJ KRUSHの初期のアルバム『Strictly Turntablized』にはすごく影響を受けた。俺と同じような強烈な執着を持って音楽に取り組んでいる人たちが大好きなんだ。最近は、池田亮司にはまっているね。彼はすごい人だと思う。

では、日本という国に対する印象を教えていただけますか?

The Bug 日本に初めて来たとき、映画『ブレードランナー』の世界に足を踏み入れるのだと期待していた。未来の世界があると思っていた。だけど、そうではなくて、現在が過剰に存在していただけだった。現代の情報過多だった。俺にとっては初めてのアジアだったから、異国感は確かにあったけど、日本にはフリークがあらゆる所にいるものだと思っていたから、がっかりしたよ。俺が好きな、日本のアートや音楽は全て強烈な物ばかりだったから、てっきり日本はそういう所だと思っていたんだ。小汚い外人の俺が気付いたのは、日本は本当はカルチャーがすごく制限されていて、社会的/政治的なことはヒエラルキーに支配されているということだった。そういう抑圧された社会だから、フリークたちがランダムな感じで誕生するんだろうね。俺が日本で一番好きなのは、そういうフリークたちだ。それはディスでは無いよ。だって、俺が一番のフリークだからね! 最高の褒め言葉だよ。

 

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