『“武器倉庫”であり“宇宙ロケット”でもあるザ・バグのスタジオ環境』強烈な重低音の世界を魅せるザ・バグのロングインタビュー 〜Part.2〜

コラム by 編集部 2014年10月2日

the-bug_actress_web_043

Photo:Tadamasa Iguchi
Interpretation:Emi Aoki

Part1:ザ・バグが表現するサウンドとは

 

“武器倉庫”であり“宇宙ロケット”でもあるザ・バグのスタジオ環境

ライブ演奏の際に使用する機材は何ですか? 今回はどんな機材を持って来ていますか?

The Bug さまざまなデッキ、エフェクター、シンセサイザーのハイブリッドだよ。リズムのトラックをギリギリの骨組みまで分解して、そこにエフェクトの機材を使って、エフェクトを加えたり音を引き立てたりする。音の壁を作って、破滅的なノイズから、ささやくような音にすぐ切り替えられるようにする。日本のメーカーであるコルグの機材を使っているよ。最初ザ・バグで活動していた時は、スタジオの機材全てを持って行って数年間ライブをしていた。キング・マイダス・サウンド(作家であり詩人のロジャー・ロビンソンとのユニット)では、今でもそうしている。だが、ボーカリストと親密な形でライブをしたいのなら、その方法はあまりうまくいかないということが分かったんだ。ボーカリストにとっては、機材が多いとごちゃごちゃした感じになってしまう。それから前の話に戻るけど、ザ・バグのサウンドを形成するもう一つの大きな影響に、ジャマイカのサウンドテープがある。ジャマイカでのサウンドクラッシュをその場で生録音したテープだ。テープから聴こえるカオスで狂った感じには本当に圧倒されたね。そんな風に聴こえるレゲエは初めてだった。そのテープを聴いてから、いまだに立ち直れていないと思う。それから、ロンドンで初めてアイレーション・ステッパーズとディサイプルズのサウンドクラッシュを見たときの衝撃からまだ立ち直れていない。その音楽は俺に消えない傷跡を残したんだ。それ以来俺は、あの時感じた感触を再現しようとしている。俺はドラッグはかなり前に辞めたが、俺が好きな音楽の多くは、ドラッグが脳に与える影響と似たような効果のある音楽だ。俺がライブ演奏で表現しようとするのは、その2つの感触だと思う。音楽がドラッグのように作用するサイケデリックな感じと、物理的な音と音の衝突さ。俺は、従来の保守的なシームレスなミックスの仕方に興味はない。形式にも興味はない。興味があるのは、自分のサウンド、自分のビジョン、自分の美学だ。ライブ演奏の目的は、あらゆる手段を使って、心の底からの音を出して、体に響くライブをすることだ。俺はカオスが好きだからカオスパッドをよく使うよ(笑)。

カオスパッドの気に入っている部分を教えて下さい。

The Bug カオスパッドは、触るとすぐに反応があるから、とても体と繋がりがあるものなんだ。だからパフォーマンスでも感情的な部分を全面に出すことができる。それから、たくさんのフィルター効果を出したり、EQ操作ができるアナログのミキサーも使う。それも、反応性が気に入っているから使っている。自分がやろうとしていることの強烈な感情を、機材を通して反映させてアルバムにする。それがライブ演奏だとより過剰になる。音を激しくさせ、混乱させ、人々をノックアウトしたいんだ(笑)。

音楽制作用の機材は、デジタルもアナログもたくさん所持していいますか?

The Bug 俺は完璧な機材オタクだよ。今日も午後に原宿にあるシンセサイザーの店、Five Gに行ってきた。知っての通り“オタクの王様”というべき店で、取り扱っているシンセサイザーが豊富な店ということで、日本だけでなく世界中で有名な店だ。俺がゴッドというバンドをやっていたとき、スタジオ制作にはまってしまった。バンドとして音楽をやるよりも、スタジオで音楽を作る方にハマってしまった。さっき話した、ジャマイカのサウンドクラッシュのテープを聴いたとき、彼らは俺がバンドではできないと感じていた全てのことを可能にしている、ということに気付いた。元々は、音を操作することが魔法のように感じられ、それにハマったのだと思う。スタジオでは、音をひっくり返したり裏返したりすることができる。音をそんな風に操作できるということは、俺にとっては無限の可能性を意味し、ルールを破り、脳みそをふっ飛ばせるということだった。俺にとってスタジオは宇宙カプセルのようなものだ。アナログのハードウェアがたくさんあり、デジタルのハードウェアもいくつかある。ここ数年、このアルバムを作っている間に、ユーロラックモジュラーシンセの中毒者になった。スタジオは俺の領域だ。俺にとってのパラレルワールドだ。現実の世界では、理解できないことがたくさんある。だから、スタジオで自分のパラレルワールドを作るのさ。

スタジオの中で一番お気に入りの機材は?

The Bug 気に入っている機材は、もう何年も所有しているものだ。EMS Synthi AKSと言うんだが、スーツケースに入っているシンセサイザーなんだ。とても奇妙な見た目だ。ふたを開けると、中におかしなシンセサイザーが組み込まれている。空港の入国管理局では毎回、爆弾だと思われるよ。1970年代初頭に作られたモジュラーシンセサイザーだ。どんな音でも、1950年代のSF映画のようなサウンドにしてしまう機材なんだ。テクノ・アニマルではとても頻繁に使っていたね。正直、ザ・バグとしてはあまり使わないんだが、本当に美しい機材だ。デザインも素晴らしい。タイムカプセルみたいにほかの時代にタイムワープすることができるのさ。スタジオは時空移動できる場所みたいなものなんだ。俺は、自分のスタジオを、“武器倉庫”と表現することもあるし、“宇宙ロケット”と表現することもある。スタジオは日によって形を変えるんだ。音の要素を引き立たせ、特殊な感覚を引き起こしてくれる機材たちはとても大切な物だ。俺は音のトーンやテクスチャに取りつかれているんだ。テクノ・アニマル時代でも、エレクトロニック音楽のプロデューサーの多くが、プリセットやあらかじめ設定された状態のままで機材を使っていた。そうして作られた音楽に、プロデューサーのアイデンティティは存在しないと思う。そこにあるのはその機材のアイデンティティだけだ。その音は、同じ機材を使う全ての人と同じ音になってしまう。課題は、“どのようにしたら機械を使って、自分の言葉を伝えることができるか?”ということだ。どのようにしたら、自分というアーティストだと即時に気付いてくれるサウンドを出すことができるか。例えば、エイフェックス・ツイン。彼の音楽は、トラックを聴いた瞬間から彼のものだということが分かる。そういう点において彼のことを尊敬するよ。リズム・アンド・サウンドも同様にだ。彼らも、機械を使っているのにも関わらず、彼らのトレードマークとなる独自のサウンドを持っていた。俺が目指しているのはそういうものだ。

Part3:ザ・バグを取り巻く人や環境、制作に影響を与えている要素

 

Amazon.co.jpから購入定期購読(特典つき)

バックナンバー

TUNECORE JAPAN

@GROOVEmagazine からのツイート