[もの] 紙から音楽を伝える

青真鶴日記 by 青野賢一 2013年3月14日

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改めて言うまでもなく、音楽は聴くものである。目前で繰り広げられるライブで聴く(この場合は観るという側面もあるが)、あるいはCDやレコードなどのメディアを通して聴く。しかし、その周辺には、ことばというものが多く存在することもまた事実であろう。聴くものへの理解を深めたり、音楽の背景や世界観を伝えるという点において、ことばは重要な役割を担っていると言っていいだろう(このコラムもそうした試みのひとつであるわけだが)。今回取り上げるのは、3月6日にリリースされたnaomi & goroの新譜『CAFÉ BLEU SOLID BOND』に併せて制作されたフリージャーナルである。


2012年も終わろうとする12月のある日、ギタリスト・伊藤ゴローさんと「333DISCS」の伊藤葉子さん、「commmons」の瀬川さんが事務所にやって来た。3月に発売されるnaomi & goroのアルバムについての相談、ということは事前に伺っていたが(アルバムの内容が1984年にリリースされたスタイル・カウンシルのデビューアルバム『CAFÉ BLEU』の全曲カバーということは事前に知っていた)、お会いして話をするまでは詳細はわからなかった。聞けば、新譜の世界観や、その元になっているスタイル・カウンシルについてを、新聞のような形態でまとめたい、とのこと。そうして、私はこの企画に編集者として携わることになった。
新聞のような、というリクエストがまずゴローさんからあり、たまたま私の手元にあって、資料となりそうなものをいくつか提示して、片面はアルバムジャケットのアートワークをもちいたポスター、もう片面は新聞、ということが初回の打合せで決まった。その後、こうした音楽に対して知識ではなく皮膚感覚として理解のある編集者Yさんに声を掛け、ふたりで編集会議を行い、コンテンツを練って、書き手を選定してゆく作業に入る。あらかた企画がまとまったところで、葉子さん、瀬川さん(つまりレーベルサイド)に投げかけ、またデザインを担当するベルリンの「シンプル組合」のティルマンさんにラフを起こしてもらう。続いて、原稿発注、取材の段取りなどを組んでいった。

このフリージャーナルで目指したかったのは、情緒的なものと評論的なものの共存である。作り手のことばとして、ゴローさんの対談やボーカルの布施尚美さんのインタビューを載せ、作品に対する思いを語ってもらうのは勿論のこと、私的な視点から書き綴ってもらう小西康陽さん(音楽家)のエッセイ、スタイル・カウンシル登場の時代背景と、今『CAFÉ BLEU』をカバーすることの接点を探る大谷能生さん(音楽家・批評家)の評論、そして新聞的な佇まいを保つのに欠かせなかった、といだあずささんの四コマ漫画、どれもがそれを実現するのに必要なものであった。それぞれが作品との距離を独自に取り、それはさながら作品を中心とした太陽系の様相を呈する。作品に対するコメントは、彗星のように散らばり他のテキストの間をすり抜けて余韻を残す(デザイン上も各所に散りばめられている!)。そんな風にして出来上がった『The CBSB Journal』は、新聞的な読み応えと、リズムのあるデザインが同居したおもしろいものに仕上がったと自負しているのだが、いかがだろうか。ウェブでは拡大版と銘打って、紙面未掲載の楽曲解説や対談もアップしているので、併せてお読みいただけると幸いである。最後になってしまったが、naomi & goroの『CAFÉ BLEU SOLID BOND』というアルバムが素晴らしいものでなければ、こうした目論見も上手くゆくはずがなかったことを付け加えておきたい。

CAFÉ BLEU SOLID BOND / naomi & goro (333DISCS / commmons)


naomi & goro

真っ青

クラブのみならず、ファッションショーやホテル、ショップ、カフェなど、およそ音楽と触れ合うことが出来る空間すべてに良質な選曲を提供してきた山崎真央(gm projects / AKICHI RECORDS)、鶴谷聡平(NEWPORT)、青野賢一(BEAMS RECORDS)の3人が結成したユニット「真っ青」。20年以上のDJキャリアに裏付けされたスキル、レコード・CDショップのバイヤー経験がもたらす豊潤な音楽的バックグラウンド、そしてアート、文学、映画などにも精通する卓越したセンスから生まれるそのサウンドは、過去、現在、未来に連なる様々な心情を呼び起こし、聴くものの目前に景色を描き出すものである。


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