[こと] 朗読とダンスと音楽と

青真鶴日記 by 青野賢一 2013年1月31日

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選曲の仕事が関わることのできる領域というのは、思いのほか幅広い。クラブやカフェなどでライブで行うDJのほか、ファッションショー、ショップや展示のための選曲、ラジオでの選曲、あるいは雑誌やウェブで楽曲を紹介するのも選曲という行為と呼んで差し支えないかもしれない。今回、私が携わったのは、朗読とダンスのユニット「6.2m」の公演である。これまで、朗読するテキストを選ぶということはやったことがあったが、選曲で関わるのはこれが初めて。自分にとっても非常におもしろい経験だった。

「6.2m」は、マエダエマさん(朗読)とおどり奏さん(ダンス)からなるユニット。結成されたのはここ数か月のあいだである。マエダエマさんは、昨年9月に荻窪「6次元」で絵やことば、写真などで構成された個展を開催した、現役の美大生。おどり奏さんは、ブックコーディネーターの内沼晋太郎くん(numabooks)のもとで働きながら、各所でダンスを踊っている人物だ。このふたりが、内沼くんの手引きで出会い、意気投合して結成されたのが「6.2m」というわけである。昨年の12月に入って、公演のプロデュースをする内沼くんから音楽監修の相談を受け、その場で「6.2m」のふたりも交え色々とアイディアを出し合い、大まかな内容はトントン拍子に決まっていった。善は急げ、とはまさにこのことである。

本公演は3幕構成で、1幕は最果タヒさんの『空が分裂する』(講談社刊)から抜粋した詩に、私が選曲とエディットをした音楽をつけたもの。2幕目、3幕目はゲストミュージシャンに協力していただき、ゲストミュージシャンによる「課題曲」に彼女たちがテキストとダンスをつけていく2幕と、「6.2m」から「課題詩」を提出し、それにゲストミュージシャンが音楽を生演奏する3幕から成っている。音楽監修のやることは、1幕目の選曲と編集、そしてゲストミュージシャンの選定だ。まず、1幕目の朗読のデモをデータで送ってもらい、雰囲気に合いそうな曲を粗選びする。そこから試行錯誤を重ねて曲を決定し、PC内でエディットしてゆく。1つの詩に対して1曲という場合もあれば、3~4曲を短く編集して使う場合もある。それと平行して2幕目、3幕目に協力いただくミュージシャンの方にお声がけを始めていき、1月20日の公演にはARAKI Shinさん、2月3日の公演にはharuka nakamuraくん&AOKI, hayatoさんにご出演いただくこととなった。

1月20日に下北沢「B&B」で開催された第1回公演は、ゲストミュージシャンにARAKI Shinさん(sax)を迎えて行われた。予想を上回る人数のお客様が見守る中、静かに公演はスタートした。都内某所でフィールドレコーディングした踏切の音がピタリと止むと、朗読が始まる。音楽の再生を開始したら、もう後は朗読とダンスのタイミングに任せるしかない。その間、音楽と朗読のボリュームのバランスを変化させたりすることで、流れを作っていった。

1幕目が終わり、暫し休憩を挟んで2幕目。ARAKI Shinさんが用意した「課題曲」に朗読とダンスが重なる。2幕目のテキストは、本番まで私も知らされていなかったのだが、何とも静かにユーモラスであり、お客様からも好評を得ていた。3幕目は、「クラムボンは笑ったよ」で知られる宮沢賢治「やまなし」だ。最初にARAKIさんのソロ演奏が5分ほどあり、それから朗読とダンスが加わった。こちらもリハーサルなしの文字どおりぶっつけ本番で、緊張感のあるテンションの高いものに仕上がっていった。



朗読は演劇とは違って、感情移入があまり過剰にならない方がいい、と個人的には思う。舞台俳優が、その動き、その表情、その台詞で観客に物語を伝えるよりも、もっと客観的というか、テキストとのある程度の距離がある、というか。そして、そこに加わるダンス、音楽も同様に説明的になってしまってはおもしろくない。テキストを取り囲んで、朗読、ダンス、音楽が三角形を描き、場面場面で少しずつかたちを変えてゆく、そんなイメージとでも言えばいいだろうか。これは容易なことではないが、それゆえやっていて常に発見がある。選曲でできることは、まだまだあるのではないかと考えるいいきっかけになったこの取り組み、長く続けていけたらと思う次第である。この原稿を書いている段階では、2回目の公演が控えているわけだが、こちらも今から楽しみで仕方がない。

Photo by Yatoo Takashi

真っ青

クラブのみならず、ファッションショーやホテル、ショップ、カフェなど、およそ音楽と触れ合うことが出来る空間すべてに良質な選曲を提供してきた山崎真央(gm projects / AKICHI RECORDS)、鶴谷聡平(NEWPORT)、青野賢一(BEAMS RECORDS)の3人が結成したユニット「真っ青」。20年以上のDJキャリアに裏付けされたスキル、レコード・CDショップのバイヤー経験がもたらす豊潤な音楽的バックグラウンド、そしてアート、文学、映画などにも精通する卓越したセンスから生まれるそのサウンドは、過去、現在、未来に連なる様々な心情を呼び起こし、聴くものの目前に景色を描き出すものである。


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