[もの] 空間としての音を現すスピーカー

青真鶴日記 by 青野賢一 2012年8月20日

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先日、真っ青の一員でもある山崎真央が企画運営を行ったライブプログラム「はとばとおんがく vol.1」を体験すべく、横浜の「象の鼻テラス」へ行った。少し早めに到着したので、横浜中華街に立ち寄ってから、休日ムード満点の山下公園を抜けて(ちょっと迷いながら)到着した「象の鼻テラス」は、三面ガラス張りのスペース。入り口からみて右手には横浜港、正面には赤レンガ倉庫や観覧車が見える。この日は、サウンドアーティストのevalaさんと、サウンドエンジニアの加藤久直さんによる、サラウンド音響を使ったライブで、会場に入ると、『青真鶴日記』で山崎真央が紹介した〈sonihouse〉の鶴林万平さん制作の12面体スピーカー「scenery」が7台設置してあった。

18時半頃から演奏が始まる。ガラスの向こう側の景色が夕方から夜へとゆっくり変化してゆく。港を船が通り過ぎる。そんな中、吟味された環境音と電子音が、文字通り、空間を交錯し、身体の周りを、音楽がすり抜けていった。音というものは目に見えないけれど、確かにその存在、その動きが感じられるライブであり、とても刺激的なものであった。

ライブ後のトークパートでは、サラウンドになったときの各スピーカーの音の繋がりや構築する「空間」の話など、興味深い話がいろいろ出てきた。そうした話を聴きながら考えたのは、人間の耳の補正能力の優秀さである。一般的な音楽ソフトは、大体が音を左右に振り分ける「ステレオ」と呼ばれるもので、当たり前だが、左右のスピーカーからしか音は出ない。にもかかわらず、私たちはボーカルの位置や、各楽器の位置を認識することができるだろう。これはもちろん、制作時におけるエフェクトなどの各種音響処理の賜物であるわけなのだが、人間の耳は、それを上手く補正し、より立体的に捉えようとするからおもしろい。
さらに、解像度の優れたスピーカーであれば、右、左、センターだけでなく奥行きまで、つまり演奏されている空間をも聴くものに想像させてくれるだろう。

個人的に、いいスピーカーの条件を考えるとき、まず浮かぶのは、原音を忠実に再現してくれる、というところだ。「誇張が少ない」と言い換えてもいいだろう。それから、それぞれの音の解像度、分解度も欠かせないところである。家での使用を考えたとき、いわゆる昔のオーディオマニアのようなリスニングルームは作れない(作らない)だろうから、リビングルームなどでの使用を想定したサイズ感やルックスも考慮しなければならないだろうし、また買いやすい価格というのも重要なファクターになってくる。私が携わるBEAMS RECORDSでは、これら諸条件を満たしてくれるスピーカーとして、アメリカの音響メーカー〈Klipsch(クリプシュ)〉のスピーカーを取り扱っている。

元々、長くイヤホンを取り扱っており(このイヤホンのシリーズもスピーカー同様、原音に忠実な再生音だ)、音に対する信頼感を得ていたし、あの「クリプシュ・ホーン」の設計思想が、これら民生機にも活かされているのがいい。
この〈Klipsch〉のスピーカーを異なる条件で試聴してもらう企画をBEAMSオフィシャルサイトでも展開したが、どのケースでも、非常に音楽的な空間を描き出してくれた。

音楽ソフトを取り扱っている身として、そしてまた選曲やDJをする者として、聴いていただく方には、音楽の魅力に取り憑かれてもらいたいと思う。そのためには楽曲のポテンシャルをできる限り引き出し、音楽的な空間を眼前に現出させる必要があって、それを実現してくれるもののひとつとして、この製品を取り扱っているのだ。

「象の鼻テラス」で私が体験したのはサラウンドであったが、いわゆる「ステレオ」であっても〈Klipsch〉のスピーカーは、人間の耳の補正能力を存分に引き出し、目の前に立体的な音空間を現してくれると感じている。BEAMS RECORDSの店頭では試聴もできるので、ご興味ある方は是非ショップに足を運んでもらえたらと思う。

真っ青

クラブのみならず、ファッションショーやホテル、ショップ、カフェなど、およそ音楽と触れ合うことが出来る空間すべてに良質な選曲を提供してきた山崎真央(gm projects / AKICHI RECORDS)、鶴谷聡平(NEWPORT)、青野賢一(BEAMS RECORDS)の3人が結成したユニット「真っ青」。20年以上のDJキャリアに裏付けされたスキル、レコード・CDショップのバイヤー経験がもたらす豊潤な音楽的バックグラウンド、そしてアート、文学、映画などにも精通する卓越したセンスから生まれるそのサウンドは、過去、現在、未来に連なる様々な心情を呼び起こし、聴くものの目前に景色を描き出すものである。


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