ニーナ・シモンについて

青真鶴日記 by 鶴谷聡平(真っ青) 2010年12月23日

12月某日
ニーナ・シモン(Nina Simone)の多様な音楽スタイルの中に、自分の好きなものが大体詰まっているってことに今さらながら気が付いた。

1年の内でジャズが最も良く聴こえるのは、やっぱり冬だろう。自分でもこの時期、ジャズをかけることが多くなっている。僕はNEWPORTという名前のカフェ・バーをやっていて、そこではいろんな音楽を毎日かけているのだが、寒くなってくると自然にジャズをかける割合が増えてくる。

その中でも、僕にとってはニーナ・シモンが一番しっくり来るような気がする。どの時代のアルバムでもだ。どうしてだろうと思って考えたら、それはきっと彼女の音楽に様々な要素が混在しているからなのだ。ジャンルに関わらずいろんな音楽が好きな自分にとっては実に理想的だ。

ニーナ・シモンの音楽を、一言でジャズと言い切ってしまうには最初から無理があるのかもしれない。そこにはブルース、フォーク、教会音楽、アフリカ、そしてクラシックの要素が色濃く存在する。元々はクラシックのピアニストを目指して勉強していたという彼女の’58年のデビュー・アルバム『Little Girl Blue』には、既にそのすべてが入っていて、ニーナ・シモンというシンガー/ピアニストのことを知るには最適だろう。

このアルバムの大半を占めるバラードは、ジャズというよりはクラシカルなピアノと深みのあるヴォーカルによって、彼女のスタイルをユニーク極まりないものにしている。ガーシュウィン・ナンバーの”I Loves You Porgy”はその典型で、比類なき美しさが胸を打つ。この曲はリリース当時のアメリカでTOP 40入りするヒットとなった。一方で、3曲ほど収録されているスウィンギンな楽曲、”Mood Indigo”、”Love Me Or Leave Me”、”My Baby Just Cares For Me”では、ピアノがグルーヴィーでぐいぐいと引っ張っていく。こちらのスタイルもまた人気がある。

僕が初めてニーナ・シモンを知ったのは、多分’88年頃だったと思う。テレビでシャネルNo.5のCMが流れていて、そのCMソングがニーナ・シモンの”My Baby Just Cares For Me”だったのだ。「なんだこの大人っぽくてかっこいい曲は!」と瞬間的にやられて、友達に曲名を教えてもらうとすぐにLPを手に入れた。このシャネルの CMの効果で、同曲は’87年にUKチャートで5位まで上昇したそうだ。80年代は今考えると凄い時代だったのだ。

ニーナ・シモンの音楽性はその後さらに広がっていく。60年代以降にはロックやポップスを取り上げたり、アフリカやレゲエのリズムを導入したりしたが、どれも彼女らしいアレンジが施されていて独特の世界はますます濃密になっていった。

ライヴ・アルバムも含めると膨大な数のアルバムを残しているが、オリジナル・アルバムでどれか一枚と言われれば、僕は迷わず『Little Girl Blue』を挙げたい。同時に、ライヴ・アルバムの方が彼女の素晴らしさが伝わるんじゃないかとも思う。ライヴ・アルバムだとしたら、『Nina Simone At Newport』や『It Is Finished』あたりがおすすめだ。

Little Girl Blue Nina Simone at Newport It Is Finished

書:華雪
「青真鶴日記」「真っ青」の書は、書家 華雪さんによるものです。
http://www.kasetsu.info/

青真鶴日記 by 真っ青

青真鶴日記(あおまなづるにっき)は、真っ青(山崎真央/鶴谷聡平/青野賢一)の3人がそれぞれのスタイルで音楽を見つめ綴っていく、日記形式の連載です。青→真→鶴(=青真鶴!)の順にリレー形式でお送りします。

真っ青

クラブのみならず、ファッションショーやホテル、ショップ、カフェなど、およそ音楽と触れ合うことが出来る空間すべてに良質な選曲を提供してきた山崎真央(gm projects / AKICHI RECORDS)、鶴谷聡平(NEWPORT)、青野賢一(BEAMS RECORDS)の3人が結成したユニット「真っ青」。20年以上のDJキャリアに裏付けされたスキル、レコード・CDショップのバイヤー経験がもたらす豊潤な音楽的バックグラウンド、そしてアート、文学、映画などにも精通する卓越したセンスから生まれるそのサウンドは、過去、現在、未来に連なる様々な心情を呼び起こし、聴くものの目前に景色を描き出すものである。


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