ドラミングを激変させる!関節コントロール・テクニック/MI Japan ドラム・クリニック

MI JAPANドラム・クリニック by 山部三喜男 2010年8月12日

LAハリウッドに本校を構える世界最大級のミュージック・スクール、Musicians Institute(MI)と直結した独自のカリキュラムで充実した授業を行い、数多くのミュージシャンを輩出しているMI JAPAN。経験と実力を兼ね備えた講師陣のレッスンが魅力の本校レギュラー講師が、その授業の一部を誌上クリニックとして公開するこのコーナー。今月はMI JAPAN福岡校で教鞭を執る山部三喜男講師が、ドラミングを変える身体の使い方についてレクチャーする。日頃、MI JAPANでどのような授業が行われているかを体験しつつ、とりかかってみよう。

はじめに

みなさん、こんにちは! 山部三喜男です。今回は『ドラミングを激変させる! 関節コントロール・テクニック』と題して、ドラミ ング以前の、身体の使い方について取り上げてみたいと思います。ドラムの奏法として有名な、”モーラー・テクニック” の習得の助けにもなると思います。

みなさんは、ドラムを演奏していて、自分の動きがとても不自由だと感じたことはありませんか? 例えば不自由とまでは感じてなくても、”つい力みすぎる” とか、”腰や肩、手首に故障を抱えている”とか……。

しかし、世界で活躍するスーパー・ドラマー達はどうでしょうか。彼ら達人の身体や、その使い方をよく観察してみると、非常に無駄が少なく、自然で合理的な動きをしていることに気がつきます。これを車の運転に例えれば、スーパー・ドラマー達の身体感覚は、隅々まで整備が行き届いた車を、一流ドライバーが運転しているようなものですが、アマチュア・ドラマーは、”あっちがギシギシ、こっちがギシギシ” の整備不良の車を、へっぽこドライバー(おっと失礼!)が運転しているような状態。これでは演奏レベルやクオリティに差が出て当然なわけです。

しかしこれまで、こういったことはドラム関連の書籍には、あまり詳しく解説されてきませんでした。難解になりやすく、あまりにも深くて簡単には扱いにくい分野だからでしょう。

そこで今回は、紹介できる種類と数に限りがありますが、あまり知られていない、身体の動かし方のコツを、いくつかわかりやすく紹介してみたいと思います。

▼対応動画【MI×ドラマガ】OPEN HOUSE/山部三喜男#1

 

▼対応動画【MI×ドラマガ】OPEN HOUSE/山部三喜男#2

 

対応動画【MI×ドラマガ】OPEN HOUSE/山部三喜男#3

 

対応動画【MI×ドラマガ】OPEN HOUSE/山部三喜男#4

1:身体には使えていないところがたくさんある

mi_dm_2010_08_score1

まず、Ex-1、Ex-2をスネア・ドラムか練習パッドで1分ほど叩いてみてください。このテンポで演奏できなかったり、手や腕がすごく力んでしまう人は、まだまだ手の自然な性能を引き出せていません。

ドラムを演奏するという行為に限らず、日常動作の”立つ、歩く、物を取る”などの動きと比較しても、一般の人々と一流ドラマー達では、ものすごく差があります。その差とは、筋力や体格の違いではなく、”一般の人は身体の中に使えていない部分がたくさんあり、その分、身体の性能を引き出せていない”からです。人は通常、使いやすい部分にばかりに頼り、その結果、そこに負担が集中して、動きがぎこちなくなり、故障の原因になったりします。

身体の中でも、特に一般の人が使えていないのは、胴体もしくは体幹部と呼ばれる、手足を除いた肩から股関節までの部分。ここが上手に動かせるようになると、身体本来の合理的な動きが引き出せるようになるキー・ポイントとなりますが、いきなり胴体の動きをトレーニングするのは難しいので、まずは手や腕のエクササイズに取り組んでみましょう。意識が発達している手や腕に取り組むことで、動きを開発して変えるということが理解しやすくなります。どれもシンプルなエクササイズですが、結構難しいと思います。

2:肘だけ回す

mi_dm_2010_08_photo1

▲矢印の方向に肘関節を回してみよう。肩や手首の部分がつられて動かないよう注意。

テーブルや床などの平らなところに手をつき(両手でも片手でもOK)、腕を真っすぐに伸ばした状態で、肘だけ回してみましょう(写真A)。このときに肩や手首の部分がつられて動かないよう気をつけます。もちろん、360度クルクル回るわけではありませんが(笑)。この時点でもほとんど肘が動かない人は、まずこの状態で、十分に回す練習をしてください。

次に、テーブルなどにつけていた手のひらを浮かせて、手首が一緒に回らないようにしながら、支えがない状態で肘だけ回してみてください(写真B)。どうですか? はい、ほとんどの人が動かし方がわからなくなったはずです。「え?そんな動きって、できるの?」と思うかもしれませんが、コツを覚えれば決して難しくありません。この動きは骨格を意識して動く”コツ”(シャレみたいですが)である、”分離”をつかむためのきっかけになります。骨格の動きを意識して動ければ、無駄な力が抜けるようになっていきます。できない人は、3の、”順番に動かす”を参考にして、少しずつこの動きの感覚をつかんでいってください。

3:順番に動かす

今度は、関節ごとに順番に動かす練習をしてみましょう。

mi_dm_2010_08_photo2

▲このエクササイズは、レギュラー・グリップでショットするときの動きの質を高めることができる。写真のように手首、肘、肩の関節を順番に動かしてみよう。

片手(もしくは両手で)を前に伸ばし、手のひらを上に向けます(写真C)。次に、肘や肩はそのままで手首だけ内側に回します(写真D)。どうでしょうか? これも結構難しいかもしれませんね。そして、手首の位置はそこで止めて一緒に回ってしまわないようにしながら、肘を内側に回します(写真E)。そして最後に、肩を回します(写真F)。肩の部分は、回すというより前に出ると言った方が良いかもしれませんが、肩甲骨を上方に引き上げることが必要です。

このエクササイズは回転系の動きの練習で、なめらかにできるようになれば、レギュラー・グリップでショットするときの動きの質を高めることにもつながります。基本は”骨を操る”ことがコツです。

4:指の力を抜く

次は、ドラム・コーの世界でも行われているエクササイズを紹介します。ドラミングにおける音の切れ味やヌケのよさ、スピードのレべル・アップに効果的です。

mi_dm_2010_08_photo3

▲写真のように手首を曲げたまま、矢印の方向に腕を動かしてみよう。

まず、両腕を顔の前に上げて垂直に立て、手首を反らして手のひらが上を向くようにします(写真G)。その状態で、手首は曲げたまま左右に腕を揺すります。指先が遠心力でしなって、手のひらに当たるように、指のつけ根の関節の力だけ抜くことができるでしょうか? 力を抜こうとすると、つい手首の固定まで抜けてしまいがちだと思います。また、右手はわりとできるが、左手はあまりできない、など左右差があることもよくありますが、できるだけ左右どちらでも同じくらいできるように、根気よく練習してみてください。

5:ストロークの中で実感する

では、今までの手や腕のエクササイズを踏まえて、実際のドラミングの中では、関節を明確に区別してコントロールする感覚が、どう生きてくるのかを説明します。

mi_dm_2010_08_score2

Ex-3は、3連符の各拍のアタマにアクセントがついたリズムですが、これをモーラー・ストローク(またはモーラー奏法。DVDや動画や教則本などさまざまな情報が出ていますので、詳しくはそちらをあたってください)で演奏するとき、手首や肘の使い方がとても重要になります。

この奏法においては、関節を連動させて腕全体をムチのように使い、1回のストロークの流れの中で3連打を処理します。3連符の3つ目を打った直後に肘を脇に引きつけ、その勢いをうまく先端に伝えてアクセントをつけますが、このとき、手首の位置が肘と同時タイミングに動いてしまわないことが重要です(譜例の解説参照)。そして指の関節の力もできるだけ抜けていないといけません。

これを何かに例えてみると、現在は使われなくなった蒸気機関車に例えることができるでしょう。知らない人も多いかもしれませんが、実は蒸気機関車は最初の車両以外には動力はついていません。それなのにどうして、あれほど重い何両もの後続の車両を引っ張って動かせるのかというと、それは各車両の連結部に”遊び”があるためなのです。つまり、最初の車両はすぐ後ろの車両を動かす力くらいはあるので、遊びの距離動いた分、慣性エネルギー(みなさん物理の時間で習いましたね)が働いて推進力に加わり、後続車を引っ張る力になります。それは後ろの車両になるほど増幅されるので、結果、全車両が動きます。しかも最後はすごいスピードで!

この原理を手に置き換えた場合、手が速くパワフルに動かないと言っているドラマーは、関節の部分に力が入り、連結部に遊びのない機関車のようになっている状態です。これでは全体がひとつの塊みたいなものなので、素早く動かしにくくなってしまいます。関節同士がつられないように動かすことができればこれが改善されます。しかも身体は機関車と違って各パーツにも動力がありますから、より合理的に動かせます。

まとめ

どうでしたか? やってみたことのない動きばかりで、とまどったかもしれませんね。できるだけドラミングにすぐ効果が出そうなものをピック・アップしてみました(効果には個人差があります)。本来ならばこのテーマだけで、本が楽に一冊書けるような分野ですから、ここに紹介したのは、ほんの一部にしかすぎません。

より本格的に成果を上げたい人は胴体の部分(特に肩甲骨と股関節)を動かすトレーニングに取り組むことをお勧めします。何でも楽に、そしてスムーズになり、今までどれほど固く動いていたのかがわかるようになります。いろいろ頑張って練習しているけど、今1つ伸び悩んでいるドラマーは、ぜひこの動きを練習してみてください。新しい感覚をどんどん生み出しましょう!!

山部三喜男 プロフィール

pit-yamabe’71生まれ。15歳のときにドラムを始める。10代のうちにロックやポップス、フュージョン等の様々なジャンルのバンドを経験した後、20代に入ってか らはホストクラブでのハコバンドで演奏。環境と音楽性に疑問を感じ、ハコを辞めた後は会社務めをしながら音楽活動を続ける。25歳の時に再び始めたハコバンドがきっかけで様々な有名ミュージシャンとセッションする機会を得る。’98からはMIジャパン福岡校、PIT講師になり現在に至る。福岡内外でライブ 活動、レコーディング等を頻繁に行っている。

これまでにライブ等で共演したアーティストは、鈴木茂、中西圭三、有山じゅんじ、木村光輝、田口悌二、浅野孝巳(ゴダイゴ)、森本太郎(ザ・タイガース)、ワガン・ンジャイローズetc・・・

また、セミナーのサポート、セッション等では、櫻井哲夫、キャロル・ロジャーズ、スコットヘンダーソンetc・・・

最近では、中西圭三(vo)、奥本亮(key)、増崎孝司(gt)、村上望(bs)、緒方裕光(gt)他のメンバーでビルボードライブ福岡にて2日間公演を行い、成功を収めている。

 

■この記事について

本記事は、『リズム&ドラム・マガジン2010年8月号』掲載のページを転載したものです。

→『リズム&ドラム・マガジン2010年8月号』の詳細を見る

MI JAPAN OPEN HOUSE:3誌連動・動画クリニック

mijapan-footerlogo.jpg

MI Japanは、ハリウッドにある世界最大級の音楽学校MI(MUSICIANS INSTITUTE)の日本校として、全国6ヵ所に拠点を置くミュージシャン養成機関。

MI JAPAN各校の詳細はmusicschool-navi.jpで!

OPEN HOUSEロゴ

MI Japanのプログラムを1日に凝縮した体験レッスンのこと。レギュラー講師によるクリニックなどにも,レベルを問わず誰でも参加可能。参加には予約が必要。スケジュールなどは、http://www.mi-japan.com/event/open-house.htmlでチェック!

3誌連動動画クリニックに登場した講師陣のプロフィールはこちら

TUNECORE JAPAN