16音符でのフレーズを変化させ”曲の中で生きるドラム・フィルを作る”/MI Japan ドラム・クリニック

MI JAPANドラム・クリニック by 丹下眞也 2010年5月19日

LAハリウッドに本校を構える世界最大級のミュージック・スクール、Musicians Institute(MI)と直結した独自のカリキュラムで充実した授業を行い、数多くのミュージシャンを輩出しているMI JAPAN。経験と実力を兼ね備えた講師陣によるレッスンが魅力の本校レギュラー講師が、その授業の一部を公開するこのコーナー。

今月はMI JAPAN名古屋校で教鞭を執っている丹下眞也講師。ヘヴィ・メタル・バンド、OUTRAGEで長年幅広い活動を行っている彼が、スネアとバス・ドラムの16分音符を軸に”ドラム・フィルを作り上げる”というテーマでエクササイズをレクチャーする。日頃、MI JAPANでどのような授業が行われているのか体験しつつ、とりかかってみよう。

はじめに

はじめまして。OUTRAGEという名前のヘヴィ・メタル・バンドでドラムを叩いています丹下眞也です。バンド活動と並行して、MI JAPAN名古屋校PITでインストラクターもやらせていただいていますが、今回はMI JAPANで日頃行っている授業のうち、スネアとバス・ドラムでの16分音符のフレーズをだんだんと変化させて、” 曲の中で生きるドラム・フィルを作り上げる”というコンセプトを元にいろいろなアイディア例を提示して、話を進めていきたいと思います。

ここではツイン・ペダルを用いて進めていきますが、内容はいたってシンプルですので、ツイン・ペダルを使い始めたばかりの初心者でも十分に理解していただけると思います。ツイン・ペダルを普段の演奏で使わないドラマーも、左足のコントロールが良くなれば、右足の自由度がさらに増して、普段の演奏の幅もより広がってくると思いますので、ぜひトライしてみてください。

また、フィルを叩くとき、スネアでのロールやタム回ししか使わないというドラマーも、ツイン・ペダルを使うことによって、フィルに使える音が加わりますから、フレーズの幅がぐっと増えます。フィルのメロディもずいぶんとカラフルになると思いますのでぜひチャレンジしてください。

【MI×ドラマガ】OPEN HOUSE/丹下眞也♯1

【MI×ドラマガ】OPEN HOUSE/丹下眞也♯2

スネアとバス・ドラムのみを使う

mi_dm_2010_05_score1_1譜例1(対応動画#1 – 0:44から)はスネアとバス・ドラムだけを使ったフレーズです。この1小節はすべて16分音符で埋めています。これだけでも十分にフィルに使えるフレーズですね。

このフレーズを叩くときには、左右のバス・ドラムの音量や音色、スネアとバス・ドラムの音量バランスに気をつけながら練習をしてください。よく見かけるのはスネアだけ大きな音でバス・ドラムの音量が十分に出ていないドラマーです。スネアの甲高い音は人間の耳には入り込んできやすいですが、低音のバス・ドラムはちゃんとした音量がないとどうしてもフレーズの中で聴き取りにくいものです。またスネアだけ浮き出てくるようなバランスになってしまうと、ボトムの効いていないスカスカなフレーズになります。ヘヴィ・メタルの曲の中ではボトムの音は重要な要素ですから、このポイントはしっかり押さえてほしいと思います。

ボトムに重心を置く方法としてはバス・ドラムを踏んでいる間、極力両手を”下のポジション”でキープすると良いと思います。手が上の方に上がっていれば、その分だけどうしても重心は上にいってしまうので、重心を下げるため、私の場合はスティックがタップを叩くくらいの位置、つまりスネアから5センチくらいの高さにキープしています(ただし、バス・ドラムとスネアのモーションがつながっていないと叩けなくなるくらいのテンポまでスピードがアップしたときなどは例外となります)。

このフレーズを叩くときは、まずゆっくりとしたテンポから練習をスタートしてください。テンポは♩= 80くらいから始めて、きれいな音が出てると思ったときに少しずつアップしてください。

mi_dm_2010_05_score1_2譜例2(対応動画#1 – 1:09から)は1拍半のメロディで動いていくフレーズです。当たり前の話ではありますが、音符をどのように歌うかでフレーズの聴こえ方は変わってきます。この譜例はまさにその歌い方が顕著に表れます。意図的な場合を除いては、この譜例のような場合、1拍半のフレーズは”1拍半、1拍半、1拍”の区切りで歌うべきだと思います。

1拍半のフレーズは、曲の中で叩くことで”ハッ!!”とするようなスリリングな感触が出ます。ただし入れる場所によっては曲の流れを壊してしまうこともありますので、注意が必要です。使うときは曲の中でフレーズとして的確なのかどうかを判断をしてください。

タムを加える

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譜例3(対応動画#1 – 3:28から)は、aのスネアのパートの一部を、bではタムに変えてみます。スネアだけのときよりも少しカラフルになりますね。いたってシンプルなフレーズですが、このようにしていけば、この譜例3と同じ音符の並びだけでもいくつものフレーズを作り上げることができます。自分のものにするまで何度も練習してくださいね。

実はこの譜例3に似たフレーズをOUTRAGEの最新アルバム『OUTRAGE』の「SHELLS RAIN DOWN」の中で使っています。ちなみにこのアルバムはスウェーデンでレコーディングしました。私の中ではスウェーデンのハード・ロック・バンドで真っ先に思い出すのがEUROPEなのですが、彼らの一番有名な楽曲「ザ・ファイナル・カウントダウン」のイントロ・フィルにそっくりなフレーズです。さすがに地元バンドによるヒット曲のイントロ・フレーズということで、プロデューサーもエンジニアも気がつき、EUROPEの曲を口ずさんでいました。フレーズ自体はシンプルでも、使い方次第でこのように強い印象をリスナーに残すことができるんですね。

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譜例4a(対応動画#1 – 4:33から)が実際に「SHELLS RAIN DOWN」で叩いているフレーズです。EUROPEの場合はハイ・タムからロー・タム、フロアに流れて、最後にスネアがきますが、私の場合は最後のスネアと一緒にチャイナも入れてみました。2つのパターンを聴き比べるなどして、ニュアンスの違いを感じ取ってください。

また、このフィルが叩けたら、シンプルなビートでいいので3小節リズムを叩いた後に、フィルを入れて叩いてください。そしてフィルを叩き終わった後、またリズムに戻るときにクラッシュを入れてください(譜例4b)。このとき左足はハイハットとフット・ペダルの移動が必要になってきますが、どのタイミングで足を移動させるかはフレーズ次第です。この譜例のようにフィルの後にクラッシュを入れてリズムに戻る場合、左足の移動タイミングは1拍目のウラ拍のハイハットを1つ抜いて、スネアのタイミングで動くと良いと思います。

この譜例をはじめ、今回取り挙げる譜例すべてに言えることですが、練習するときは、フィルだけひたすらクリックに合わせる方法と、このようにリズム・パターンとフィルを合わせて叩くというのを両方やってください。

16分音符以外の音符を含める

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譜例1〜3のフレーズまでは16分音符が1小節分全部埋まっていましたが、譜例5(対応動画#1 – 6:02から)ではいくつか音符を抜いたフレーズを作ってみます。難しいフレーズは実際にフレーズ自体を声に出して練習すると良いと思います。実際に歌うことによって、歌と身体の動きが一体化し、フレーズが変わっても短時間で対応できていくと思います。またこの1小節フレーズを続けて2小節のフレーズを作って練習してみるのも良いと思います。

ここでも譜例1〜3までの説明と同じような発展のさせ方で考えていくと、数え切れないほどのパターンが作れるようになってきます。

音符を”重ねる

mi_dm_2010_05_score5

ここまでのフレーズはスネアとバス・ドラムが同じタイミングで出てくることはありませんでしたが、譜例6(対応動画#2)は音符が”重なる”フレーズ作りに挑戦してみましょう。まずバス・ドラムはほぼ16分音符で踏みっぱなしで、その上に手のフレーズが重なってきます。手と足が重なっている音符の音が正確に揃ってるかチェックしながら練習してください。バス・ドラムが鳴りっぱなしで”ボトム”が効いているので、ヘヴィ・メタルの曲の中で使えるようなフレーズはここからいくつでも考えられるのではないでしょうか。またスネアやタムだけではなく、この譜例の中にクラッシュも織り交ぜてフレーズを作っていけば、フレーズのバリエーションは無限ですね。

今回は16分音符のみを使って考えていきましたが、上記の例を元に8分音符と16分音符を混ぜてみるなど、どんどんとフレーズを考えていってください。

左足のエクササイズ

mi_dm_2010_05_score6

最後に左右で叩くバス・ドラムの音量が揃わないなど、左足の動きに悩んでいるドラマーに試してほしいエクササイズを紹介します。

まず両手はオルタネートで、足順だけ変えて練習してください(譜例はその一例)。LRLR、LRLL、RLRRなどなどいろいろな足順が考えられますが、フレーズによって身体が左右に振られてバランスが取りづらいものがあります。しかしこのバランス感覚がツイン・ペダルにはとても大切なんです。どんなフレーズになっても左右のバランスが崩れずに、身体の重心をセンターにキープできると、自然と左右の音量が揃ってくるので、しっかり練習してください。

また音量を上げるために力いっぱいにペダルを踏み込むドラマーがいますが、踏み込めば踏み込むほどにペダルのビーターをヘッドに押し込むことになり、そのためビーターがヘッドをミュートしてしまい、その結果音量が上がりません。ペダルのスプリングも有効に使えませんから、速く踏むこともできません。足とペダルのフット・ボードが動くタイミングを連動させる練習として、足首を柔らかくブラブラさせてスプリングの力を感じながらフット・ボードやビーターが戻ってくるタイミングを身体で覚えてください。

最後に

おつき合いいただき、ありがとうございました。シンプルなことを発展させてフレーズを作っていくというコンセプトを元に生意気にもドラム・マガジンに書かせていただきましたが、私もいまだにドラムの勉強中であります。これからもドラミングにおいていろいろな発見があると思っています。だからこそドラムは楽しいですし、だからこそ音楽は楽しいんですよね。ドラマーのみなさん、これからも一緒に頑張っていきましょう。

丹下眞也 プロフィール

pit_tange15歳でドラムを始めると同時にHEAVY ROCKバンド「OUTRAGE」を結成。1987年ミニアルバムをリリース後、メジャーレーベルから9枚のアルバムをリリース。
日本人離れしたサウンドで一躍名をあげ、PANTERA、C.O.Cなど有名ロック・アーティスト来日公演の際、共演も務める。

数え切れない程の国内外でのLIVEツアーや、レコーディング経験も豊富で、ROCKでMETALなドラミングが武器。自身のレーベルも立ち上げ、CERBERUSにも加入。現在では、両バンドとも精力的に活動中。

OUTRAGE 公式サイト

■この記事について

本記事は、『リズム&ドラム・マガジン2010年5月号』掲載のページを転載したものです。

→『リズム&ドラム・マガジン2010年5月号』の詳細を見る

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