神保彰インタビュー(後編)〜「天声神保」を全部読み返したら、3日くらいかかってしまいました

コラム by 聞き手:西野正和 2014年2月21日

神保彰氏インタビューの最後は、新作のハイレゾ版とCD版の聴き比べからツアーの話、電子書籍の話まで、幅広い氏の活動を追う形で展開しました。

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16ビット/44.1kHzのCDフォーマットと、24ビット/44.1kHzの違いは、いったいどれくらいあるのか。実際にマスタリングスタジオ(キング関口台スタジオ)で、神保彰氏と聴き比べを行なってみましょう。また、ワンマンオーケストラでの全国ツアーや、『リズム&ドラム・マガジン』のインタビューやコラムをまとめた電子書籍の話など、神保づくしのインタビュー最終章です。聞き手はこれまで同様、ハイレゾの辛口コンシェルジュ西野正和氏(レクスト)にお願いしています。

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ハイレゾ版とCD版の聴き比べ!

西野 では、せっかくマスタリングスタジオでの取材なので、ハイレゾ版とCD版を聴き比べできたらと思います。神保さんとしては、どの曲をご希望ですか?

神保 では、「Crossover The World」にしましょうか。

(「Crossover The World」のハイレゾ版とCD版を試聴)

神保 うーん、これはすごい。良い環境で聴くと、如実に違いが出ますね。キックとスネアが自分の一番の判断ポイントなんですけど、24ビットだと、どっちもすごく音がグッと締まって、コンプレッションが良い感じでかかっている感じがします。16ビットの方は、ちょっと甘いというか、ちょっとふわっとしていますね。24ビットの方が、ガシガシ来る感じがある。

西野 ここまで違うのか、という感じですね。ハイレゾを語る際に、音楽が料理で、フォーマットが器だという喩えをよくするんです。ある料理を、どうお皿に盛りつけるか。その喩えでいくと、例えば192kHzと44.1kHzではお皿の大きさが違うという言い方になるんですが、今回試聴したのは44.1kHz同士でお皿の大きさは同じなのに、上げ底ではなく底がもっと深かったというか(笑)。CDフォーマットというお弁当箱だと、上からの見た目は美しく盛り付けられていて良いんですけど、上げ底ですぐにお箸が底に当たってしまうし、食べてみると意外に量が少なく物足りないようなところがある。でも24ビットだと、「ちゃんとお弁当箱の底がもっと深い、大盛弁当だった!」という感じがしました。上から見たところは一緒でも、食べた後の満足感が違うというか(笑)。

神保 僕も、ここまで如実に違うとは思っていなかったですね。僕は素人なので、よく分からないですけど(笑)。でも、全然違いますね。

西野 CD規格がもし24ビット/44.1kHzだったら、音楽世界は変わっていたかもしれないと思えるくらいの違いですね。結局、CDの規格があまりグルーブを上手く再現できないものだったから、「グルーブしないなら、かっちりしたものを作ろう。歌までかっちりさせてしまえ」ということで、音楽がどんどん作られてきた部分があると思うんです。でも、24ビット/44.1kHzなら歴史は変わっていたのかもしれないと思いつつ……。自宅で比較試聴して面白かったのが、「G Jam Blues」なのですが、こちらも聴かせていただけますか? 冒頭のギタリスト2人(アレン・ハインズ、マイケル・ランドウ)の演奏が、16ビットで聴くと普通に“作品”なんですけど、24ビットで聴くとギターショウでのデモ演奏を聴いているかのような感覚になるんです。

神保 それは臨場感の違いということでしょうか。楽しみですね。

(「G Jam Blues」のハイレゾ版とCD版を試聴)

神保 ああ本当ですね。24ビットには“食い付き”がある。

西野 非常に生々しいというか、「そこでギターアンプが鳴ってるじゃん!」っていうくらい音に実在感がありますね。今回のハイレゾ配信でこの2作品を聴けるのは、ファンにとってもうれしいことだと思います。オーディオマニアの人たちだけではなく、音楽ファンの方々にもぜひハイレゾ音源にチャレンジして聴いていただきたいですね。

ワンマンオーケストラでなま神保!

西野 さて神保さんは現在ワンマンオーケストラのツアー中でもあるわけですが、新作からの楽曲も演奏されているのでしょうか?

神保 「Crossover The World」なんかも、プログラミングして演奏しています。

西野 では、早くも新作をライブでワンマンオーケストラ・バージョンを聴けるわけですね。それはとても楽しみです。以前ワンマオーケストラを拝見した際に、リハーサルも見学させていただいたことがあります。その際に印象的だったのが、テックの方がスティックを使って慎重に測りながらセッティングしたドラムセットを、神保さんがミリ単位で直すんですよね。「あれ、いまシンバルスタンドをゆるめて戻したけど、どう違うの?」という感じでした(笑)。

神保 ほとんど違わないと言えば、違わないんですけどね(笑)。でも、確かにミリ単位の世界かもしれません。やっぱり、その日の気分というものもありますから、セッティングも微妙に変わっていくんですよね。

西野 もう1つ面白かったのは、お客さんが神保さんを取り囲むセンターステージ形式だったのですが、神保さんの後ろに陣取るお客さんが、エアドラムをたたいていたんですよ。しかも、カシオペアの往年のソロをそのまま演奏する「ミッド・マンハッタン」では、エアドラムが全員一致していて壮観でした。

神保 それはおかしいですね。僕は、後ろが見えないから分からないんですけど(笑)。

西野 まるでダンスステージを見るような感じで、すごかったですよ。そう考えると、「ミッド・マンハッタン」はみんながコピーした曲なんですよね。

神保 でも、コアな人が多いですね。本当にありがたいです。

西野 最後の乱れ打ちまでみんな完走していましたし、足まで一緒でしたから。これは素晴らしいと思いました。それはともかく、今回のツアーでも全国を回られているので、ドラマーの方にはぜひ神保さんのライブを体験してほしいですね。世界ランクのドラマーを近くで見られるチャンスは、そうそう無いですから。

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電子書籍2タイトルの詳細!

西野 2014年初頭は、もう1つ電子書籍という話題があります。『リズム&ドラム・マガジン』に連載されたコラム「天声神保」をまとめたものと、膨大なインタビューをまとめたものの、2タイトルが発売予定だそうですね。

神保 インタビュー集は、『ドラム・マガジン』が創刊された1981年からのインタビューが入っているんですよね。ドラムセットの写真もたくさん載るので、そういう面でも面白いかもしれません。

西野 それは、アーカイブとして非常に興味深いですね。その時々に神保さんが考えていたことが分かるというのは、素晴らしいと思います。しかも、ドラムセットの変遷も追えるというのは、ファンにはたまらないですね。楽しみにしています。

神保 あとは「天声神保」の方ですが、これは67回の連載コラムをまとめたものです。すごいテキストの量で、この間全部読み返したら、3日くらいかかってしまいました(笑)。

西野 「天声神保」特別編が『ドラム・マガジン』の2014年2月号に掲載されていましたが、「我々の人生とは、肉体という乗り物に乗った魂の旅なのです」というくだりにはとても感激しました。僕自身も、そういう考えで日々を暮らしています。ああいった哲学的なことも、コラムには結構書かれているのでしょうか?

神保 それが、結構バカなこともいっぱい書いていまして(笑)。久々に読み返したら、結構おかしかったですね。甘味ネタとか、どこのドーナツがどうだとか、『ドラム・マガジン』と全く関係の無い話も多くて、我ながらよくこんなことを書いていたなって……。でも、こちらもぜひチェックしてください!

(この項終了)

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