第11回:意外な楽器達人たち

超絶スーパーテク大全 by やまもとげんたろう 2013/08/16

プロの楽器奏者は、言うまでもなくその道の達人揃いです。ギターにしろベースにしろドラムにしろ、ひとつの楽器を極め尽くしたからこその素晴らしい演奏、表現が、私達の心を震わせるわけです。ただ一方で、天はその人に何物を与えたのかと嫉妬してしまうほど、複数の楽器に精通しているミュージシャンもいます。今回は、そんなお話です。

 天が二物を与えた達人たち

イギリスの男女デュオ、ユーリズミックスの1985年のヒット曲「ゼア・マスト・ビー・アン・エンジェル(プレイング・ウィズ・マイ・ハート)」ですが、中間のハーモニカ・ソロを演奏しているのは、あのスティーヴィー・ワンダーです。

キーボード弾き語りのシンガーというイメージも強いスティーヴィーですが、デビュー・アルバムでもハーモニカを披露していましたし、音楽シーンを代表するマルチ・インストゥルメンタリストでもあります。何よりすごいのは、何をやっても音楽的だということ。このハーモニカ・ソロも、軽快でかつ歌うようなパフォーマンスとなっています。

 

抜群のハーモニーと数々の名曲で知られる兄妹デュオ、カーペンターズですが、メイン・ボーカリストのカレンは実はドラムの達人。ドラム専門誌『リズム&ドラム・マガジン』でも特集が組まれるほどの腕前で、プロ・ドラマーの中にも崇拝者が数多くいます。動画を観れば、それも納得。

マーチング・バンド仕込みの巧みなスティックさばきは圧巻で、ドラム・セットでのパフォーマンスも「ちょっと8ビートが叩けるよ」なんてレベルではないのがよくわかります。彼女もまた非常に音楽的な演奏者で、途中のパーカッション・ソロなども含め、曲の抑揚や表情を巧みに表現しています。何より、スティックを握っている時の彼女はとても楽しそう。夭逝がなんとも惜しまれます。

 

プレイも達人のプロデューサーたち

とここで、「そういえば……」と思い出したネタをいくつか。普段音楽を聴いていても、なかなか目が向きにくいのが「プロデューサー」の存在です。人気プロデューサー亀田誠治さんなどは東京事変での活動もあり、優れたベーシストであることは知っている人も多いでしょう。ただ、「プロデューサーって、結局何やってる人なの?」っていう人も多いはず。そこで紹介したいのが、まずこの人。

1979年にはバグルスの一員として「ラジオスターの悲劇」をヒットさせ、プロデューサーとなってからは、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、イエスの『90125』、マイク・オールドフィールド『チューブラー・ベルズ2』、t.A.T.uなど、話題作の数々を手がけてきたトレヴァー・ホーンです。
仕掛け人としての側面や、オーケストラル・ヒット(註:オーケストラが一斉に演奏したような♪ジャン!という効果音)の生みの親といったエンジニア的な側面が表に出て来やすい人物ですが、そもそもはセッション・ベーシスト。その片鱗がうかがえるこの動画は、彼が80年代にやっていた前衛的エレクトロニック・ミュージック集団アート・オブ・ノイズの曲で、元々はサンプリングのみで仕上げた曲を生演奏で再現というパフォーマンスです。
近年はプロデューサーズというなんともストレートな名前のバンドを組み、絶品のポップ・ロックを発表していますので、興味のある方はぜひそちらもチェックしてみてください。

 

 

日本を代表するプログレッシヴ・ロック・バンド四人囃子の、76年のアルバム『ゴールデン・ピクニックス』に収録されている「なすのちゃわんやき」です。この曲でベースとリコーダーを演奏しているのは、BOOWYを始め、GLAY、JUDY AND MARY、THE BLUE HEARTS、黒夢などなど数多くの人気バンドのプロデューサーを務めた佐久間正英さん。

佐久間さんと言えば、GLAYのJIROや黒夢の人時などベーシスト養成の名人でもありますが、この動画を観ればそのノウハウにはしっかりした裏付けがあることがわかるはずです。

 

DEAD END、L’Arc〜en〜Ciel、POLYSICS、the telephonesなどなど、こちらも人気バンドを多く手がけるプロデューサー、岡野ハジメさん。動画は、その岡野さんが70年代後半に参加していたプログレッシヴ・フュージョン・バンド、スペース・サーカスの『FUNKY CARAVAN』(78年)収録、「アリババ」です。

岡野さんと言えば、特にベーシストには厳しくも厳しいジャッジをすることで知られていますが、それも納得。テクニックにしろ音色にしろフレージングにしろ、これを聴かされちゃあ何も文句は言えませんね。

 

個人的な嗜好から、思いっきりベースに偏った紹介となりましたが、一方で名プロデューサーにベーシスト出身が多いのも事実。リズムとハーモニーを両方担うベースというパートらしい結果と言えるかもしれません。それにしても皆さん多才だこと。

 

つづく

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