第4回:叩いて叩いて叩きまくれ!

超絶スーパーテク大全 by やまもとげんたろう 2013/04/30

「地味だ」「目立たない」などと言われがちなベースですが、観衆の耳はもちろん目にもインパクト大で、スポットライトを独占するテクニックがあります。それがスラップ。チョッパーなどとも呼ばれるこのテクニックは、親指で弦を叩く“サムピング”と、人差指などで弦を引っ張り上げて指板に叩きつける“プル”という技を組み合わせたものですが、まるで打楽器のようなパーカッシブなサウンドを生み出すことができ、楽曲をリズミカルに盛り上げることができます。

スラップのあれこれ

そもそもスラップは、ラリー・グラハムというベーシストがドラム不在の時にリズムを表現するために編み出したテクニックと言われ、彼が参加したスライ&ザ・ファミリー・ストーンをきっかけに広まりました。

動画は、スライ脱退後に結成した自身のリーダー・バンド、グラハム・セントラル・ステーションの代表曲で、『いかしたファンキー・ラジオ(My Radio Sure Sounds Good to Me)』(1978年)収録の「パウ」。スラップのお手本とも言える、パーカッシブかつインパクト充分なプレイです。

 

そのラリーと並ぶスラップの巨人が、マイケル・ジャクソンのアルバムなどにも参加している人気ベーシスト、ルイス・ジョンソン。特に日本では、グラハムより早い1981年に来日を果たし、その豪快なスラップを実際に披露したこともあり、プロ/アマ問わず多数のベーシストに大きな影響を与えました。

動画は、兄ジョージと結成したザ・ブラザーズ・ジョンソンの「ストンプ!」(『ライト・アップ・ザ・ナイト』収録/1980年)。腕を振り回し、バカスカと叩きまくる様は圧巻です。ちなみに、ラリーがピックのように親指を振り抜くのに対し、ルイスは弦をヒット後に手首が跳ね返るような動きが特徴。この2つのフォームが長い間スラップの基本フォームとされてきました。

 

ところで、どんなテクニックでも、時代を経るごとに進化していきます。スラップも例外ではなく、ラリー&ルイスをきっかけに一般化した後、さまざまなプレイヤーの登場によりハイ・スピード化/複雑化していきました。その筆頭とも言えるのが、イギリスのフュージョン/ポップ・バンド、レベル42のベーシスト、マーク・キングです。論より証拠でまずは動画を観ていただきましょう。

とにかく速い! アホみたいに速い! 音数が多い! ここまで来れば、決して「地味」「目立たない」などという言葉は出てこないでしょう。 もう1人、ラリーやルイスに負けず劣らず大きな影響を与えたスラップ・ベーシストがいます。それは、レッチリことレッド・ホット・チリ・ペッパーズのベーシスト、フリーです。それまでは主にファンクやフュージョンなどで多用されてきたスラップですが、パンク・ロックにファンクの要素なども組み合わせたミクスチャー・ロックでも大きな武器となり、より激しく攻撃的なグルーヴの表現を可能にしました。

 

動画は、1989年発表の4thアルバム『母乳(Mother’s Milk)』に収録の「ストーン・コールド・ブッシュ」。バッキバキです。ロックです。注目なのは、ロックだからベースは低く構える。それだとラリー&ルイス・スタイルはやりにくいから、親指は下向きにして叩く、という潔い発想の転換です。このスタイルはレッチリ&フリー人気もあって瞬く間に広まり、今ではラリー型/ルイス型と並ぶスタンダードとなっています。

 

ベースでも充分目立つことができるスラップ。その魅力の一部でも伝わりましたでしょうか。今では指弾きやピック弾きと並んで基本奏法のひとつに数えられるぐらい定着しており、ベース弾きならぜひともチャレンジしてほしいのですが、いかんせん肉体をフルに活用する体育会系テクニックでもあります。「あんなに速く叩けないよ……」という人は、こんなのはいかがでしょう。

動画はイギリスのプログレッシブ・ロック・バンド、キング・クリムゾンの「スリープレス」(1984年/『スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー』収録)で、ベーシストはトニー・レヴィン。このスラップのポイントは、ディレイというカラオケのエコーと同じ原理のエフェクターを使い、1発叩けば2発の音が鳴るようにしていることです。非常に省エネ! アイディア勝ちです。これなら超絶マシンガン・スラップも夢じゃない!?

 

おまけ

前述した通り、スラップはサムピングとプルを組み合わせてプレイするテクニックで、それぞれの指が異なる弦を担当しやすいため、オクターブの音程が頻繁に出て来ます。ということは、両手を使えるキーボードだとより簡単に、かつベースでは難しい和音なども表現できるのでは!? ということでこの動画。

目をつぶればキーボードだとはわからないかもしれない、見事な演奏です。ただ、キーボードは同音の連打がやりにくいかも。

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書籍
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定価
2,100 円(本体2,000円+税)
仕様
A5判/320ページ/CD2枚付き
発売日
2013.4.25

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