それぞれのオリジナルな”位置” – 渋谷慶一郎、三嶋章義との話(1)

会って話してわかること by 環ROY/写真:太田好治 2014/06/26

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今回は音楽家の渋谷慶一郎さんと美術家の三嶋章義さんを迎えての鼎談です。
本文でも触れていますが、普段から友人として遊んでいる三嶋さんと、以前から友人として交流のあった渋谷さんが、最近、偶然知り合ったとのこと。両者とも交流があった僕は、この機会に3人で話したらなにか面白いことになりそうと思い、改めて集まってもらうことにしました。そして写真は、渋谷さんの提案で全員と交流のある太田さんにお願いすることに。いつものようになにも決めていない雑談、対話の記録です。

文脈、制度との距離感

ROY:ひとまずってことで、今回なんでこの組み合わせになってるかっていう説明からさせてください。三嶋さんとは以前、VJに焦点を当てた「REPUBLIC」ってイベントで一緒になったことがあって、そこから知り合ったんですけど。その後、俺の家と三嶋さんの家がめっちゃ近いってことが解って頻繁に遊ぶようになったんです。よく家に行ってDVDとかNHKとか観たりしてるんですけど。

渋谷:へー。

ROY:で、このまえ、三嶋さんちでいつものように遊んでたら「渋谷慶一郎って知ってる? こないだ大阪で会ったんだけどさ」って話になったんですね。

渋谷:はいはい、会ったよね。

ROY:「知ってますよ」なんて話して。今度みんなで遊びたいねーってことを言ってたんですけど、じゃあこの連載にぶっこんじゃおうと思いつきまして。それが今日このようになったんです。

渋谷:そういうことなんだね。三嶋くんとは大阪で初めて会ったんだよね。ライブとシンポジウムで関西に行ってたんだよね。

三嶋:俺はバンタン(大阪バンタンデザイン研究所)で講義があったから大阪に行ってた。あと、俺がやってるFUGAHAM(フガハム)っていうブランドの展示会もあったんだよね。それのスタッフが、渋谷さんの出演したパーティにも関わってて。どっちも同じ日の夜だったんだよ。そこで初めて出会った。

ROY:前から知ってました?

三嶋:名前はね。けど具体的にはあんまり知らなかった。最初に知ったのは初音ミクの『THE END』だね。

渋谷:じゃ最近だね。

三嶋:うん。

ROY:渋谷さんはなんで知ったの? なんか意外だったよ。

渋谷:共通の友達が何人かいて名前を聞いたことがあったんだよね。服を作ってる人ってイメージなんだけど。

三嶋:服にも携わってるんだけど、それだけじゃなくて、美術とかもやってる。もともと俺、エンライトメントってところにいて、グラフィック・デザインをやってたの。

渋谷:そうなんだ、エンライトメントにいたんだ。それは知らなかった。

ROY:共通の知り合いが何人もいるって距離感だったんですね。俺も三嶋さんに出会ってから、グラフィック・デザインをやってたこと知りました(笑)。

渋谷:そうなんだね。エンライトメントって何人いるの?

三嶋:えっと、俺がいたときは後輩が3人いたから、常時4人ぐらいはいる感じだったかな。今もそんな感じだと思う。

ROY:渋谷さんとしては三嶋さんは服の人って認識だったでしょ? 俺はVJの人として知り合ってるから。いまは美術の人って認識。

渋谷:多芸なのね。

ROY:そう。で現代美術もやってますもんね。

三嶋:東京ではNANZUKAっていうところでやってて。ドイツではNAGEL DRAXLERってギャラリーに所属してる。

渋谷:東京は世間狭いからね。恐ろしいぐらい。1人あいだに挟んで知り合いじゃない人ってなかなかいないから。むしろ僕は音楽での知り合いが一番少ない感じかも。音楽以外の友達が多い。

ROY:畑違いっておもしろいもんね。違うことしてるのに見てるところ結構一緒だったりして。

渋谷:音楽の場合、音楽の趣味がすごく同じか、全く違うかじゃないと話が合わないんだよね。音楽以外でなら問題ないんだけど。

三嶋:自分以外の分野って楽しいよね。

ROY:ですね。俺もラッパーの友達少ないんですよね……増やしたいんですけど。

渋谷:ラッパーの友達いなそうだよね。嫌われてる(笑)?

ROY:ひどい(笑)。嫌われてるさえもないんじゃないかな……。

渋谷:クラブ出たらいきなりギャングみたいな格好した人に金属バットとかで襲われたりとかしないの?

ROY:普通にそんなことないでしょ(笑)。たぶんですけど、「あいつラッパーじゃねえ!」ぐらいに思われてるんじゃないかな。 関係ねえヤツ、みたいな。

渋谷:なんで? なぜそうなったの?

ROY:ヒップホップっていうひとつの文化みたいなものあるじゃないですか。その文化に対する取り組み方がちゃんとしてないっていうか、純度が低いと思われてるんだと思いますよ。

渋谷:ああ、忠誠を誓ってないんだ。

ROY:そういう言い方だとそう(笑)。でも自分的には大好きだし真剣に取り組んでるんですよ。ほんのちょっとスタイルが違うだけなんだと思うけど「関係ないヤツ」って思われてる気がします。

渋谷:なるほどね。それって、三嶋くんもファッションでそう思われてたりした?

三嶋:うーん。そうかもね。アートにしてもそうかも。俺、グラフィック・デザイナーだったからね。日本ってそういう風に解釈される時代があったよね。

渋谷:今もそうだよ。友達が多いからそうじゃなくなってきてるって思うかもしれないけど、世間的にはそうだと思うよ。

ROY:文脈に対する忠誠心とか純度が重視されてるみたいなこと?

渋谷:だってさ、みんな文脈の話しかしないでしょ。インタビューでもさ、『THE END』のときは「なんで初音ミクとやったんですか?」って必ず最初に聞かれる。もう飽き飽きしてくるわけ。パリで記者会見があった時、一番最初の質問がやっぱり「なんで初音ミクでオペラをやろうと思ったんですか?」だったから、「もう日本で100回ぐらい答えたからそれ以外の質問から始めたいんだけど」って言ったらみんな爆笑してた(笑)。日本は初音ミクがいて、渋谷ってのがいて、オペラがあって、みたいな区分けで始まるんだよね。それはすごい退屈で表層的だと思うけど。

三嶋:それだけ初音ミクが強いってこと?

渋谷:パリの場合はオペラと結びつけたっていうのがポイントだったと思う。向こうはオペラのことはよく知ってるから、その古い器に新しいものを入れたっていうインパクトがデカかったみたい。オペラに違うものを入れるっていうのは、向こうの人はあまり想像しないから。

ROY:それが初音ミクだろうが、別の媒介だろうが、どうしてそれをオペラにくっつけたんだ? っていうのが気になるポイントだと。

渋谷:そうそう。

ROY:そっかそっか。でも、ファッションもそういうのあるのか……。俺考えたことなかったです。三嶋さんのファッションでの立場。

三嶋:ファッションもアートも、それこそ映像もやってるからね。

ROY:三嶋さんは、テイ(トウワ)さん、大沢(伸一)さんとかのVJをしてたりもしてたんですよね?

渋谷:どのくらいやってるの?

三嶋:エンライトメントのときからやってたから、10年ぐらいはやってるかな。

渋谷:今もやってるの?

三嶋:うーん、だいぶ減ったけどやってる。

渋谷:クラブか。まさに僕はクラブでライブするの好きだけど、忠誠は誓ってないな。

ROY:「クラブカルチャー」って文脈がしっかりありますもんね。

渋谷:でしょう。しかしさ、何かしら特定のジャンルに忠誠を誓うっていうのは弱者だからね。

ROY:(笑)。えー! 急ですね、もっと迂回しながら言ってくださいよ。

渋谷:そろそろ流れ的に大きい字が欲しいじゃん。昔の北方謙三みたいにさ。「弱者だから!」みたいな(笑)。

ROY:急すぎる。

渋谷:胸が痛くなる感じでしょ(笑)。ちょっと嫌な、ジャリッとした感情だけが残るのがそろそろ必要かなと思って。

ROY:なんか迂回してそれっぽく言ってくださいよ。

渋谷:じゃあ……「かわいそうな人たち」。

ROY:全然迂回しませんね……(笑)。でも単純に一つのコミュニティにずっと居続けると飽きてきちゃうっていうのはありますね。あと、年齢を重ねたり、仕事として向き合っていくといい面だけじゃなくて悪い面も見えてきたりもするから。

渋谷:そうだね。例えば若いDJとか1万とか2万で出演してるわけじゃん。それは可哀想だなと思うわけ。そのペースでやってたらはっきり言ってプロにはなれない。でもやらないとDJじゃなくなっちゃう。そういうことってよくあるんだよね。クラシックの世界とかもっと激しくて、僕は芸大行ってたけど、オーケストラの曲作るのに楽譜を1年ぐらいかけて書いて、コンサートするとなるとそのチケットを買い取って200枚とか売らなくちゃいけないわけ。現代音楽の作曲家になるには。

ROY:それは……めちゃ大変。

渋谷:で、売れなかったら補填するの、自分で。そんなことはやってらんないでしょ。それが現代音楽の作家にならなかった最初の理由だな(笑)。

ROY:それで思い出したけど、国立系の劇場でバレエを観てきたんです。外国の100年くらい前の文学作品をやってて。で、カーテンコールで100人ぐらいの出演者が出てきて、オーケストラ・ピットも合わせてたぶん総勢150人ぐらい出演してた。観客は1,500人位らしいんですけど、お客さんが全員関係者っぽいんです。スラーっとした女の子とその親とか、出てる子の教室の仲間、バレエの先生とかなんでしょうね。なんというか、そういう、制度化したカルチャーみたいなものを体験したんですよ。それが自分には凄く新鮮に見えた。

渋谷:例えば伝統芸能はある意味では国に守られてるじゃない。それはいいのよ。とやかく言う人はいるだろうけど。それは本当に守られてるんだから好きにやればいいと思う。でもアンダーグラウンドにいて、そういう制度から自由にやろうぜって言ってたはずがさ、同じようなことやってちゃだめだよ。それは人間の弱さだと思うよ。

ROY:また……(笑)。でもたしかに、「制度の中でやる」と「自由にやろうぜ」っていう、出発点の違いについて考えていくと色々見えてきそうって思いました。

EDMは、てらいがないことが現在っぽい

ROY:三嶋さんもいることだし映像と音楽の話でもしてみますか。

渋谷:今クラブでも映像がある方が普通になっちゃってるよね。VJいる方が落ち着いてるっていうか。

三嶋:そうだね。そうなってくると照明をどう効果的に使うかとか、盛り上がるタイミングとかグルーヴを映像でどうお客に伝えて行くかとか、そういうことをもっかい考え直さないといけないってなってくるよね。

ROY: VJがいる環境っていうといまはEDMですかね。音圧をドンドン詰め込んで、さらに映像で視覚にも全部詰め込んじゃえーっていう。引き算というか要素を減らしていくみたいな取り組みってしないのかな?

渋谷:でも引くなら照明だけでいいって話で。

三嶋:そうそう。VJいらねーってなっちゃう。

ROY:そっか。

渋谷:僕ははATAK Dance HallでやるときはVJじゃなくてストロボでやってるのね。手動でやってるんだけど、点滅を早めてフリッカーみたいにするとコンピューターでシンクしてるように見えるんだよね。でスモークもモクモクに炊いてもらって。

ROY:なるほど。

渋谷:EDMの話で思い出したんだけどさ。マニアックラブっていうクラブがあってさ、10年以上前にレギュラーで出てたんだよね。で、そのクラブは今はもうないんだけど、20周年記念パーティをやるってことになってDJで誘われたの。で、当時出てたっていうのもあるし、DJ面白そうだなってやったわけ。そうしたら、そこに来てる人は往年のマニアックラブのファンでさ、要するに90年代のテクノが聴きたいわけ。で、僕がテクノにEDMとか混ぜてたらTwitterでディスられて(笑)、「ありえない」とか言われてさ。でも今って90年代のテクノとEDM混ぜるのって普通のことでしょ。このテクノに対する信仰心ってすごいなと思ったね。保守性そのものでしょ。イベント自体も他のDJもよかったし楽しかったけど、客の90年代テクノ最高! みたいな保守性はほんとすごいと思った。

三嶋:往年のファンがちゃんといるんだね。

渋谷:EDMとかもそうなのかな? EDMはそういう信仰がない人たちが大量に集まってできてるのがいいなという気がするんだけど。

ROY:なるほど。

渋谷:今あるダンス・ミュージックの要素が全部あるよね。それも先々信仰心の集まりになるのかね? EDMは思想がない。それがいいなと思うんだよね。思想がなければ信仰する人を生まないんじゃないかって希望を僕は持ってるんだけど。

三嶋:まっすぐだよね。

ROY:信仰心がなくても好きになってくれる人が集まってるようなイメージなんですけど。全部あけすけでフラットっていうか。インターネット時代の音楽っていうか。

三嶋:だからいまあるダンス・ミュージックの要素が全部入ってるみたいなことが起きると。

ROY:ある種の信仰心が必要な音楽が、生き残れなくなってきてるって言い方もできるんじゃないですか? 経済の話になっちゃいますけど。

三嶋:全部の流れがそうなってるんじゃないの? クラブだけ、音楽だけ、じゃなくて。

渋谷:そうだね。EDMでよくあるのはデジタルのビートが入る前はギターのカッティングで始まって、つまりちょっとジャック・ジョンソンみたいですらあって (笑)、パーカッションが入ってきて、でもベースが入ってきて、ビートって全部のせみたいな感じのあるじゃない。なんのてらいもなく。

三嶋:そうだね(笑)。

渋谷:そのてらいがないところは好き。てらいありすぎると思うんだ、ほかのジャンルが強固にある音楽は。

ROY:はいはい。

渋谷:あとEDMは極端に言うとドラムがなくても音楽としては成立するよね。ベースあれば。それはヨーロッパっぽいよね。ブライアン・イーノとデイビッド・バーンの『My Life in the Bush of Ghosts』みたいなアフリカ音楽をもろに応用した傑作があったでしょ。僕は昔、すごい影響受けたけど、同時にあれはヨーロッパ人の罪滅ぼしのようだなとも思ったのね、当時。でも今は逆だよね。ヨーロッパの人のアイデンティティが立ち戻って、「別にことさらアフリカとか持ち上げる必要ないんじゃないの?」みたいな感 じがEDMで(笑)。僕はそういう暴力的な感じは好きだけどね。いい悪いではなくて。

ROY:たしかに。暴力的な印象あるしね。

渋谷:だってそれは絶対にあるから。アフリカに対するリスペクトがあって、アフリカ音楽を再発見しようっていうのは本質的であると同時にヨーロッパの上から目線もあったと思う。でも、そういう時期は完全に過ぎたなってEDMを聴いて思ったんだよね。

 

三嶋章義個展 「節穴」

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環ROY

環ROY

ラッパー。宮城県出身。主に音楽作品の制作とパフォーマンスを行う。これまでに最新作『ラッキー』を含む4枚のフルアルバムを発表。第17回文化庁メディア芸術祭推薦作品『ワンダフル』(MV)を発表。国内外の様々な大型音楽イベントへ出演。



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