スーパースターでなくていい、正直にやる – Buffalo Daughter 大野由美子、山本ムーグとの話(2)

会って話してわかること by 環ROY 2014/02/04

140128-roy-6

前回に引き続きBuffalo Daughterから大野由美子さんと山本ムーグさんをお迎えしての対話。お2人が持つヒップホップやラッパーに対する素朴な印象や、表現をするってことへの根源的な考え方のお話などなど。そして僕の話を聞いてくれる大人なお2人の対応の様子です。

様式のない中から自分の様式を作ってるから、おもしろい

山本:環くんはもともと黒人のラップにあこがれたんでしょ?そっからだんだん、自分は日本人だし日本の音楽で育ってるから、それをやるのがいいんじゃないかって思ったっていうの、それすごい、いいと思う。

ROY:(笑)。さっき(前回)のKAKATOの話ですね。

山本:友達でセレクトショップやっている子が居て、ちょこちょこオリジナルの商品も出してるんだけど、今年すごいキャップとか流行ったじゃない。見るとたいてい「NY」とか書いてあるじゃない。なんで東京に居るのにって思うからさ。

ROY:そうですねぇ。そういうのちょっと突っ込んで考えると不思議ですよね。あ、俺最近、楽天イーグルスのニューエラ買いましたよ。

山本:その友達は東京都のマークでキャップ作ってるの(笑)。

ROY:それいいなー。欲しい。仙台市のマークとか作りたいですね。でもみんな「NY」がいいんじゃないですか?なんかNYいいな、外国いいなって思ってるんじゃないですかね。

山本:でも今って「外国好きですパワー」って落ちてない?

ROY:2人の青春時代よりは圧倒的に落ちてるけど、まだあるんじゃないですかね。

大野:今みんな東京が好きとかなってるの?

ROY:そんなこともないと思いますけど、俺も若くないですからね。どうなんでしょうね?

大野:私、そういえば最初日本語のラップが出てきたときに、英語っぽいしゃべり方でラップしてるのが自分としては受け付けられなかった(笑)。だから環くんがやってるのは素直な日本語だし聴きやすい、スッと入ってくるからいいと思うよ。

ROY:なるほどですね。いまの若い子でも英語みたいな日本語発音する人けっこういますよ。その捻じれた状態が進化して、どんどん洗練すらされてきてます。

大野:いくつぐらいの人がするの?

ROY:28歳から下ぐらいって印象ですかね。日本語って音節がはっきりしてるから、ラップみたいにリズムが求められるグルーブが主の音楽だとどうしても野暮ったくなっちゃうと思うんですね。だからそういう方向に行くのかなぁと。

大野:みんないろいろ表現のしかたあるもんね。

山本:あと環くんについて思ったのは、ラップのほうを先に聴いてて、その後普通に話したけど、普段のちょっとひねくれた感じと、ラップの感じがほぼ一緒。それがいいなあって思った。ラップだから自分をより大きく見せるとかさ、ありがちな感じとは違うなって。

ROY:ありがとうございます(笑)。昨今はそのまんまな人、けっこう多いんですよ。

山本:でもフリースタイルのバトルとか観ると、「俺は強い」みたいな人いるじゃん。

ROY:バトルとか観るんですね(笑)。そういう人は様式に則らなきゃいけないっていう圧力を感じちゃってるんでしょうね。どの音楽ジャンルでもいえることなんでしょうけど、勝手にこうしなきゃだめだって決めつけちゃう現象(笑)。

山本:環くんは様式がない中から自分の様式を作ってるから、おもしろいよね。斜めから来る感じ。

ROY:斜めからいってますか?そういうの言ってくださいよ。適当にしゃべってください。

山本:質問してくれればしゃべるよ。

ROY:質問って……。

山本:それが斜めから来てるんだよ!「質問って……」てさ(笑)! インタビューなのに! でもその感じがすごい(笑)。

ROY:でもインタビューって必ず一方が質問するみたいな感じじゃないですか。この連載に関してはそうじゃないほうがおもしろいんじゃないかなって。世間話とかできたらいいなぁ、みたいな。そこから人柄見えてきたりする気がするんですよ。真面目に作品のことだけを喋ってるインタビューとか読みます?

大野:バーっと斜め読みして、気になった部分だけじっくり読むかも。

ROY:そういえば(笑)、ヤン富田さんとか、脳波がどうとかって言われたら気になって読んじゃいますもんね。

大野:話してみたら?ヤンさんと。おもしろいと思うよ。

ROY:周りの人もみんなヤンさんラブなんですよ。せいこうさんとか三浦康嗣とか、蓮沼執太とか。

大野:だってオリジナルだもん。

ROY:それで気になってあの人のインタビュー探したけど、インターネット上にはないんですよねー。

大野:雑誌だと、リラックスでも特集してましたよ。

(※編注:サウンド&レコーディング・マガジン 2006年7月号でも表紙・インタビューを掲載)

ROY:読みたいなー。よくわからないことしてる人のは読みたくなっちゃいます。知りたくなる。

大野:話してみたらおもしろいと思うよ。けど礼儀を知らないとうるさいからね。いつも私は怒られてます。

ROY:ええ。俺とか無理なんじゃないですか。斜めから行くヤツだめですよね?

山本:ヤンさんすごい真面目な人で、斜め感ないんだよね。やってることは実験的なことなんだけど、取り組み方がすごい正攻法で、僕は個人的にはバッファロー始めるときにだいぶ斜めな気持ちだったから、ヤンさんにできないようなことをやろうと思ってた。もちろんヤンさんの影響大きかったし尊敬してたんだけど、完全に尊敬して影響されると、同じことやっちゃってつまんなくなるから。ちょっとヤンさんに怒られるようなことしてみようってやって、実際にそこに存在価値があったかなって気がするよ。

正直にやったほうがいいという感覚は大事にしたい

山本:環くんって、なんとなく閉塞感とかがあるじゃん。なんだろう、人生とか社会とかそういう大きいものじゃなくって、「なんなんだろうこの感じ、はっきりしないな」っていうのをあまり大きくしないでそのままの形でパっと言っちゃう。するとそのときならではのニュアンスってあるじゃん? そこがみんなの共感を得るっていうか、「これはこうなる」ってはっきり言うんじゃなくて、「ここがなんか、うざい」ってそのまま言うっていう感じ。

大野:そうそう。

ROY:なんなんだろう、なんだかが俺にはわからないです(笑)。でも2人にはわかるフィーリングなんですね。

山本:だからラップっていうのを分析していくと、英語っぽく日本語をしゃべるとかさ、そういう流行ってたぶんあると思うんだけど、それは置いといて、別の次元でただ日々感じてることをそのまま言っちゃうっていうのが環くんのいいところだと思う。それは90年代の言葉じゃないしさ。

ROY:表現とか創作ってそういうものじゃないですか?って思うんですけど。そうじゃない人を相対化して言ってます?

山本:そうじゃない人っていうのをあえて想定してるわけじゃないけど……。ニュアンスが現在っぽいって感じるとおもしろいなって思えるよね。

ROY:正直感あるって感じですかね?さっきも「大きく見せる感じがない」って言ってたし。正直っていいっすよねー。

大野:でもさ、最終的には持ってるものしか出せないよね。大きく見せるとか、そういうことをしたとしてもさ、似合わないっていうのかな。

ROY:そうですねぇ。その感覚は年々強くなりますよね。正直にやったほうがいいんだなって感覚は結構大事にしたいですね。若い頃は、努力すると自分がどんどん階段を上って、拡張されるような気がしてたけど、持ってるものを正直に出すのが一番よくてそれこそが難しいことだなーって思いますね。

山本:バッファロー始めたときに、オルタナティブっていう流れがあってさ、グランジとかローファイとか結構ぶっこわれたものが出てきたのね。で、彼らが、「スーパースターとか馬鹿らしいじゃん」って言ってたの。普段着でやってて、そのほうが本質的だって。そこに共感したんだよね。逆に僕らよりさらに上の世代はスーパースター志向っていうのがあって、なりたい人とそれにあこがれる人みたいな、そういう傾向はあると思うんだよね。

ROY:教祖と信者みたいな。

山本:そうそう。そこを1回なくしたいっていうのがあって、バッファローはそういうスタンスでやってて、「ぜんぜんスーパースターとか興味ない」って。もちろん活動の場が広がることは嬉しいんだけどね。

ROY:あー、バッファローのサウンドって、信仰することを一切求めてないですよね(笑)。抜けが超よくて、開かれてる。囲ってこない。ドライ。ウェットさがほとんどない。そこがすごい好きなんですよ。

山本:だいぶ時代がたって、景気も悪くなってきて、過酷になってきたじゃない。いい気になる若者、すくなくなったよね(笑)。

大野:過酷ですよほんとに。

ROY:たしかに過酷なんですけど、俺は経験してない時代を2人は経験してて、より体感が強いんでしょうね。

山本:だから今のミュージシャンってスーパースターになりたいって思う人はほぼ居ないと思うんだよね。下手したら「僕なんかダメですよ」みたいになっちゃう人も多いと思う。環くんの場合は、内向的なのか社交的なのか、上から来るのか下から来るのか、わからないんだよ(笑)それがすごいおもしろさになってるんだよ。

ROY:(笑)。ありがとうございます。KAKATOなんて特にそうかもしれないですね。

山本:うん。よろしくお願いしますって感じでもないし、どうよ俺!って感じでもないし。

大野:でもちょっとだけ“よろしくお願いします”って恐縮してたけどね。受験生みたいだったし。

リアリティのある怒りみたいなものが垣間見えると刺激になる

山本:KAKATOのアルバムがダウンロードできるTumblrって動画になってるじゃない?あそこで2人がどんな話をしてるのかとかを観てみたいよね。だらだらしゃべってるのを聴きたい。2人とも言うことおもしろいんだよ。瞬間的にひねってくる感じとか、きっとヒップホップで培ってきてるんだと思うんだけど。で2人でひねりあいしながらしゃべってて。それが観たい。

ROY:あー、そういうのと近いかもしれないんですけどやりたいと思ってることがあって。音楽ライブと舞台作品、どっちかあいまいなのとかおもしろそうだなとか。なんかそれに繋がりそう。ラップって音楽にもなるしセリフにもなるし、とか色々考えてるんですよね。

山本:昔だとラジオDJとかがそういう感じでおもしろかったんだと思うけど、今ってネット上でそういう放送してる人いっぱいいるじゃん。ただちょっと覗いても、あんまりおもしろくないの。環くんはそのあたりはスキルあるんだから、それすごい、可能性あるよ。喋りってリズム・トラックのないラップみたいなことだから。観るもん。それやってたら。

大野:レコードのループ、生演奏、自分のトラック、とかいろんな見せ方できるんじゃない?

山本:鎮座くんがシーケンサーいじりながらやってるの観たんだけど、うしろで料理してるやつ。それすっごいおもしろかったよ。

ROY:ああいうのは無限に作れるんですよね。やってないだけで。そういうの作ろうかな。

大野:あんまり気負わないでいろいろやれば?

ROY:作詞してる会話をずっと録っておいたりとか。

山本:そういうの楽器だとやりにくいもんね。

ROY:だらだらしゃべってるのラクですもんね。なんか俺の話になっちゃいましたねぇ。

大野:こないだのWWW(KAKATOのリリースパーティー)見に行って、お客さんの層見てすごいおもしろかったんだ。普通にキャップかぶったヒップホップな子も女の子も居て、すでに曲を知ってて乗ってる感じがあったんだけど、PA卓の前の列には会社帰りのお1人様がダーっと並んでるの。ネクタイ締めてる人もいたよ。黒いカバン下に置いて。ライブは何組か出てたでしょ? どのアーティストが出ても楽しんで見てて、転換の時間はドリンク飲むわけでもなくずっとスマホ見てて、で次のアーティストが始まるとまた乗ってて。なんか、楽しみにして来てるんだなぁって思った。じんわりして見ちゃったよ。

ROY:えー。それ、いいですねぇ。お客さんに幅があるってことですよね。嬉しいなあ。いいこと聞いたなあ。

山本:環くんの音楽聴く人って、ヒップホップに限らないじゃない。

ROY:ですね。今はそうですね。

山本:だからいわゆるラップじゃない感じ、言ってることのニュアンスが「そうなんだよなぁ」ってなる。共感だよね。

ROY:なんでさっきから俺のこと言ってくれるんすか。

大野:いちファンの意見ですよ。

山本:それもさ、今の音楽って応援したり慰めたりするんだけどさ、環くんの音楽はちょっと怒ってるのよやっぱり。それがチラチラ見えるのが、俺は燃えるのよ。「そうだよなぁ」って。

ROY:なんかくすぐったいんですけど。山本さん優しいなー(笑)。

山本:「New Rock」のラップバージョンもそうだよね。ダラダラダラってやってるんだけ
ど、ふいにメラッってする。

大野:皮肉めいたことを言ってみたりするね。そういうのがおもしろいから好きだよ。

山本:日本の音楽って、優しすぎたり真面目すぎたりするから、つまんないんだよ。それこそ見た目すごいパンクなのに、言ってる内容が道徳の教科書みたいじゃん。がんばればみんな救われる、とかさ。救われないよ(笑)。

大野:過酷だよーって(笑)。

山本:それよりもリアリティのある怒りみたいなものが垣間見えたほうが、刺激になる。

大野:納得するよね。

ROY:なんかそういうふうに素直にやってるんですけどぜんぜん売れないんですよねー。

大野:そういうものなんですよ(笑)。

山本:基本は売れないんだから。でもマーケットを作ってる感じはあるんじゃないの?

ROY:そういう気持ちはあるっす、場を作れたらいいなとは思ってますね。俺、いろんなタイプの人と一緒に制作するんですけど、俺つながりで、その色んなタイプの人達のファンもつながっていったらいいのになとか思うんですよね。なかなかそんな簡単にいかないけど。なんか俺の話になっちゃいましたねぇ。

―ロイさんの相談に乗るお2人というシチュエーション、おもしろいですよ(笑)。

ROY:とりあえず、俺の音楽を聴いてくれる人に対して、自分が信じることを伝えたいっていうのが俺のステートメントです。どうすか山本さん。

山本:超真面目だね。言ったね、ついに(笑)。

ROY:結局俺の話になっちゃった。

大野:いいんじゃないの?

ROY:すみません。

環ROY

環ROY

ラッパー。宮城県出身。主に音楽作品の制作とパフォーマンスを行う。これまでに最新作『ラッキー』を含む4枚のフルアルバムを発表。第17回文化庁メディア芸術祭推薦作品『ワンダフル』(MV)を発表。国内外の様々な大型音楽イベントへ出演。



TUNECORE JAPAN