第11回:最近よく聞く「クリエイティブ・コモンズ」。使うとどんなことができるの?

音楽著作権ベーシック講座 by カズワタベ/水野祐 イラスト:とくながあきこ 2013/09/26

「クリエイティブ・コモンズ」って聞いたこと、見たことはありますか? 音楽に限らずさまざまな作品にマークが付けられていて、クリエイターさんが「こういう条件を守ってくれれば、自分の作品を自由に使っていいよ」と意思表示するためのツールです。音楽著作権ベーシック講座、第11回はそんな著作権の新しい仕組みのお話です。

カズワタベ
今回、ご相談にいらっしゃったのはトラック・メイカーとして活動しているFさんです。

Fさん
こんにちは。曲を作るときに素材を探していたら、同じくトラック・メイカーをやっている友だちに「クリエイティブ・コモンズの素材は何かと便利だよ」と言われました。確かに最近よく目にするんですが、主に付いているのが海外の配信サイトだったり、マークが何種類かあったりしてどういう風に使ったりするんでしょうか?

カズワタベ
クリエイティブ・コモンズについてのご相談ですね! ではまずクリエイティブ・コモンズがいったい何なのか、水野さんにざっくり解説してもらいましょうか。

水野
はい。クリエイティブ・コモンズは、クリエイターが自分の作品を一定の条件にしたがえば自由に使っていいよと意思表示できる仕組みです。クリエイティブ・コモンズの頭文字をとって、「CC」とか「CCライセンス」などと略されることもあります。
たとえば、ミュージシャンが自分の楽曲について「非営利目的であれば、自由にコピーしたり、アップロードしたりして利用してほしい」と考えたとします。この場合、クリエイティブ・コモンズのマークをつけることにより、一定の条件さえ守れば、利用者は自由に作品を利用できるということになります。

Fさん
もしクリエイティブ・コモンズが付いていない場合はどうなるんですか?

水野
クリエイティブ・コモンズを付けない場合には、法律上、その楽曲のコピーやリミックス、アップロードなどの利用を無断で行ってしまうと、原則として著作権侵害になってしまいます
でも、インターネットにアップロードする以上、「自由に自分の楽曲を使ってもOK」というクリエイターもいますよね。クリエイティブ・コモンズは、そんなクリエイターに対し、利用条件を明確にするためのツールを提供しているんです。
これによって、クリエイターはいちいち許諾の手続で連絡を取り合ったりするコストをかけずに自分の作品を第三者に利用してもらうことが可能になりますし、利用者も自由に使える作品が増え、既存の作品を利用して新しい作品を生み出す循環が生まれることになります。

カズワタベ
日本だと著作権の保護期間は通常著作者の死後50年ですから、クリエイターが仮にあと50年生きるとしたら……自由にリミックス等に使えるようになるまで100年かかりますね!

Fさん
100年ですか……..。僕たちはクラブ・ミュージックを作っているので、リミックスやサンプリングするのが当たり前なんですよ。そうすると自分の曲もどんどん使ってほしいと思うんですが、それが普通だと100年後でないといけないんですね……。

カズワタベ
そうなんです。100年後じゃなくて、今使っていいという意思を表現するためのツールがクリエイティブ・コモンズです。確かマークが何種類かあるんですよね?

水野
はい、「表示(BY)」、「非営利(NC)」、「改変禁止(ND)」、「継承(SA)」という4つの条件の組み合わせで、6つのライセンスとそれを示すマークが用意されています。クリエイターは、自分の作品をどの条件で使ってもらいたいか考え、それに合ったマークを選択すればよいことになります。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)の種類

CCラインセンスのマークとその下の「表示」~「継承」を組み合わせることで意思表示を行う。

130924-cc-1 CCライセンスのマーク
130924-cc-2表示(BY) 作品のクレジットを表示すること
130924-cc-4非営利(NC) 営利目的での利用をしないこと
130924-cc-3改変禁止(ND) 元の作品を改変しないこと
130924-cc-5継承(SA) 元の作品と同じ組み合わせのCCライセンスで公開すること

基本的な組み合わせ(6種類)

130924-cc-by 130924-cc-by-nd 130924-cc-by-nc-nd 130924-cc-by-sr 130924-cc-by-nc 130924-cc-by-nc-sa

―クリエイティブ・コモンズ・ジャパン「クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは」より引用

カズワタベ
4つのマークの組み合わせで、6段階の条件が設定できるんですね。「商用利用はしてほしくない」「アレンジはせずそのまま使ってほしい」など、いろんなニーズに対応ができそうです。

Fさん
この中の「継承(SA)」っていうのはどういう場合に付けると良いんですか?

水野
これはよくいただく質問ですね。「継承(SA)」は、リミックスなど改変して利用する場合には、元の作品につけられたクリエイティブ・コモンズと同じクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを自分の作品にもつけて公開しなければならない、という条件です。
「継承(SA)」というマークがなぜあるかを考えてみるとわかりやすいんですが、これをつけることによって、自由度の高い作品を世の中に増やしていこうという考えがあります。ソフトウェアの世界にも、GPLライセンスというオープンソースのためのライセンスがありますが、GPLライセンスがついたソースコードを利用する場合には、自分のコードにもGPLライセンスが適用されるという仕組みと似ています。もともと、クリエイティブ・コモンズは、こういうソフトウェアのオープンソース・ライセンスに着想を得て、生まれたものです。
※GPLライセンスの解説(GNU):http://www.gnu.org/licenses/quick-guide-gplv3.html

カズワタベ
簡単に説明するなら「自分も自由に使えるように公開するし、これを使った人もぜひそうしてね!」と言った感じでしょうか。ライセンスを作った人たちの思想が感じられますね。
ところでクリエイティブ・コモンズが生み出されて10年以上が経ちますが、現在では誰もが知っているところでも活用が進んでいると聞きます。いくつか例を挙げていただけますか?

水野
はい。写真であればFlickr、映像であればYouTubeVimeoなどのプラットフォームがクリエイティブ・コモンズを採用しています。また、音楽であれば、海外ではNine Inch Nailsがアルバム全曲にクリエイティブ・コモンズをつけて話題になったり、日本では坂本龍一さんやコーネリアスが早くから採用してきました。最近では、ミュージシャンにも人気の高いSoundCloudが、楽曲をアップロードする際に「All Rights Reserved」かクリエイティブ・コモンズ・ライセンスかを選択できるような仕組みを取っています。昨今人気のあるMaltine Record分解系レコードなどのネットレーベルの楽曲にも、クリエイティブ・コモンズが活用されていますね。

カズワタベ
各種ウェブサービスで、アップロード時に選べるようになっているんですね。
今調べてみたら、特に欧米では行政や教育分野での活用も進んでるそうで、ホワイトハウスやスタンフォード大学でも様々なコンテンツをクリエイティブ・コモンズで公開してますね。日本ではこちらの方面では何か動きがあるんでしょうか?

水野
そうですね。日本でも、「オープン・ガバメント」や「オープン・エデュケーショナル・リソース(OER)」などというムーブメントの流れで、総務省や経産省などの省庁や地方公共団体、大学等の教育機関が試験的に取り入れているケースがあります。個人的に関わったケースとしては、東京藝術大学の建築科がクリエイティブ・コモンズを採用しています。
オープン・ガバメントの流れは、最近ではWIREDも大きく特集するなど注目を集めていますね。

カズワタベ
オープン・ガバメントの動きは日本でもこれから活発になっていきそうですし、クリエイティブ・コモンズの活用事例もどんどん増えていきそうですね。
では具体的に、自分の作品にクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを付けようと思ったらどうしたら良いのでしょうか?

水野
インターネット上であれば、クリエイティブ・コモンズのホームページに行って、マークをダウンロードしてウェブサイトにマークを表示したうえで、タグを埋め込めばOKです。下記のページで指示にしたがって選択していけば、自分の条件に合ったクリエイティブ・コモンズをつけることができます。
CD等のパッケージにつけたい場合には、同じくマークをダウンロードしてきてつけて、ライセンスのURLを表示すればOKです。
※埋め込みタグ作成ページ:http://creativecommons.org/choose/

Fさん
思ってたより簡単ですね!

カズワタベ
これは自分のウェブサイトなどで公開するときのやり方ですが、先ほど紹介したYouTubeやSoundCloudにアップロードする場合でしたら、ライセンスを選択する項目があるので、そこで選ぶだけですね。ほとんど手間がないのでおすすめです。
クリエイティブ・コモンズについてはひと通り説明したかと思うのですが、Fさん何かまだわからない点等ありますか?

Fさん
そうですね、素材に使おうと思った作品に「表示(BY)」が付いていたときに、どのようにクレジットを書けば良いのかがちょっとわかりません。

水野
Fさんの作品に、素材に使った作品のクリエイター名、作品名などをクレジットする必要があります。「合理的な方式で」記載すればよいので、利用者の目に入りやすい場所にクレジットされていれば大丈夫です
その他にも、クリエイティブ・コモンズのホームページによくある質問についてのFAQが用意されているので、興味がある方は見てみてください。
※クリエイティブ・コモンズのFAQ:http://creativecommons.jp/faq/

Fさん
そんなに難しいことはないんですね。自分の曲にもクリエイティブ・コモンズを付けてみようと思います!

カズワタベ
そういえば、Fさんは自分の楽曲をJASRAC等の著作権管理団体に登録していますか? JASRAC等の著作権管理団体に登録している楽曲について、クリエイティブ・コモンズはつけられるんでしょうか?

Fさん
これまではしていなかったんですが、今度リリースするアルバムはレーベルからJASRACに登録することを検討していると言われています。

水野
現状では、JASRAC等の著作権管理団体に信託している楽曲については、クリエイティブ・コモンズはつけられないと考えられています。クリエイティブ・コモンズをつける権利についても、著作権管理団体に対し管理を委託してしまっているからです。
以前、JASRACに楽曲の管理を委託しているミュージシャンから、「自分の楽曲にクリエイティブ・コモンズをつけたいんだけど」という相談を受けたことがありますが、現状ではできない、という回答をしたことがあります。なぜかというと、ミュージシャンが、JASRACに楽曲の管理を委託する場合、過去の楽曲も含め、そのミュージシャンの楽曲すべての管理を委託することになるからです。
なので、クリエイティブ・コモンズを使いたいミュージシャンはJASRACではなく、別の楽曲ごとに管理を委託するか否か選択できる著作権管理団体に管理を委託するか、自分で楽曲の管理を行っていくしかありません。
将来的には、アメリカやイギリスの一部の著作権管理団体のように、楽曲の管理を委託しつつも、クリエイティブ・コモンズをつけることも選択できる仕組みが日本でも整うといいなと思います。

Fさん
なるほど……。レーベルとそのあたりもよく話し合ってみます。

カズワタベ
音楽の楽しみ方も様々な形が出てきているので、ミュージシャンにとっては選択肢が増えることが大事ですね。では、本日の相談はここまでということで。

水野
さて、ぼくも事務所に戻るとしますか。こないだの初来日公演もすばらしかったAntonio Loureiroの新作『SO』でも聴きながら仕事します……。

カズワタベ
たすくさん、ちゃんと仕事しているんですね! 安心しました(笑)

水野
えっ!

自分の作品を利用してもらうことで
人の目に触れる場も増えるというメリットも

クリエイターが自分の作品をどう利用して欲しいのか、通常であれば法律によって決められている通りになりますが、クリエイティブ・コモンズはここに本人の意思を反映させることができるツールと言えるのかもしれません。自分の作品に付けることで、人々に触れてもらう機会が増える効果も期待できますね。どんどん活用していきましょう!

 

カズワタベ

カズワタベ

大福が好きすぎる。1986年4月長野県松本市生まれ。洗足学園音楽大学在学中よりライブハウス店長、クラブジャズバンドのリーダー/ギタリスト、ウェブサービス運営会社の取締役を歴任し、現在はフリーランスとして「考える・つくる・広める」を事業領域に様々なプロジェクトで暗躍中。並行して、神戸ITフェスティバル、YOAKE、CCサロン等の著作権、コンテンツ・ビジネス関連のイベントで登壇するなど、クリエイターの権利保護、創作文化振興に関わる活動を積極的に行なっている。



水野祐(みずの たすく)

水野祐Photo by Kenshu Shintsubo

弁護士。シティライツ法律事務所代表。アーティスト・クリエイター等を支援する法律家によるNPO “Arts and Law”代表理事。"Creative Commons Japan"、"Fab Commons (FabLab Japan)"、"LiFTONES"などにも所属。NPO法人ドリフターズ・インターナショナル監事。一般社団法人マザー・アーキテクチャア監事。

主にクリエイティブ・IT ・建築不動産分野の法律・契約等のアドバイス・コンサルティング業務に従事しつつ、多様な課外活動を通して、カルチャーの新しいプラットフォームを模索する活動を行っている。



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