第8回:大学の学園祭で楽曲をBGMとして使ったり、バンドでカバーしたりしたい。このとき許諾って必要? 必要ならどこに申請したらいいの?

音楽著作権ベーシック講座 by カズワタベ/水野祐 イラスト:とくながあきこ 2013/08/09

イベントなどで他人の楽曲を利用したことはありませんか? 例えばBGMとして使ったり、バンドでカバーしたりする場合がそれにあたります。実はこのとき、許諾が必要な場合とそうでない場合があります。音楽著作権ベーシック講座、第8回ではどういった場合に許諾が必要なのか、必要な場合はどこに申請すべきかを明らかにします!

カズワタベ
音楽著作権ベーシック講座の第8回、相談にいらっしゃったのはH大学の学園祭実行委員をやっているYさんです。今日はどんなご相談でしょうか?

Yさん
よろしくお願いします。今H大学では10月の学園祭に向けて準備を始めていまして、僕はその実行委員をやっています。主にライブステージ周りの担当なのですが、そこでのパフォーマンスで出演者が、メジャーアーティストの楽曲をバンドでカバーしたり、会場BGMとして利用することになりました。権利者の方に許諾を取らなくてはいけないのではないかと言われたんですが、なにぶん初めてなもので勝手がわからず、相談させていただけたらと思い伺いました。

カズワタベ
楽曲をBGMとして使用したり、カバーして演奏したりする場合の許諾の取り方についてのご相談ですね。確かに、どこにどう申請したら良いのかパッとは思い浮かばないですね。一般的にはどのような手順で許諾が行われるんでしょうか?

水野
そうですね。まず、許諾の手続の話に入る前に、今回のご相談を考えるにあたって、BGMやカバーという利用に際して、許諾が必要な場合にあたるのか否かを検討する必要があります。楽曲を学園祭のステージでBGMとして利用することやカバーすることは、著作権法上「演奏」行為にあたります。Yさん、今回の学園祭のライブは入場料はとりますか? もし入場料を取らないとしたら、著作権法上認められている「非営利利用」にあたる可能性があり、その場合にはそもそも権利者の許諾が不要になります。

Yさん
実は今回、イベントサークルが主催する無料ライブと、プロのミュージシャンを呼んで行う有料のライブと両方があるんです。

カズワタベ
無料と有料の場合で変わってきそうですね。
「非営利利用」にあたる場合の条件は、どういうものがあるんでしょうか?

水野
「非営利利用」にあたる場合の条件は、以下のとおりです。

楽曲の非営利利用の条件

  1. 営利を目的としていないこと(非営利)
  2. 聴衆または観衆から料金等を得ていないこと(無料)
  3. 出演者等に報酬が支払われていないこと(無報酬)
  4. 利用態様が上演・演奏、上映、口述のいずれかであること
  5. すでに公表された著作物であること
  6. 慣行があるときは出所を明示すること

―参考:文化庁「著作物等の「例外的な無断利用」ができる場合

カズワタベ
無料ライブの方についてはこれにあたると考えて間違いないですか?

水野
そうですね。学園祭というのは学校の公式の行事として大きく括れば教育目的で行われると一応言うことができるので「営利を目的としていないこと」という条件もみたしますし、出演者等に報酬が支払われていないなどのその他条件をみたせば、無料ライブにおけるカバーに関しては権利者の許諾は不要と考えます。会場で使うBGMについても、同様に、上記「非営利利用」の条件をみたせば、権利者の許諾は不要です。

カズワタベ
入場料が無料というだけでなく、出演者などに報酬が支払われていないことも重要なんですね。会場で使うBGMでCDなどの音源を使う場合は、著作権だけでなく、原盤権などの著作隣接権も関係してくると思うのですが、こちらも非営利だと許諾は必要ないのでしょうか?

水野
はい、著作隣接権の権利者の許諾については、「非営利利用」の場合でも、それにあたらない営利の場合でも不要です。
これはそもそも、いわゆる原盤権(レコード製作者の権利)も実演家の権利も、著作権法上「演奏」にあたる会場等におけるBGMとして利用には権利が及ばないからです(著作隣接権にも著作権に関する「非営利利用」の規定が適用(厳密に言うと、準用)されるからではありません)。

カズワタベ
CD等の録音物を学園祭の会場でBGMとして利用する場合には、そもそも著作隣接権者に許諾を取る必要がないんですね。これは意外でした。
無料ライブについてお話してきましたが、有料ライブの方はだれのどのような許諾が必要になるのでしょうか。

水野
カバーする場合でも会場BGMとして利用する場合でも、著作権については、JASRACなどの著作権管理団体に登録されている楽曲か、それ以外の楽曲かを区別する必要があります
著作権管理団体に登録されている楽曲であれば、著作権管理団体に対し許諾を取る手続を行う必要があります。具体的な許諾の手続については、それぞれの著作権管理団体のウェブサイトに細かく記載されていますし、電話すると丁寧に教えてくれますよ。

カズワタベ
著作権管理団体に登録されているかどうかは、各団体のウェブサイトで検索できますね。
もしどこにも登録していなかったら、著作権者本人に直接許諾を得る形になりますか?

主要著作権管理団体の登録楽曲検索ページ

水野
はい。権利者を自ら探し出して、許諾を得なければなりません。これは非常に手間や時間がかかる作業で、ぼくら弁護士も実務で非常に苦労するところです。
実は、権利者不明の場合などに、文化庁の許諾を得れば、権利者の許諾を得なくても著作物を利用できる「裁定制度」というものもあります。しかし、この手続は認められる条件がまだまだ厳しく、時間や費用、手間の面でまだまだ活用されているとはいえないのが実情です。

カズワタベ
それは大変そうですね……。
ところでCD音源などの利用についても著作権管理団体で許諾を行っているんでしょうか? 先ほど聞いた原盤権についてなんですが。

水野
著作権管理団体は、著作権の管理しか行っておらず、原盤権などの著作隣接権については許諾を行うことはできません。

カズワタベ
原盤権などの著作隣接権について、例えば今回のようにメジャーのアーティストの楽曲を利用するとなったら、どこに問い合わせるのが一般的なんでしょうか?

水野
そうですね。レコード会社や音楽出版社の法務部等に原盤権や実演家の権利を持っている権利者を問い合わせ、確認したうえで、許諾の手続を行うのが一般的です。ミュージシャン自身が原盤権を有しているケースも増えていますね。
実演家の権利については、原盤権者に権利を譲渡しているケースが多いですが、そうでない場合には 個別に連絡を取る必要があります。

Yさん
許諾の手続って、なにかフォーマットを提示されるんでしょうか。 それとも自分でなにか用意しないといけないですか? あと、たとえば権利者と直接会って口約束をもらったり、TwitterにDMを送ってOKをもらったりしても効力があるんでしょうか?

水野
著作権管理団体に許諾を取る場合には、各団体、そして利用態様ごとにそれぞれ許諾を取る書式がウェブサイトなどに用意されています。
著作権管理団体が管理していない楽曲や原盤権等の許諾の取り方に関しては、特に決まりはありません。電話、メール、書面などで連絡をとり、条件を定めて、「原盤使用許諾契約書」などを交わすのが一般的です。ささいな利用の場合には口約束などで行われることも実際には多いでしょう。ただし、ここは争いになりやすいところなので、客観的な証拠として、原盤権の利用を許諾することや、利用範囲等に関する合意を残しておくことが肝要です
「原盤使用許諾契約書」のひな形は、インターネットで検索すれば見つけることができますし(全体的に契約書として出来はイマイチですが)、一般社団法人日本音楽出版社協会などが販売もしています。

カズワタベ
では全体を整理しましょうか。
まず、無料ライブで「非営利利用」にあたる場合には著作権、著作隣接権ともに許諾は必要ありません。
次に有料ライブの場合ですが、バンドでカバーする場合、会場BGMとして既存のCD音源などを利用する場合ともに著作権者の許諾は必要です。これは著作権管理団体に登録されている場合は各団体へ、そうでない場合は権利者に直接問い合わせる必要があります。著作隣接権については、この場合にも許諾は不要です。
以上で間違いありませんか?

著作権の許諾 著作隣接権の許諾
非営利利用
(無料ライブなど)
不要 不要
営利利用(有料ライブなど) カバー演奏 必要
(著作権管理団体または 権利者本人)
不要
BGM 必要(〃) 不要

水野
綺麗にまとめていただき、ありがとうございます(笑)。

カズワタベ
頑張りました(笑) !
これで今回の相談については全体を明らかにできたかと思います。Yさん、疑問は晴れましたか?

Yさん
はい、ありがとうございます! 無料と有料の場合、カバーとBGMの場合、それぞれの違いが分かりました。有料の方については許諾を取るようにします。

カズワタベ
解決して良かったです! またなにか疑問があったら来てください!

水野
では、ぼくはこれにて失礼いたします! バイアーナ・システムというブラジルのバンドを観に、渋谷WWWに向かいます。

カズワタベ
先週行けなかったから嬉しそうですね(笑)。

無料ライブは許諾不要、有料の場合は確認を!
許諾を得る際は必ず書面に残そう

今回は学園祭におけるバンドでのカバー、BGMとしての利用を中心に、既存楽曲を利用する際の許諾について解説しました。「非営利利用」の条件をみたす場合には許諾は必要ない、というところを理解していると、さまざまなシーンでの利用が考えられそうです。ぜひ参考にしてください!

カズワタベ

カズワタベ

大福が好きすぎる。1986年4月長野県松本市生まれ。洗足学園音楽大学在学中よりライブハウス店長、クラブジャズバンドのリーダー/ギタリスト、ウェブサービス運営会社の取締役を歴任し、現在はフリーランスとして「考える・つくる・広める」を事業領域に様々なプロジェクトで暗躍中。並行して、神戸ITフェスティバル、YOAKE、CCサロン等の著作権、コンテンツ・ビジネス関連のイベントで登壇するなど、クリエイターの権利保護、創作文化振興に関わる活動を積極的に行なっている。



水野祐(みずの たすく)

水野祐Photo by Kenshu Shintsubo

弁護士。シティライツ法律事務所代表。アーティスト・クリエイター等を支援する法律家によるNPO “Arts and Law”代表理事。"Creative Commons Japan"、"Fab Commons (FabLab Japan)"、"LiFTONES"などにも所属。NPO法人ドリフターズ・インターナショナル監事。一般社団法人マザー・アーキテクチャア監事。

主にクリエイティブ・IT ・建築不動産分野の法律・契約等のアドバイス・コンサルティング業務に従事しつつ、多様な課外活動を通して、カルチャーの新しいプラットフォームを模索する活動を行っている。



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