第3回:有名な曲のギターリフを使ってまったく違った曲を作った。これは編曲? 作曲?

音楽著作権ベーシック講座 by カズワタベ/水野祐 イラスト:とくながあきこ 2013/06/27

著作権で保護された他人の曲をコピーして、有料ライブなどで勝手に演奏してはいけないのは、みなさんご存知ですよね。では何をもって「曲」と判断するのでしょうか? 音楽著作権ベーシック講座第3回では曲を印象づける最小単位「ギターリフ」がどういう扱いになるのかを考えてみました!

カズワタベ
音楽著作権ベーシック講座の第3回、相談にいらっしゃったのはインディーズバンドのギタリストHさんです。今日はどんなご相談ですか?

Hさん
よろしくお願いします! 僕はバンドで作曲も担当してるんですが、ある時The White Stripesの『Seven Nation Army』のギターリフを弾いてたら原曲と違う展開が思いついてしまったんです。まったく違った曲ができて、それを自分のバンドの曲にしようと思うんですが、リフはそのままなんですよ。メロディや曲の展開は全然違うんですが、これはアレンジ(編曲)になってしまうんでしょうか?

カズワタベ
有名な曲のギターリフを使ってまったく違った曲を作った場合、編曲になってしまうのか、自分の作曲として認められるのかということですね。どうなんでしょうか?この場合の焦点はギターリフの権利が守られているか、ギターリフに著作権が発生するのか、ということだと思うんですが間違ってませんか?

水野
んー、今日はいきなりむずかしい質問ですね。
まず、カズくんが言うとおり、そのギターリフに著作権が発生するか、しないのかというのが出発点になります。そして、仮にギターリフに著作権が発生するということになると、そのギターリフを「編曲」するということは、著作権法上は「翻案」(※第1回の記事参照)といって、無断で行うと元の作品の著作権を侵害する行為にあたります。一方、ギターリフを使って新しく「作曲」するということは別の新しい作品を作るということで、著作権侵害にはなりません。

カズワタベ
なんとなくメロディ丸ごとパクったら駄目なイメージはあるんですが、そういえばギターリフってどうなんですかね。短いフレーズだから同じジャンルの曲だと似てしまうことはよくありますよね。でも、さすがにそのままだとまずいのかなあ。Hさん、今回使ったリフはどんなフレーズですか?

Hさん
2小節のフレーズをループするリフです。この曲ですね。

カズワタベ
うーん、しかもよくありそうなフレーズではあるんですよね(笑)。水野さん、聴いた印象どうですか?

水野
あー、この曲、去年のフジロックでジャック・ホワイトが演奏してたのを聴いた憶えが(笑)。
それは置いておいて、まず、ギターリフを使うといっても、元となるギターリフのコード進行のみ使う場合やメロディも使う場合がありますが、今回はどうなんでしょうか?

Hさん
ギターのフレーズの繰り返しはそのままに、ドラムのリズムやキーボードのハーモニー、ボーカルのメロディもまったく違うものを載せています。正直言うとジャンルも変わってしまってるんですよね。この曲なんですが、聴いてみてもらえますか?

(みんなでHさんの曲を聴く)

カズワタベ
あー全然違いますね(笑)! 確かに全体にギターのフレーズは使ってますが、曲としてははっきり違う曲に聴こえます。ここまで違った曲になっていれば、問題ないように思えるんですよね。うーん。

水野
結論から言うと、今回の曲のギターリフにある短いコード進行の繰り返しは、「ありふれた表現」として著作権が発生しないと考えます。

カズワタベ
「ありふれた表現」と言いますと?

水野
著作権は「創作性のある表現」のみを保護するので、誰が表現しても同じようになってしまう「ありふれた表現」や、表現をする際に選択の幅がない表現は著作権が発生しません。また、違った言い方をすると、短いコード進行という基本的な音楽の構成要素に著作権を認めて独占させてしまうと、その短いコード進行を他の人が使えなくなってしまいます。著作権は、具体的な表現のみを保護し、アイデアは保護しないというルールがあるのですが、その考え方にも近いですね。
これに対し、メロディは作る人によって選択できる表現の幅が広いので、原則としてメロディには著作権が発生すると考えられています(ただし、あまりに短いメロディには著作権は発生しません)。

カズワタベ
「C – F – G – C」みたいなよくあるコード進行を独占させてしまったら大変ですもんね! 他の人の創作がとても不便になります。これは短いフレーズも同様です。考えてみれば確かに「コード進行をパクった!」って訴えたって話は聞いたことがないですし、コード進行それ自体に著作権は発生しないってことですかね。

水野
よく「コード進行には著作権がない」と言われることがあるんですが、そこまで言い切るのはちょっと誤解だと思います。
コード進行は音楽のメロディなどを構成する基礎的部分であり、コード進行だけでは元の曲を特定できないことが多いので、そのような誤解を生んでいるのだと思います。ですが、コード進行だけで「あの曲だ!」と特定できるような特異なコード進行を作れば、そこに著作権が認められる可能性はあると考えます。ただ、現実にそのような特異なコード進行が生まれる可能性はなかなか考えにくいですが。
さきほどお伝えしたように、コード進行は音楽の基本要素なので、それを特定の人に独占させるのは著作権法の目的である文化の発展を阻害してしまうという配慮もあると思います。
なので、一般的には、短いコード進行の繰り返しによって構成されるギターリフには著作権は発生しないと考えて結論として間違いありません

カズワタベ
著作権の発生には「ありふれた表現でないこと」と「表現として選択の幅があるなかであえてその表現を選択したこと」が求められるんですね。勉強になりました。
ただ、著作権が発生しないとは言っても先達へのリスペクトを忘れちゃいけないと思うんですよね。おそらく音楽のみならず創作全般において、「完全なオリジナル」っていうものはもうほとんど存在しません。誰もが、自身に影響を与えた何かがあって、その流れの中でものづくりをしています。もし今回のように自分の好きな曲のフレーズを使うとしたら、著作権の発生する、しないというビジネス的な話とは違った次元での意識も持っていってもらえたら嬉しいです。
さて、Hさん、疑問は解決しましたか?

Hさん
はい、今回のコード進行の繰り返しを利用しても法的に問題ないことが確認できて、安心しました。また、カズワタベさんがおっしゃってた点は作曲家としていろいろ考え込んでしまうところです……。

水野
それでは、問題解決したところで、ぼくはTim HeckerとAmetsubのライブを観に、渋谷WWWに行くので、今日はこれで!

カズワタベ
またライブ行くんですか! うらやましい……。

短いコード進行のギターリフに著作権は通常発生しない
「自由な創作活動」の意味を考えよう

今回は著作権の発生には「ありふれた表現でないこと」と「表現として選択の幅があるなかであえてその表現を選択したこと」が求められる、という点がポイントでした。独占させてしまうことで創作環境に悪影響があるものは認められないんですね。オリジナルの曲をつくるときには意識してみましょう!

カズワタベ

カズワタベ

大福が好きすぎる。1986年4月長野県松本市生まれ。洗足学園音楽大学在学中よりライブハウス店長、クラブジャズバンドのリーダー/ギタリスト、ウェブサービス運営会社の取締役を歴任し、現在はフリーランスとして「考える・つくる・広める」を事業領域に様々なプロジェクトで暗躍中。並行して、神戸ITフェスティバル、YOAKE、CCサロン等の著作権、コンテンツ・ビジネス関連のイベントで登壇するなど、クリエイターの権利保護、創作文化振興に関わる活動を積極的に行なっている。



水野祐(みずの たすく)

水野祐Photo by Kenshu Shintsubo

弁護士。シティライツ法律事務所代表。アーティスト・クリエイター等を支援する法律家によるNPO “Arts and Law”代表理事。"Creative Commons Japan"、"Fab Commons (FabLab Japan)"、"LiFTONES"などにも所属。NPO法人ドリフターズ・インターナショナル監事。一般社団法人マザー・アーキテクチャア監事。

主にクリエイティブ・IT ・建築不動産分野の法律・契約等のアドバイス・コンサルティング業務に従事しつつ、多様な課外活動を通して、カルチャーの新しいプラットフォームを模索する活動を行っている。



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