第2回:JASRACに管理委託した自分の曲の歌詞をTwitterやブログで書いた。これって問題ない?

音楽著作権ベーシック講座 by カズワタベ/水野祐 イラスト:とくながあきこ 2013/06/20

先週から始まった「音楽著作権ベーシック講座」、ご好評いただいた第1回では「バンドメンバーで曲を一緒に作った場合の権利」について解き明かしました。第2回となる今回は、JASRAC等の音楽著作権管理団体に管理を委託した楽曲の取り扱いについてのご相談です。風のウワサで「JASRACに登録すると、自分の曲なのに自由に使えない」って聞いたことある人はいませんか?

※編注2013.06.21:初出時、信託について「著作権が譲渡」という表現が含まれておりましたが「著作権を移転」の誤りでした。申し訳ございません。お詫びの上訂正いたします。

カズワタベ
音楽著作権ベーシック講座の第2回、相談にいらっしゃったのはインディーズ・レーベルに所属しているシンガーソングライターのSさんです。今日はどんなご相談ですか?

Sさん
はい、私はインディーズレーベルに所属しながら音楽活動をしてます。レーベル側の意向もあって、リリースした曲はすべてJASRACに登録しているんですが、先日自分のブログで自分の曲の歌詞を掲載したら、周りの人から「それ、許可取った?」と聞かれたんです。自分の曲を掲載するのにもJASRACの許可がいるものなんでしょうか?

カズワタベ
始めに補足しておくと、JASRACは正式名称が「日本音楽著作権協会」といいます。音楽家が自分の楽曲の著作権の管理を委託することができる、いわゆる著作権管理団体の中では日本で最大のものです。今回はそのJASRACに登録している自分の曲を利用する場合ですね。「JASRACに管理委託する」「JASRACに登録する」とよく言いますが、楽曲の権利はどういう状況になるんでしょうか?

水野
著作権を持っている人、つまり著作権者がJASRACに管理を委託する場合、著作権者とJASRACは「著作権信託契約」という契約を締結し、JASRACは権利者に代わって作品の管理をおこないます。
「信託(しんたく)」とは、ある財産を信頼できる人や団体に譲渡したうえで、一定の目的にしたがってその財産を管理・運用・処分してもらうための法的なスキームです。JASRACは、権利者に代わって、作品の利用者に対し利用許諾をおこない、使用料を徴収し、そこから管理手数料を差し引いて権利者に還元します。権利者はJASRACに信託した場合には、原則としてJASRACがする個別の許諾に口を出すことはできなくなります

カズワタベ
簡単に言うと、その曲を何かに使いたい人がいたときに、許諾をしたり、その使用料の徴収を代わりにやってくれるという団体ですね。著作権管理団体はJASRAC以外にもいくつかあって、ジャパン・ライツ・クリアランス、イーライセンスなどが有名です。さて、今回のSさんのご相談はこういった団体に管理委託した曲を「自分で使うとき」どういう扱いになるのか、というものです。個人的にはいくら管理委託をしたとは言え、作った本人なのですから、自由に使えないのもおかしいかと思うんですがどうなんですかね?

水野
使用料の徴収だけでなく、著作権侵害行為があればJASRAC自らが著作権者に代わって法的措置を取ることができることもポイントですね。
今回のSさんの場合、自分の楽曲の歌詞をJASRACに信託しているので、歌詞の著作権はSさんではなく、JASRACに移転しています。そうなると、著作権を移転してしまっているSさんはJASRACに対し、自分の歌詞について使用料を支払わなくてはいけないのでは? というおかしな結論になるようにも思えます。

Sさん
そうなんですか。著作権がJASRACにあることになってるなら仕方ないですよね……。

水野
しかし、カズくんが言うようにこの結論はおかしいので、JASRACは自己使用をしたい場合には事前の届出をすることで許諾の手続と使用料の支払を不要にしています

カズワタベ
ちゃんと回避手段も用意してあるんですね。これは他の著作権管理団体も同様ですか?

水野
実は、JASRACも以前は自己使用の場合の回避手段がなかったと聞いています。でも、結論がおかしいので、制度を変更したようです。
自己使用の場合には事前に届け出をして、許諾の手続と使用料の支払を不要にするのは他の著作権管理団体もだいたい一緒ですね。

カズワタベ
ちゃんと改善されてるんですね。ちなみに事前に手続きを忘れてしまった場合は使用料を払わなくてはいけないんでしょうか? Sさんはすでにブログに歌詞を書いてしまいましたが、手続きを行っていないんですよね?

Sさん
そうですね、手続きはまだしていません。

水野
事前に手続しておかないと、JASRACはその使用が自己使用なのか、それ以外の使用なのか判断できないので、使用料を請求されてしまう可能性があります。ただし、JASRACも事後に自己使用と判明した場合には、使用料を免除するケースもあるようです
しかし、著作権法上、権利者で無許可で利用が認められる「引用」にあたれば、法的には手続は不要になるという裏テクがあります。いや、法律で認められている方法で「裏」でもなんでもないんですが(笑)。「引用」は認められる条件がいくつかあるので、その条件を守らなければなりません。でも、自分が作った歌詞を自ら「引用」するっていうぎこちなさは残りますね(笑)。

カズワタベ
なんか変な感じですね(笑)。引用の条件については下の図を参考にしてください。

「引用」の条件

 既に公表されている著作物であること
 「公正な慣行」に合致すること
 報道、批評、研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること
 引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること
 カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること
 引用を行う「必然性」があること
 「出所の明示」が必要(コピー以外はその慣行があるとき)

「引用」「転載」関係/著作権なるほど質問箱(文化庁)より引用

Sさん
あとブログじゃなくてTwitterに書くこともあるんですが、これも同じですか?

カズワタベ
Twitterだと140字以内だから歌詞全体ではなく一部抜粋といった感じですよね。短くても変わらないんでしょうか?

水野
ここはいろいろな考え方があるところですが、引用した部分が著作物として認められる場合には、その利用は著作権の利用にあたるので、原則として手続が必要になると考えます。

カズワタベ
では基本的には何に使う場合でも事前の手続きをしておいた方が良さそうですね。Sさん、これでご相談いただいた疑問、解決したかと思うのですがいかがですか?

Sさん
はい、すっきりしました! ありがとうございます!

カズワタベ
良かったです! また相談したいことがあったらいつでも来てくださいね。

水野
では、ちょっとこれからTrio Estrangeirosのライブで渋谷デュオに行くので、ぼくはこれにて!

カズワタベ
え、この前のクラフトワークに引き続きですか!? うらやましい!

管理を委託する以上は
あらかじめの手続きが肝要

今回は「著作権管理団体に管理委託した自分の曲を使う場合」の扱いについてのご相談でした。何にせよ事前の手続きをしておくに越したことはない、という結論になりそうです。自分の楽曲を利用する可能性がある音楽家のみなさん、ぜひ参考にしてください!

カズワタベ

カズワタベ

大福が好きすぎる。1986年4月長野県松本市生まれ。洗足学園音楽大学在学中よりライブハウス店長、クラブジャズバンドのリーダー/ギタリスト、ウェブサービス運営会社の取締役を歴任し、現在はフリーランスとして「考える・つくる・広める」を事業領域に様々なプロジェクトで暗躍中。並行して、神戸ITフェスティバル、YOAKE、CCサロン等の著作権、コンテンツ・ビジネス関連のイベントで登壇するなど、クリエイターの権利保護、創作文化振興に関わる活動を積極的に行なっている。



水野祐(みずの たすく)

水野祐Photo by Kenshu Shintsubo

弁護士。シティライツ法律事務所代表。アーティスト・クリエイター等を支援する法律家によるNPO “Arts and Law”代表理事。"Creative Commons Japan"、"Fab Commons (FabLab Japan)"、"LiFTONES"などにも所属。NPO法人ドリフターズ・インターナショナル監事。一般社団法人マザー・アーキテクチャア監事。

主にクリエイティブ・IT ・建築不動産分野の法律・契約等のアドバイス・コンサルティング業務に従事しつつ、多様な課外活動を通して、カルチャーの新しいプラットフォームを模索する活動を行っている。



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