第1回:バンドメンバーで曲を共作したとき、権利ってどうなるの?

音楽著作権ベーシック講座 by カズワタベ/水野祐 イラスト:とくながあきこ 2013/06/13

バンドやDJなどの音楽活動に励むみなさん、こんにちは! みなさん、音楽活動の中で起こる「著作権」やその他の契約などの決まりごとについて、分かっているつもりで実際はよく知らなかったり「コレってどうなってるのかな~?」と思っていること、ありませんか? まあ1人1つくらいはあるでしょう(笑)。
この連載では毎回相談者の方を招き、主に音楽著作権に関する疑問を、元ミュージシャンの私カズワタベと、弁護士の水野祐先生が時にはバシッと回答、時には一緒に考えながら、解決して参ります!

カズワタベ
水野先生、よろしくお願いします!

水野
よろしくお願いします。あと、「先生」は勘弁してくださいね、そういう柄じゃないので(笑)。

カズワタベ
承知しました(笑)。さて、記念すべき音楽著作権ベーシック講座の第1回、相談にいらっしゃったのは大学のバンドサークルに所属してるNさんです。今日はどんなご相談ですか?

Nさん
よろしくお願いします!
僕は大学のサークルでバンドを組んでいます。オリジナル志向のバンドで、バンドメンバーが各々に作る曲もあれば、みんなで一緒に作る曲もあります。
今度、自主制作のアルバムを作ることになったんですが、そういえば曲の権利って、どういう風に持つことになるのかな? と疑問に思ったんです。

カズワタベ
権利と言っても具体的には著作権を誰が持っているのかという相談ですね。まず、軽く整理すると、「バンドメンバーが個別に作った曲」と、「みんなで一緒に作った曲」がありますよね。前者は、基本的には作った人が権利持ってるってことで良いんでしょうか?

水野
はい。作曲した人が原則として曲の著作権を持つことになります。

Nさん
例えば、僕が作ってきた曲のアレンジをみんなで考えても変わりませんか?

水野
変わりません。著作権法では、アレンジ(「編曲」)する権利は翻案権(ほんあんけん)といって、著作権者が持っているとものと規定されています。翻案権っていうのは、著作物を翻訳、編曲、変形、翻案する権利のことですね。曲をアレンジした場合には、アレンジ後の曲は元の曲の二次的著作物になるとされています。
ただし、そもそも「作曲」なのか、「編曲」なのかは見極めが難しい場面もあります。
Nさんの質問でいえば、Nさんが作ってきた曲がすでに曲として成立していれば「作曲Nさん、編曲みんな」ということになりますが、みんなのアレンジも含めて初めて曲になった場合には「作曲みんな」というケースもあると思います。特にDAWで制作した楽曲などは、境目がむずかしいですね。

カズワタベ
そこの線引きは難しいですよね。
では今回の本題、その「作曲みんな」の場合の権利についてですが、これはどうなるんでしょうか? なんとなくのイメージでは、全員が権利を平等に持っているように思えるんですが。

水野
そうですね。1つの曲という著作物をみんなで共同で制作した場合には、その著作物は「共同著作物」となり、バンドメンバーは著作権を「共有」することになります。

カズワタベ
「著作権を共有」というのが分かりづらいところだと思うので、ここを掘り下げましょうか。つまり、バンドメンバー全員が著作権者ということですよね。と言うことは、この楽曲をコピーしたり、販売したりするときには、バンドメンバー全員の許可が必要なんでしょうか?

水野
はい。著作権を共有していると、共有者全員の同意がないかぎり、著作権を行使できません。ただし、正当な理由がないかぎり、共有者はその同意を拒めないとされています。

Nさん
この場合の正当な理由ってどんな例があるんですか?

水野
そうですねー。たとえば、他の共有者の合意を得るための努力をしなかった場合や、正当な対価の支払があるにもかかわらず、無意味に権利行使に同意しない場合などです。条文上は「正当な理由」としか書いてないし、なにが「正当」かも曖昧なので、むずかしいところですが。

カズワタベ
誰か1人だけ感情的に嫌、なんていう場合もあるでしょうし、ここは事前に相談しておかないとトラブルになりそうですね。
ところでこれ、演奏する場合も含まれるんですかね。例えばバンドで作った楽曲をメンバーの誰かがソロライブで演奏しようと思ったら、他のメンバーに許可を取る必要があるんでしょうか? 本人も著作権者ではあるけど、他のメンバーと権利を共有してるわけですよね。

水野
ここはちゃんと答えようとするとけっこうややこしいところなんですけど、Nさんのバンドの楽曲はまだJASRACに登録していないですよね?

Nさん
まだバンドを始めたばかりなので、していないです。

水野
そうなると、JASRACが著作権管理していない楽曲なので、カズくんが言うとおり、ソロライブで演奏しようとする場合には、他のメンバーへの許可が必要だということになります。もしJASRAC登録している場合には、JASRACに利用許諾の申請をする必要がありますが、ライブハウスなどはJASRACと契約していて、別途許諾を申請する必要はない場合が多いですね。JASRACの管理楽曲についても、また別の機会に詳しく扱いましょう。

カズワタベ
まあJASRACに登録していないのなら、その辺は演奏する度に許可を取るより、作った段階でバンドメンバー間で話しておくのがベストかもしれませんね。柔軟に対応できるでしょうし。これは特に問題ありませんか?

水野
問題ありません。たとえば、ビートルズの楽曲は「Lennon / McCartney」っていう共作になっているものが多いですが、作曲にジョージが関わっていた場合や、リンゴが寄与していた場合もありました。それでも、著作権はジョンとポールが共有しているという合意がバンド内でできていたということでしょう。
ただし、トラブルにならないように、なにかしら証拠を残しておいたほうがいいと思います。
そういう意味では、クレジットをするというのは、1つ証拠になります

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カズワタベ
そういえば曲のことばかり考えていましたが、詞にも著作権ってありますよね? 詞の権利ってどうなるんでしょうか。

水野
音楽の著作権は、大きく分けて作曲と作詞に発生しますから、作詞も作曲と同様に、制作した人に著作権が生じます。
カズくんは以前インストのバンドをやっていたんだっけ? インストだと歌詞は基本ないわけなので、作曲した楽曲のみに著作権が生じます。

カズワタベ
そうですね、以前インストバンドやってました。歌詞はないので特に権利については悩みませんでしたが、楽曲はすべて共作だったのでアルバムのクレジットは曲ごとに個別には書かず、「All tracks composed & arranged by バンド名」とまとめて表記していました。

水野
うん、共作の場合はその表記でも問題ないと思うよ。

Nさん
じゃあ今度作る自主制作のアルバムで曲のクレジットを入れるときに、誰かが作った曲はそのメンバーの名前を、共作した曲にはバンドメンバー全員の名前を入れておくようにします!

カズワタベ
ぜひそうしてください!

Nさん
アルバム、たくさん売れるといいなぁ……。そういえば、メンバーみんなで作った曲の売上ってメンバーの人数で折半が基本ですか?

水野
え……Nさん、ちょっと気が早すぎるのでは……まあ、とは言え、バンドメンバー間でどのような配分にするか事前に決めておくことが重要です。取り決めがない場合には折半ということになります。

カズワタベ
そこも、バンドの方向性にも関連するし、あらかじめ話しておくに越したことはないですね。

Nさん
わかりました。さっそくバンド会議開きます! ありがとうございました!!

カズワタベ
はい、ありがとうございました!

水野
では、この後僕は赤坂ブリッツに向かいます!

カズワタベ
クラフトワークのライブ行くんですか!? うらやましい!!

共作した曲はバンドメンバー全員が権利を持つ
今後のためにバンド会議を開こう

今回は、バンドメンバー全員で作った曲の権利について、一緒に考えてみました。曲が二次利用されたときに、権利はどう影響してくるのか? というところがポイントでしたね。
せっかくバンドのために作った曲、その「バンドの財産」をフルに活用するために、いまからメンバーでしっかり話し合っておきましょう!

カズワタベ

カズワタベ

大福が好きすぎる。1986年4月長野県松本市生まれ。洗足学園音楽大学在学中よりライブハウス店長、クラブジャズバンドのリーダー/ギタリスト、ウェブサービス運営会社の取締役を歴任し、現在はフリーランスとして「考える・つくる・広める」を事業領域に様々なプロジェクトで暗躍中。並行して、神戸ITフェスティバル、YOAKE、CCサロン等の著作権、コンテンツ・ビジネス関連のイベントで登壇するなど、クリエイターの権利保護、創作文化振興に関わる活動を積極的に行なっている。



水野祐(みずの たすく)

水野祐Photo by Kenshu Shintsubo

弁護士。シティライツ法律事務所代表。アーティスト・クリエイター等を支援する法律家によるNPO “Arts and Law”代表理事。"Creative Commons Japan"、"Fab Commons (FabLab Japan)"、"LiFTONES"などにも所属。NPO法人ドリフターズ・インターナショナル監事。一般社団法人マザー・アーキテクチャア監事。

主にクリエイティブ・IT ・建築不動産分野の法律・契約等のアドバイス・コンサルティング業務に従事しつつ、多様な課外活動を通して、カルチャーの新しいプラットフォームを模索する活動を行っている。



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