おつかい7:家でもカラオケしたいタイ人のための「カラオケVCD」

いしいのおつかいミュージック by いしいこうた 2013/11/26

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日本発祥のレジャーで、世界語にもなっている「カラオケ」。ここバンコクでも、ポピュラーな遊びのようです。試しに、グーグルの検索窓に「バンコク カラオケ」と打ち込んでみるかコピペするかして、エンターキーを叩いてみてください。すると『夜遊び情報』とかなんとか、怪しい雰囲気の情報がずらずら。ついでに画像検索もしてみると、安っぽいドレスを着たタイ人女性の画像がたくさん出てきます。

どうやらこれらのお店は、お客さんの隣に座った女性店員がお酌をしてくれたり、一緒にカラオケを歌ったりしてくれるサービスを提供しているようです。日本でいうところのキャバクラのようなものなのかと思いきや、交渉次第でエッチな「お・も・て・な・し」まで付いてくるという、至れり尽くせりなお店のようです。

僕が知ってるカラオケはそんなところじゃない。もっと健全で、健康的で、歌を純粋に楽しみたい全ての人たちのために開かれた場所ではなかっただろうか。どうして、鼻の下を伸ばしたおっさんのためのお店になってしまったのだろうか。なんて考えながら街を歩いていると、普通のカラオケ店も見つかりました。

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大きなショッピングモール内にあるシネコンスタイルの映画館には、なぜかボーリング場が併設されていることが少なくありません。なかでもMajor Cineplexというタイのシネコン最大手グループのいくつかの映画館に併設されている、blu-oというボーリング場には、カラオケ用の個室も用意されています。利用料金は一時間300バーツほど( およそ900円)と、日本の感覚でもお高く感じるのだから、物価の安いタイではなおさら。僕のまわりで利用したことのある人がいなかったため詳しいことは分からないのですが、宣伝資料を見る限り、個室は高級ホテルの一室のようなラグジュアリーな内装のようです。いつか、「お・と・も・だ・ち」と一緒に行ってみたいものです。

前回CDを購入したお店が入っているショッピングモール、MBKにも、以前はSF MUSIC CITYという、上のとは別のシネコン系列のカラオケ店がありました。そこにはなんと、全面ガラス張りのシースルーな個室があったとのこと。その様子は、カラオケ店内などで放映されていたと思われるケンタッキーのCMから伺い知ることができます。

最後の5秒間に写っているのがそれなのですが、盛り上がって踊り狂っている様子が外から丸見えですね。さすがにこの状況では人の目が気になって歌に集中することができず、利用客に不評を買い、閉店にまで追い込まれたのかもしれません。

シネコン系列のカラオケは、内装もサービスもハイグレードなのだけれど、その分お値段もゴージャス。なかなか気軽には行けません。利用客を見ても、こころなしか高級そうな服を着ている、少しハイソっぽい方々が多い印象です。

もっと安くカラオケを楽しみたいなら、店内にカラオケモニターとステージのある飲食店に行くと良いと思います。そういう店はだいたい大通りから少し離れたローカルな雰囲気の路地に位置し、夜間のみ営業しています。お酒を飲んで上機嫌になったおじさま方が、タイの音楽を熱唱している姿をよく見かけます。

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けれどやっぱり、いきなり初対面の人前でお歌をうたうのは、ナイーヴなニッポンジン的にはなかなか気が引けますよね。僕なんかは、今こうして「音楽と楽器を愛するプレイヤーのための情報サイト」で連載しているけれど、音感もなければリズム感も丸っきりありません。周囲の人を不快にさせるほどに音痴なので、友人の前でも歌うのはできるだけ避けたいです。そう考えると、家でカラオケができたら、お金もかからないし人前にも出なくていいし、純粋に歌うことを楽しめていいことづくめなんじゃないか? って、いま思いつきました。
そして、そんな自宅カラオケに便利なCDを見つけました。

レコード会社が開催したセールで10バーツ(およそ31円 -2013年11月現在)で購入した、カラオケVCDです。

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このCDは、ミュージックプレーヤーなどで再生可能な一般的な音楽CDとは異なり、「VCD」という映像規格のCDです。タイではこの映像メディアが、あるいはDVDよりも一般的なようで、コンビニでもハリウッド映画の正規品VCDが売られているのをよく見かけます。

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ジャケットの右上に「KARAOKE」と書いてある通り、内容はカラオケ映像。とはいっても、日本のカラオケボックスで見られるような、イメージ映像のようなのではなく、全曲アーティストが出演するミュージックビデオに歌詞のテロップをつけたものになっています。音楽も、オケのみではなく歌声も一緒に収録されています。

VCDの規格上、画質はあまりよくないけれど、音も映像も楽しめて一石二鳥な1枚ではないでしょうか。

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トラックリストとそれをGoogle翻訳にかけたものは以下の通り。

  • アーティスト名:ดวงจันทร์ สุวรรณี(ドゥアンジュン・スゥワンニー)
  • アルバム名:ชุด 3 คนดีคนเดิม(シリーズ3はいい人だった)
  • リリース年:2006年
  1. คิดถึงรู้ไหม(あなたが知っている)
  2. ขาดคู่ดูหนัง(映画のペアの欠如)
  3. ขอร้องห้องข้าง(部屋を尋ねた)
  4. คนดีคนเดิม(非常に同じ人々)
  5. อย่าลืมสัญญาใจ(心を忘れないでください)
  6. รับช้าชะตาขาด(もうすぐ死ぬ運命にされて)
  7. เหตุสุดวิสัย(不可抗力)
  8. ฝากคำส่งท้าย(子供のままにしておきます)
  9. นับหนึ่งจนถึงใจ(心のカウント)
  10. ขาดเธอขาดใจ(あなたは死ぬことなく)

ほとんどの曲の映像はドラマ仕立てになっていて、役者が演じるドラマ・パートと、きらびやか衣装を着た歌手が歌うパートとが交互に映し出されるような構成になっています。

どれだけ、このドラマ・パートと歌詞の内容がリンクしているのかは、僕のタイ語理解力不足のせいで定かではないのですが、2曲目「映画ペアの欠如」はまんまタイトル通りの内容でした。

まず映し出されるのは、映画館に1人で足を運ぶ女性の様子。座席に座って上映を待っていると、両隣にカップルが座ります。両隣のカップルがいちゃいちゃしだして、女性はうらやましさと悲しさが入り交じったような苦渋の色を浮かべます。スクリーンに映し出されているのはドゥアンジュンが歌う姿。何度か映画館に行くけれど、毎回隣に座るのはカップルばかり。最後に訪れた映画館で偶然隣に座った男性と目が合い、初めて主人公の女性が笑みを浮かべるというビデオでした。

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カップルをうらめしそうに見る女性

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スクリーンの中のドゥアンジュンは華やか

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見つけた! 映画ペア

この女性にはどのような背景があって、どうしてカップルを見るたびにあんなにも苦々しい表情を浮かべるのかは映像からは伺い知ることができません。しかし最後の笑顔を見れば、一緒に映画鑑賞をする相手を欲していたのだと理解することができます。そう、主人公の女性には“映画ペア”が欠如していたのです

ビデオ全体を通してみると、およそ半分が薄暗い映画館でのドラマ・パート。残りの半分は蝶が羽ばたき、草花が萌えるなかでドゥアンジュンが歌を披露しているパートになっています。前者では映画館の座席について暗い表情を浮かべている主人公、後者ではスクリーンの中で活き活きとした表情で踊り、歌っているドゥアンジュンという相反する2人の女性を配置し、とても鮮やかな対比構造になっています。この対比構造がよりいっそう、ドゥアンジュンのスター性を見る者に印象づけています。

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味わい深いCG合成

さすがに全曲、歌手本人が出演してミュージックビデオを制作するのは撮影スケジュールや制作予算の都合で難しいのか、どの曲もドラマ・パートはセットを組む必要のない屋外ロケでの撮影になっています。さらにドゥアンジュンが歌っているパートに関しても、衣装でバリエーションをつけているものの、カメラワークはほとんど同じ。背景は大半をCGなどの合成でまかなわれています。そのおかげで、ほかでは見られないような味わいのある映像になっているように感じました。

まるで言葉のわからない乳幼児が、純粋に視覚や聴覚の刺激として教育テレビを見て興奮するかのように、よくわからない映像に、よくわからないけど「面白い」と感じさせられる、強引さがカラオケVCDにはありました

いつかまた、ほかのアーティストのカラオケVCDも購入してみたいと思います。

今回の参考資料

いしいこうた

いしいこうた

1988年生まれ。編集者。Webマガジンの編集などを経て2013年3月より意味もなくバンコクへ引っ越す。編著書に『GIF BOOK』(BNN新社)など。環ROY『ワンダフル』MVには5秒間タイっぽい映像を混ぜておきました。



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