おつかい3:「水牛」という名の国民的バンド

いしいのおつかいミュージック by いしいこうた 2013/06/24

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タイ人で知らない人はいない、フィリピン語で水牛を意味する「カラバオ」という名前のロックバンド。彼らの結成から現在のような国民的人気を得るまでの実話を描いた映画が、ちょうど劇場公開中だったので観てみました。

タイでは映画の鑑賞料金が日本の3分の1程度なので、僕はだいたい週に1回くらいの頻度で映画館に足を運んでいます。タイ語はまったくわからないので、基本的にハリウッド映画を観ているのですが。

タイ映画はだいたい月に2~3本程度新作が公開されているようです。けれど、観客動員数ランキングの上位を占めるのはだいたいハリウッドの大作映画。しかし、3月末に公開されたコメディー映画「พี่มาก..พระโขนง(ピー マーク…プラカノン)」がタイ映画史上最大のヒットを記録したり、主演俳優がスタントマンもワイヤーも使用せずに激しい格闘シーンを演じることで、世界中で話題を呼んだアクション映画「ต้มยำกุ้ง(トムヤムクン)」の続編が8月に上映予定など、国産映画も盛り上がりを見せています。

พี่มาก..พระโขนง(ピー マーク…プラカノン)

タイの映画館はどこも全席座席指定になっていて、劇場によっては同じ映画でも座席ごとに値段が異なることもあります。座席をコンピューターで管理していないような古い劇場でも、受付の人が座席表にチェックを付け、チケットに手書きで席番号を書いていきます。

本編上映前には、日本と同じように予告編やCMが流されるのですが、それが尋常でない量なのには毎回辟易させられます。予告編、CMだけで2~30分はあるので、開演時間を過ぎてもしばらくロビーで時間を潰している人がけっこういます。

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本編上映直前には、タイ国王の栄光を讃える映像とともに国王讃歌が流されます。その映像が流れている間は劇場内にいるすべての観客が起立しなくてはならないのが、王家に崇敬を払うのが慣わしのタイらしいところ。起立をしないと不敬罪で逮捕されてしまうこともあるそうです。国王讃歌映像は何種類かあるようで、劇場によってなのか、それとも作品によって変えているのかはわかりませんが、これまでに3種類の映像が確認できました。全部で何種類あるのか気になってます。

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多くのタイ映画は、一部劇場で英語字幕付きの上映がされます。この作品「Youngbao The Movie」が僕にとって初めての劇場で観るタイ映画になったのですが、タイ語がまったくわからないながらも英語字幕のおかげでどうにか内容についていくことができました。

Youngbao The Movie

この映画に出てくるバンド「カラバオ」は、留学先のフィリピンで当時学生だったエート、キアオ、カイの3人で結成されました。学校の卒業とともに一時解散するも、数年後、タイで企業に勤める傍ら個々に音楽活動を続けていたエートとキアオが再会を果たし、2人でバンドを再結成することになります。

1970年代後半のタイでは、バンドマンの主な活動場所はライブハウスではなく酒場のステージでした。そこではタイ語で歌うことは禁じられ、英語歌詞の楽曲の演奏しか許されませんでした。

それでも自分たちの言葉で歌いたいという強い意志から、仕事を辞めて作曲活動に専念。自宅でカセットテープに吹き込んだデモテープを携えてさまざまなレコード会社に売り込みに行きます。なかなか反応が芳しくない中、ようやく気に入ってもらえるレコード会社と出会い、1stアルバムとなるカセットテープをリリースしました。

リスナーには受け入れてもらえなかったけれど、他のバンドで活動していたミュージシャン、レックの耳に入り、意気投合して新たなバンドメンバーとして加わります。強力な仲間が加わったカラバオは勢いを増し、2ndアルバムをリリース。そこからスゴ腕のメンバーが集まってフルバンドになったり、ルクトゥン歌手のバックバンドを兼ねた大規模なツアーが決定したりと、着実に成長を遂げ、人気バンドになっていくカラバオ……という物語が、メンバーひとりひとりの想いを描きつつドラマチックに展開していきます。1970年代に起きたクーデターの様子もメンバーの回想シーンとしても描かれ、タイの社会情勢の変化もかいま見ることができました。

タイ人は映画本編が終了するとすぐに席を立ち、エンドロールをまったく観ずに劇場を後にするのが普通です。終わりまで座席に残っていると、たいてい観客がほとんどいなくなったのを見計らってエンドロール途中で劇場が明るくなり、従業員が清掃を始めます。しかし、さすがにカラバオの映画を観に来ている人のほとんどは、カラバオの曲が流れているエンドロールを中座せずに最後まで観ていました。

さて、前置きがかなり長くなりましたが、今回紹介するCDはこちら。

「Youngbao The Movie」鑑賞後にショッピングモール内、映画館の下のフロアーにあるCD屋で適当にカラバオのCDを選んで購入してみました。値段は150バーツ(およそ460円 -2013年6月現在)でした。

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ジャケットには、若かりし日のエート、キアオ、レックの姿が。どうやら2012年にバンド結成30周年を祝し、それまでリリースしたアルバムを再販したうちの1枚のようです。オリジナルは1982年に発売された2ndアルバムで、枠内の写真は当時のアルバムジャケットとなっていたものです。

楽曲はバンジョー、マンドリンを使用したカントリー調で、牧歌的ながらも力強さがあります。歌詞カードにはブロマイド写真が封入されていたのですが、それがポーズを決めているようないないような、中途半端な感じなところがいいです。

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ちなみにカラバオは「カラバオデーン」という、バンドのロゴと同じ水牛の頭蓋骨がトレードマークとなった栄養ドリンクもプロデュースしていて、こんな感じでコンビニなどで売られています。

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今回の参考資料

いしいこうた

いしいこうた

1988年生まれ。編集者。Webマガジンの編集などを経て2013年3月より意味もなくバンコクへ引っ越す。編著書に『GIF BOOK』(BNN新社)など。環ROY『ワンダフル』MVには5秒間タイっぽい映像を混ぜておきました。



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