8:バンコクへ行ってみた

音楽からとんでみる/蓮沼執太 by 編集部 2012/06/19

5月上旬にタイ・バンコクへ行ってきた。昨年の夏からいくつものプロジェクトが絶え間なく引き続いていて、まったく休みが取れなかった。なので今回の旅は現地で仕事は一切しないというルールを設けて航空券を買ったのだった。

深夜の羽田空港に1人、約6時間のフライトを経て、バンコク早朝5時にスワンナプーム国際空港へ到着した。そのままタクシーに乗り込み、友人が取ってくれたマンションへ直行する。気温は朝だというのに35度を超えている。暑い。蒸している。この到着がたまたま日曜日ということもありサンデイ・マーケットへ行ってみる。これは毎週日曜日だけ開かれる大きなマーケット。上野のアメ横のような雰囲気から代官山の雑貨屋みたいなお店まで、何もかもがごった煮返す勢いがある。着いてすぐ、色彩や音というよりも自分に強くショックを与えたのは「ニオイ」だった。街のいたる所で食べ物を販売する屋台があったり、毎日の気温の高さから発生する「ニオイ」があるのかもしれないが、「くさい」や「かおり」という形容ではなく、強い日差しと湿度と人間が生活してアフォードされる空気そのものがそこにはあり「ニオイ」となって表れているように僕には感じた。

 

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初日の夜は数日前までバンコクで公演を行っていたカンパニー『快快』のメンバーと合流した。メンバーやスタッフ・クルー総勢20名近くの人数を引き連れてナイト・マーケットへ。このマーケットもその名のとおり、日曜の夜しか開催されない市場。とても大きい会場で、その雰囲気は横浜の赤レンガ倉庫に近い。深夜にもかかわらず多くの屋台があり、屋外に広げられたテーブルで食事をしたり大声で話していたりと、むき出しのエネルギーを感じた。どこか自分にはないパワーを人々から受ける。僕もそんな屋台に混じってバンコクの麦酒『SHINGA BEER』をいただいた。今日行ってきた2つのマーケットでは特に買い物はせず、ただただ歩いて町や人を観察して食事を楽しむ1日となった。観光が苦手な自分にとっては、その土地をひたすら歩いて移り変わる風景をみたり、変ちくりんなところを探したりするほうがやっぱり自分らしい旅だな、と滞在の初日で思った。

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ところで、3月11日にアルバム『CC OO』ツアーのために山口情報芸術センターで公演を行った。東京から山口へ向かっている新幹線の中で同行していた僕のアンサンブルのメンバーでもあるイトケンさんと旅行の話をしていた。イトケンさんはとにかくタイでマッサージによく行くらしい。自分が5月にバンコクへ旅行するという話から、タイについていろいろと会話が盛り上がっていた。そんなイトケンさんからツアーを終えてしばらく経ったある日「バンコクへ旅行いきます!」といった内容のメールが届いた。バカンスのようだ。訊ねてみると僕が行く日程とほぼ同じ日ということがわかった。近しい仲間が同時に違う国で集合するというのは、街で偶然友人に会うような朴訥な嬉しさがあって、僕はとても好きだ。

そんなイトケンさんと現地で合流し、おすすめのタイ式マッサージに連れて行ってもらった。普段マッサージを受けない僕にとっては俄然好奇心がわく。場所に着いた。そこは旅館のような、集合住宅のような建物の中にある。まずは足を洗い、個室に連れて行かれ、ベテランの雰囲気をまとったおばさんによるマッサージが始まる。あっという間の2時間がすぎた。心地よかった。熱帯のような昼間の気温の中で、マッサージ上がりの体は清々しく感じられて、その土地環境や習慣は必ずどこかの結びつきがあるものなのだな、と思ったりもした。とても快適。
この日はそのままイトケンさんと共に、快快チームが部屋を借りている『スーパーノーマル|supernormal』(http://www.sprnormal.blogspot.jp/)というデザインチームの事務所/スタジオへ行った。そこではプライベイトなバンコクさようならパーティが開かれていた。カンパニーのメンバーや東京からも友人が来ていたり、バンコクで活躍するペインターやアーティストや音楽家、キュレーターまで多くの人がパーティを楽しんでいた。野外でのパーティはバンコクくらいの湿気が強いところによく合う気がする。僕は途中でパーティを離れ帰ったが、彼らは朝まで楽しんでいたようだ。

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僕が宿泊していたマンションはネット環境があまりよくなかったこともあり、滞在中はPCなどほとんど開かず、日本からのメールも満足にはお返事することもできなかった。毎日昼間から燦々と照りつける日差しのせいでとにかく暑い。人間も(動物も)動き出すのは夕方からというのがライフサイクル。犬は昼間はバタッと倒れるように寝ており、夕方からやっと元気に鳴き出したりする。そんな僕ものんびりお昼前に起床し、ゆっくりブランチをとって、やっと街に出かけるのは日が落ちかけるとき。

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このマイペースな滞在をしていたら、すぐに帰国の日となる。出発は夜中である。深夜のタクシーでスワンナプーム国際空港へ戻る。東京に到着するのは朝の5時予定。行きと同じような境遇である。帰ったその日までに、音楽の制作を終わらせるプロジェクト1つと、週末に控える上野公園水上音楽堂での音楽フェスティバル『道との遭遇2』へのサウンド・リハーサルにやっと参加することになる。
帰りのフライトで深夜にウトウトとしながらも、徐々に頭と体を東京時間のサイクルへ切り替えている自分がいるのがよくわかった。さて、次回タイへ行くことがあれば、バンコクの都会を離れてより北の地方へ行ってみたいと思う。

蓮沼執太

蓮沼執太 1983年東京都生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科研究生修了。音楽作品のリリース、蓮沼執太フィル/チームを組織して国内外でのコンサート公演、コミッションワーク、他ジャンルとのコラボレーションを多数制作する。音楽祭『ミュージック・トゥデイ』を企画・構成をする。主な個展に『音楽からとんでみる3|have a go at flying from music part 3』(2011年 ブルームバーグ・パヴィリオン|東京都現代美術館)、『音的|soundlike』(2013年 アサヒ・アートスクエア)。舞台作品に『TIME』(2012年 神奈川芸術劇場、国立新美術館)、音楽アルバムに4枚組CD『CC OO|シーシーウー』(2012年 HEADZ / UNKNOWNMIX)。 http://www.shutahasunuma.com/

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