4:植物と音楽のダイアローグ

音楽からとんでみる/蓮沼執太 by 蓮沼執太 2011/11/01

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横浜の馬車道にあるヨコハマ創造都市センター(YCC)にて、ヨコハマトリエンナーレ2011『OUR MAGIC HOUR』の特別イヴェントに出演した。

場のYCCには『ピーター・コフィン MUSIC FOR PLANTS』という、温室に入っている植物のために音楽を流す、というインスタレーションの作品が展示されている。展示期間中、ほぼ隔週末に音楽家が演奏するプロジェクトのオファーを受けた。オープニング・パフォーマンスのBoredoms・EYEさんが出演し、OOIOO、ジム・オルークさん、大友良英さん、テニスコーツらが登場した。僕らは10月1日に出演した。

イヴェント当日。僕は少し早めに横浜へ向かった。PCMレコーダーを手に持ち、みなとみらいを歩きながら環境録音をしたのだ。というのも、温室にいる植物はコフィンの作品の一部でもあって、おそらくずっと音楽とYCCの環境音を聴いて育っているわけだ。だから、横浜周辺の音を聴いてもらうことによって植物に散歩しているような感覚を得てもらう、というアイデアを思いついた。

藤幡正樹氏と銅金裕司氏の共作に『植物歩行訓練』(2007)という作品がある。動く機械の上に小さなテラスを作り、そこに植物が乗っている。機械が動くことにより、前面に映し出されている植物園の映像とリンクして、植物が植物園を実際に動いているかのように錯覚させる仕組みを持った作品だ。植物には人間の脳波を測るセンサーを付け、どのような反応があるかを見ることもできる。
この作品は、”僕たち生物と植物の間には『対話/コミュニケーション』は存在するのだろうか。何らかの交換がされているのだろうか。かすかにせよ、植物と僕たちは繋がりがあるのではないか”という希望から生まれた作品であると思う。

僕が考えたのも、この思考の延長だった。ピーター・コフィンが考える”音楽を聴くことによって植物が育つかもしれない”、という想像は、シンプルに、音楽と植物のダイアローグ(対話)の探求だと考えてみた。その結果のひとつが、まず僕の音楽から「横浜の音を聴かせてあげたい」という考えだった。

の日のアンサンブルのメンバーは、detune.のエンジニア石塚周太、ドラムと電子音にitoken、ユーフォニウム/ディジュリドゥ/バードコールに権藤知彦、サックスに大谷能生、PAミキシングに葛西敏彦、僕は温室に最初からセットしてあったチープなカシオのシンセサーザーとPCMレコーダーで環境音とグリッチノイズを出力した。
狭い温室に大人5人が入って演奏した。その光景だけ見ても十分に可笑しい。
公演内容は50分1曲の大きな楽曲だ。僕の初期音源からの新しい解釈で演奏したものから、管楽器との即興とアンサンブル、後半は僕のレパートリーから『Niagara Shower 311』『wannapunch! – Discover Tokyo』を演奏した。

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パフォーマンス中、YCCの会場が人でいっぱいになるほどたくさんのオーディエンスが駆けつけてくれた。
自分は音楽をするとき、何に向かって、どこに繋がろうとしているのか、どんなダイアローグを求めているのか、という根源的なことを丁寧に考えてみる機会にもなった。

この機会をくださった横浜美術館 館長の逢坂恵理子さん、学芸員の片多祐子さんに感謝します。

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Peter Coffin
“Untitled (Greenhouse)”

Performance view at Yokohama Triennale 2011 Courtesy the artist
Photo: KATO Ken
Photo Courtesy of Organizing Committee for Yokohama Triennale

蓮沼執太 2011年10月1日
『ヨコハマトリエンナーレ2011 MUSIC FOR PLANTS at YCC』

  • 蓮沼執太:Key and Electronics
  • 石塚周太:Electric Guitar
  • イトケン:Drums and Electronics
  • 大谷能生:Saxophone and Birdcall
  • 権藤知彦:Euphonium, Didgeridoo and Birdcall

蓮沼執太

蓮沼執太 1983年東京都生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科研究生修了。音楽作品のリリース、蓮沼執太フィル/チームを組織して国内外でのコンサート公演、コミッションワーク、他ジャンルとのコラボレーションを多数制作する。音楽祭『ミュージック・トゥデイ』を企画・構成をする。主な個展に『音楽からとんでみる3|have a go at flying from music part 3』(2011年 ブルームバーグ・パヴィリオン|東京都現代美術館)、『音的|soundlike』(2013年 アサヒ・アートスクエア)。舞台作品に『TIME』(2012年 神奈川芸術劇場、国立新美術館)、音楽アルバムに4枚組CD『CC OO|シーシーウー』(2012年 HEADZ / UNKNOWNMIX)。 http://www.shutahasunuma.com/

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