3:時間と音楽がデリケートに関係する

音楽からとんでみる/蓮沼執太 by 蓮沼執太 2011/09/26

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山口情報芸術センター(YCAM)での公演を終えた新幹線の車内で、この文章を書いている。

回の公演で3回目のYCAM。
はじめて訪れたのは、パフォーマンス・カンパニー快快(faifai)の公演だ。音楽を担当した『Y時のはなし』上演、その公演のイヴェントとして、コンピュータ1台でのソロライヴをさせていただいた。2回目は、YCAMで行われているプロジェクト、ライブラリーラジオ・プログラムの一環でサウンド制作のワークショップを行った。
そして、今回は《sound tectonics #10》のライヴ公演のため。

出演に黒川良一さん、evalaさん。黒川さんとは2010年の末、ラフォーレミュージアム原宿で行われた『HARAJUKU PERFORMANCE+ 2010』以来、そしてevalaさんとは今年のリキッドルームでのイヴェントで、渋谷慶一郎さんとのデュオ『ATAK Dance Hall』以来の共演だ。

夏の初めに、YCAMチーフ・キュレーターの阿部一直さんが僕の携帯に連絡をくださった。内容は、黒川さんとevalaさんのサウンド・インスタレーション展示のオープニングイヴェントで僕に何か公演ができないか?というオファー。
阿部さんといえば、YCAMのデスクに僕のライヴアルバム『wannapunch!』のポスターを貼っているのを偶然発見したという嬉しい記憶もある。僕自身もdumbtypeの活動やメディアアートを阿部さんを通して体験し、鑑賞してきた部分も多い。そんな背景から、YCAMという世界に通用する高い技術環境で、生演奏のアンサンブルを通常のライヴ公演とは違った舞台構成でパフォーマンスしたいと考えた。

阿部さんと話した結果、YCAMの中で最も広いstudioAにおいて、空間的に演奏者を配置し、複数のスピーカーを四隅にセットする音環境を作ることに決まった。

このスペースに演奏者を配置していくステージのことを僕は《島ステージ》と呼んでいる。特殊な舞台。このチャレンジングな演出は、東京でも何度か自身の公演で構想を練っていたが、さまざまなファクターが影響し合い、なかなか実現ができなかった。

今回のメンバーは、蓮沼執太フィルという10名のアンサンブルのメンバーから選んだ、Jimanica、detune.の石塚周太、木下美紗都、権藤知彦、蓮沼執太の5名。ドラム、ギター、ヴォーカル、ユーフォニウム、鍵盤、という音の構造も質感もシンプルに届くアレンジメントにした。

ステージは、オーディエンスが空間を歩きながら聴くスタイルをとっている。見映えが良く感じるかもしれないが、出力される音たちを扱うのがとてもデリケートである。
そもそも通常のコンサート会場では、中央を基準にして、空間に音を広げていく音響システムが多い。それに対してこの《島ステージ》は、会場のどこにいても共有できる音響ポイントは存在しない。つまり全員が等しいタイミングで同じ音を体験できないことになる。即興音楽や音をマテリアルとして扱うような音楽表現の場合、このようなセッティングがその空間とマッチして、良い反応を起こす事が多い。
僕のアンサンブルはとても”音楽的な”音楽であり、ストラクチャーも複雑な部分が多いため、ハードルの高い試みである。だけど、やはり、挑戦したいのである。オーディエンスは会場、空間を動くことにより、より知覚を集中をさせる。音楽の演奏に、音に、よりオーディエンスが入っていくことになるのだ。

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演奏者の身体を観る、演奏者の動きがそのまま音になる、それを聴く、四隅のスピーカーからミキシングされた全体のアンサンブルが出力される、空間的に配置された遠い島からの生音が聞こえてくる、それも聴く。起こっている出来事のすべてを体験することが、環境を作り上げることとなる。
一番大切なのは、PAエンジニア福原さんとYCAM音響の伊藤さんをはじめとする、高い信頼がを寄せられる素晴らしいYCAMスタッフの力が、アイデアをカタチにしてくれたことである。

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この日、チームでのアンサンブルと木下美紗都の曲を演奏し、計16曲、80分間のステージとなった。
近い将来に、またYCAMでライヴ・パフォーマンスや作品展示ができますように。

写真提供:山口情報芸術センター[YCAM]/撮影:丸尾隆一(YCAM)

演目(2011年9月17日 会場:山口情報芸術センター)

  1. wannapunch!
  2. Discover Tokyo
  3. Sunny Day in Saginomiya
  4. Triooo
  5. VOL
  6. YY
  7. アイドルサウンズ(木下美紗都)
  8. 彼方からの手紙(木下美紗都)
  9. ショートホープ(木下美紗都)
  10. とんだボール(木下美紗都)
  11. さらば(木下美紗都)
  12. Soul Osci
  13. Door of the Cosmos
  14. Shangfai
  15. Earphone & Headphone in my Head
  16. PLAY

蓮沼執太チーム are

蓮沼執太:ヴォーカル、鍵盤
石塚周太:ギター
木下美紗都:ヴォーカル、鍵盤
権藤知彦:ユーフォニウム
Jimanica:ドラム

蓮沼執太

蓮沼執太 1983年東京都生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科研究生修了。音楽作品のリリース、蓮沼執太フィル/チームを組織して国内外でのコンサート公演、コミッションワーク、他ジャンルとのコラボレーションを多数制作する。音楽祭『ミュージック・トゥデイ』を企画・構成をする。主な個展に『音楽からとんでみる3|have a go at flying from music part 3』(2011年 ブルームバーグ・パヴィリオン|東京都現代美術館)、『音的|soundlike』(2013年 アサヒ・アートスクエア)。舞台作品に『TIME』(2012年 神奈川芸術劇場、国立新美術館)、音楽アルバムに4枚組CD『CC OO|シーシーウー』(2012年 HEADZ / UNKNOWNMIX)。 http://www.shutahasunuma.com/

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