自由の中から産まれるアイディアを大事にする – Shing02(後編)

ネットと音楽、いまとこれから by ドミニク・チェン/photo: El-Curinho 2013/06/26

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Shing02さんの回、前半はインターネット上での自身の活動でどんな展開が生まれていったかを聞きました。後半は、創作活動への規制に対する考えや今後の展望を伺います。Shing02さんはリスナーも巻き込んでの「議論」が必要だと言います。

Q4. 現在、日本でも違法ダウンロードの刑事罰化や、TPP、著作権違反の非親告罪化など、作品の自由な2次利用に対して厳しくなりそうな動きが加速しています。Shing02さんはこれがどのように音楽家、そして音楽文化に影響を与えると考えていますか?

Shing02 自分はヒップホップ文化から来てるので、著作権に関して偉そうなことは言えません。
しかし、自由の中から産まれるアイディアと言うのは大事にしなければいけないし、どの産業においても、模倣の中から新しいモノは常に作られています。
インターネット自体、違法な領域を削除してしまえば、存在できないと言っても過言じゃないし、取り締まる方も現実的にどこを罰するかを考えてやっていると思います。この件については、親友のAndreas Johnsenが作った「Good Copy Bad Copy」と言うドキュメンタリーをオススメします。2007年の作品ですが、今でも本当に大きな著作権の現実と矛盾に焦点を当てています。

著作権保護と並んで風営法もそうですし、そもそも法律は何のためにあるのか、考え直す時期に来ていると思います。そのためにはアーティストだけでなく、リスナー個人も消費者として話し合いに参加することが重要ですね。

Q5. Shing02さんはこれまでもCCライセンスを作品に付したプロジェクトに参加されてきました(Stop-Rokkasho.org、音景2008、INTO INFINITYなど)が、CCライセンスに対してミュージシャンとしてどのような意見を持っていますか?

Shing02 CCに関しては僕もそこまで詳しくないんですが、まずはライセンスについての知識をもっと広めるところから始めた方がいいと思いますし、それが過去の物、新しい物に対してどのように適用され、どのようなメリットが産まれるのか、これまでの適用例などをワークショップなどを通じてエデュケーションして欲しいですね! 実際にそのような教材も沢山あるのかもしれませんが、その存在もちゃんと知られてないのではないでしょうか?
もっと認識が広まってから、みんなで議論して改善点などを話し合っていければいいと思います。

Q6. ご自身の創作をさらに豊かにする新しいネットの技術を想像するとしたら、それはどんな機能や役割を持つものですか?

Shing02 すでにコンセプトも技術も存在するとは思うんですが、ネットを介して同じセッションをリアルタイムでいじることが可能になればもっとおもしろいと思います。
PhotoshopやIllustratorで同じ画像を編集したり、ProToolsやLIVEで同時に制作をしたり……もちろん操作のタイムラグなど課題はありますが、同じデスクトップでタスクの順番をマネージしながら加工していけるプラットフォーム(セキュリティやウィンドウの表示管理を含めて)が普及したら、楽だと思いますね。

Q7. 現在の日本の10代、20代の若い音楽家や音楽家を目指す人たちにShing02さんが期待することを教えてください。

Shing02 期待することと言えば、やはり個性を大事にすること
ジャンルや国境に捕われることなく、自分の好きな事を好きなようにやって、どんどん自分の渦を作っていってほしいです。

アーティスト個人がネットレーベルとしても機能するおもしろさ

2000年代前半から自身のサイト「e22.com」上で音楽だけではなくグラフィックや映像の情報発信を積極的に行ってきたshing02さんのお話からは、ライブとネットのつながりを作ることの大事さが伝わってきました。未公開曲の先行フリーダウンロード配信1つを取っても、shing02さんはジャケットや歌詞の日英対訳付を付けるなど、デジタルな形式であってもリスナーが愛着を持てるかたちを追求してきました。また、自身だけではなく、イチオシする新人やコラボレーターの楽曲も配信するなど、個人アーティストの枠を超えて一種のネットレーベルとしても機能していると思います。こうした音楽を楽曲だけではなくトータルな表現方法としてネットを活用する活動の総体が、shing02というアーティストを中心とした多様なファンやクリエイターのコミュニティを下支えしてきたのだと改めて実感しました。

一方で、ネット上の情報の洪水という現状について、ただただ情報や楽曲の発信が増えれば状況が良くなるわけではないという現実的な問題意識にも言及されていますが、これは今日の多くのアーティストやプロデューサーが異口同音に語っていることでもあります。この点については、本連載で今後とも深掘りしていこうかと思いますし、関連してshing02さんから提案されたようなオープン・ライセンスの利活用のワークショップは今後クリエイティブ・コモンズのような運動にとっても重要な活動となるでしょう(※)。
また、ネット特有のコラボレーションのスピードが創造性を加速させるというポジティブな認識、特によりリアルタイムな協働制作のツールのイメージは、前回のBunさんのアイデアとも似ているのが興味深いですね。制作ツールの進化はまた、アーティストの支援だけではなく、アーティストとリスナーの境目を薄める方向にも働くでしょう。この点も次回以降から追求していきたいと思います。

※:前回インタビューさせて頂いたBunさんとクリエイティブ・コモンズ楽曲を使ったワークショップ対談を昨年12月に行いました:http://creativecommons.jp/cc10/ こちらも近く記事が公開される予定です。

Shing02

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カリフォルニアを拠点に活動するMC / プロデューサー。これまでに「絵夢詩ノススメ」「緑黄色人種」「400」「歪曲」を発表し、発案したfaderboardを取り入れたKosmic Renaissanceなど、国内外のコラボレーションをこなす。世界中のプロデューサーやミュージシャンとの競演を重ねながら、現代音楽としてのヒップホップを体現する。 2013年はミックスCD「FTTB4」「LIVE FROM ANNEN ANNEX」を発表し、DJ $HINとアルバム「1200 Ways」をリリースする他、日本語盤の「有事通信」も控えている。



ドミニク・チェン

ドミニク・チェン

1981年、東京生まれ、フランス国籍。博士(学際情報学)。NPO法人コモンスフィア(旧クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)理事。株式会社ディヴィデュアル共同創業取締役。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)非常勤講師。インターネットにおける自由文化(フリーカルチャー)の構築を目指すクリエイティブ・コモンズの活動を継続しながら、ウェブサービスやスマートフォン用アプリの開発を行っている。著書に『オープン化する創造の時代ー著作権を拡張するクリエイティブ・コモンズの方法論』、『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック クリエイティブ・コモンズによる創造の循環』がある。
Photo: Kenshu Shintsubo, 2013



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