聴く対象は人間であることを強く感じて音楽をつくるのが大切 – Fumitake Tamura(Bun)(後編)

ネットと音楽、いまとこれから by ドミニク・チェン 2013/05/29

前回に続いて、Fumitake Tamura(Bun)さんにお話を伺います。ネットにより、いままで難しかったコラボレーションが容易になったことで生まれた考えや未来の創作活動への展望、そして音楽を志す方への思いを聞きました。

Q4.音楽以外の作品から音楽的なインスピレーションを受けることはありますか?

Bun 音楽以外からインスピレーションを受けるほうが多いかもしれません。
映画などの映像作品の好きなシーンの雰囲気を自分の中で感じながら作業を進めたりすることも多いです。好きな写真集、建築やデザインを、昔はよく見ながら作っていました。彼らの作品から、作者がそのバックグラウンドにある時代性とどのように向き合って制作していたかなどを考えて、自分の気持ちを整理したり、律したりしています。
そういった物に出会うツールとして、インターネットは僕にとって重要です。
例えばamazonで購入しようとした写真集の関連書籍で出てきた本をすごく気に入ってしまったり、ネット上のマニアックな本屋さんで何気なく見つけた本が意外と良かったり。
実際の店舗で手に取って見るのも好きですが、情報を集めるスピード感はインターネットの方が圧倒的に早いと感じています。YouTubeの画面の右に出てくる関連動画なども、新しい音楽や、映画と出会うのにはいいチャンスだと思っています。これは本屋さんでの立ち読みの感覚かもしれませんね(笑)。

インターネットによってアーティストの作品の試聴も、ディスコグラフィーを検索することも、さまざまなサイトですぐにできるようになりました。音源を公開したり、YouTubeなどにPVを上げることで、よりたくさんの人に聞いてもらえるチャンスも増えました。また、音源がデータ化されて、合法・違法含めて 世界中に散らばっていくことで、作家の背景を語る要素が音のみになり、より音自体に耳を傾けるようになる、とも感じています。
今まではCDやレコードなどのモノであることが前提でしたが、それゆえに音の背景にあるストーリーを語れる要素がたくさんあったように思います。例えばジャケットの仕様、商品の状態、実店舗での展開のされかた、などなどです。それがデータになり、音楽ソフトにまとわりついていた余計な物が剥がされ、音そのものが俯瞰的に、並列に見えるようになったとも感じています。
それは、その音楽への愛着はどこにあったのか?という事も考えさせられる視点でした。

 音楽への愛着がどこにあるのか、というのはとても面白いテーマですね。

Bun 僕も、デジタル化されていく音源にどのように付加価値をつけていけば興味を持って頂けるのか日々考えています。先日、友人がカセットテープに一度録音した音源をデジタルでリリースしたのですが、その音源を最初聞いたとき、物としての手触りをなぜか感じました。デジタル化された音源そのものに、所有している実感を付加できればおもしろいですね。

Q5.ご自身の創作をさらに豊かにする新しいネットの技術を想像するとしたら、それはどんな機能や役割を持つものですか?

Bun 例えばコラボレーションするのに、音楽ソフトをクラウド上に置き、同時に作業を進められたら楽ですね。 相手が手を加えた部分が、遅延なくこちらのソフト上でも反映されたり。今でもDropBoxにLogicという音楽ソフトのファイルを置いて、DropBox上でお互いに作業し合っているアーティストはいますが、この方法ではリアルタイムでの作業と言うには、ちょっとタイムラグがありすぎますね (相手の変更した部分は、DropBox上のファイルが更新されるまで=更新したファイルがアップロードされるまで、こちらで更新を確認することはできません)。
隣に座って一緒に意見を交わしながら作業するように、離れていても作業ができるとさらにおもしろい物ができそうです。

Q6. 現在の日本の10代、20代の若い音楽家や音楽家を目指す人たちにBunさんが期待することがあれば教えてください。

Bun 僕自身にも言えることですが、やはり聞いてもらう対象は人間である事を強く感じることが大事だと思います。音楽は通常の生活にはなくても良い物です。それを必要な物にする、ということを意識するのが必要かと感じています。
僕が言うのもおこがましいですが、若い方達には、先人達が作ったルールを良い意味で振り切って、常に刺激のあるサウンドを制作して頂くことを期待しています。

 

ネットは、音楽へのインスピレーションを得るための「自然」な存在

Bunさんの音楽制作のプロセスについて色々とお聞きすることができましたが、印象的だったことはBunさんがインターネットを特殊なものとしてではなく、ごく自然な存在として捉えているということでした。それは音楽においてもジャンルという境界線を意識していないことだったり、音楽以外のことからインスピレーションを受けて音を作るというスタイルと地続きにある「自然」さのように感じました。別の言い方をすれば、価値中立な視点で技術と文化と冷静に向き合えるがゆえの自由さを感じます。

Bunさんの楽曲の魅力の源は、現代音楽の技法と理論、ヒップホップの深奥なアーカイブを身体に染み込ませた上で、さらに外部にあるもの、未知のものに対するオープンマインドさにあるのではないでしょうか。その開かれた意識は、コラボレーションという言葉も陳腐に感じさせるほど、多種多様な創造性と日々、会話をしているということの裏付けなのかもしれません。Fumitake Tamura(Bun)という結節点から今後も生まれてくる創作物への興味を改めてかき立てられたインタビューでした。

Fumitake Tamura(Bun)

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ザラついた音の質感を綿密に構成し、様々な音楽を横断していくアーティスト。
自身の作品はもとより、国内外のアーティストとの共作も多数手掛ける。
クリエイティビティーを高く掲げたレーベル "TAMURA" を設立し、常に挑戦的な作品のリリースを続けている。

Discography

2012年 アルバム「BIRD」を、坂本龍一のレーベル "commmons"より限定リリース。同アルバムが 米 Alpha pup Records より、ワールドワイドリリース。 2013年 最新アルバム「MINIMALISM」をロシアのレーベル"ritmo sportivo"よりリリース。

Live

2012年 SonarSound Tokyo 出演。
L.A, DublabでのLive、またL.Aの伝説的パーティー Low End Theoryへの出演。
2013年 香港でオーディオビジュアルアーティスト Kondo Tetsuと共演。
http://www.fumitaketamura.com

ドミニク・チェン

ドミニク・チェン

1981年、東京生まれ、フランス国籍。博士(学際情報学)。NPO法人コモンスフィア(旧クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)理事。株式会社ディヴィデュアル共同創業取締役。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)非常勤講師。インターネットにおける自由文化(フリーカルチャー)の構築を目指すクリエイティブ・コモンズの活動を継続しながら、ウェブサービスやスマートフォン用アプリの開発を行っている。著書に『オープン化する創造の時代ー著作権を拡張するクリエイティブ・コモンズの方法論』、『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック クリエイティブ・コモンズによる創造の循環』がある。
Photo: Kenshu Shintsubo, 2013



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