ステージ外でも新しいこと、実験的なことは常にやろうと思っている – Shing02(前編)

ネットと音楽、いまとこれから by ドミニク・チェン/photo: El-Curinho 2013/06/25

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今回は、日英のバイリンガルMCであり、映像のディレクター、プロダクト・デザイナー、音楽機器の発明家、そしてアクティビストとしても縦横無尽に活動されているShing02さんにお考えを伺うことができました。

この連載ではCCライセンスやその他の方法で作品をオープンなかたちで公開している現代の様々な音楽家に、インターネットと自身の音楽活動の関係について、そして筆者が気になる点についてインタビューしていきます。彼らがインターネットというコミュニケーションのインフラをどのように捉え、活用しているのかということをお聞きすることで、今後の音楽のオープン化の可能性や問題点を浮き彫りにできればと考えています。

Q1. Shing02さんは自身のウェブサイト「e22.com」で以前より楽曲の無償配信を行ってきました。これにより、どのような有益なフィードバックや展開が生まれましたか?

Shing02 そうですね、2000年くらいからはmp3を自分のサイトでダウンロードできるようにしてきました。ただmp3ファイルを載せるだけではなくて、ちゃんとジャケット画像をつけるようにしたり、歌詞や和訳をアップしたりしました。
ジャケはデータで無料でやり取りできる利点に加えて、少しでもCDやレコードを買った時の満足感を味わってほしかったから。リスナーの身になったら、PCや携帯で音楽を聞いてても、グラフィックがあった方が嬉しいですよね。そして対訳なども、ただの直訳ではなく、英語でしか表現できない歌詞でも、 日本語に直した時の世界感があるからつけています。
良い反応があると12インチをプレスする話が来たり、アカペラを乗せておけばリミックスが届いたり、そういう繋がりは増えていきましたね。アップした曲が認知されて、ライブなどで反応があるとネットの効率の良さを実感します。
これまでは、「Big City Lights」「」「Start Again」「G*A*M*E」「2005年」 などをプレスしました。しばらくアナログは出してませんが、ネットでアップしている「革命はテレビには映らない」、「愛密集」/「Champ Magnétique 」もプレスする企画中です。

自分としてはオマケ的に曲をアップしているだけなんですが、初めての人には何曲も聞けるのは良い機会だと思うんで、特に若い世代はそこでもっと興味を持ってくれる人もいますね。
世界中のリスナーから瞬時にコメントを貰えるのはおもしろいですし、公開を機会にミュージシャンと知り合う事も良くあります。
例えば、「Parallel Universe」のリミックスを作ったLASTorder君は僕がYouTubeでリミックスをしているのを聞いてオファーをしました。やはり無料で公開するにあたって、何事も時間がかかる人より、パッと動ける仲間は良いですね!

Q2. この10年間、インターネットとコンピュータ技術が世界に浸透した中で、Shing02さん自身の音楽制作に大きな影響や変化を与えたものは何ですか?

Shing02 ラップトップPCのクオリティとネットの回線の速度が向上したおかげで、インターフェースとマイクさえあれば、世界のどこにいても簡単に高音質の録音ができて、データのやり取りがしやすくなったので助かってます。あとは音楽と平行して、1人で映像も作りやすくなったのは、凄い飛躍だと思ってます。
一方で今はフリー・ダウンロードがあまりにも身近になり過ぎたために、ソーシャルネットワークの効率はどんどん下がっている感じがします。単純に考えて、フォロワーの数が多くても、それぞれがフォローする人が多いほど、自分のポストが残る可能性が下がるわけですから。
またサービスが淘汰されて行って、音楽を発表する方法も限られているわけですが(YouTube、Soundcloudなど)、他社に頼り過ぎても統計ばかりが気になってしまうので、自分のサイトで展開するプロジェクトは続けていきたいですね。ただ、そこまでWebに力を入れてる訳ではありません。ブログ以外は、サイトのレイアウトも15年近くいじってないのが自慢なくらいです(笑)。

Q3. 現在、最も注目している音楽の経済や文化に関する動向があれば教えてください。

Shing02 経済としては、やはりプロモーションと言うのが一番のカギになってくるわけですから、そこが誰しもチャレンジしなければならないと思います。
クロス・プロモーションなどを使って着実に伸ばしていくか、あるいはクラウド・ファンディングなどのアイディアか、それとも爆発的な口コミを狙うか、どれを使うのがいいのかはわからないので、はっきり言ってギャンブルですね
アーティストとしては、ライブやツアーが現場なので、そこでちゃんとオーディエンスにアピールできるかは大事にしてますけど、何もステージでやる曲がすべてではないので、新しいことであれば変なことや、実験的なものでも常にやろうと思ってます。
個人的には、もっと「モノ作り」もやっていこうと思って、自分の「世界」をブランドなどを通してこれまで以上にコラボレーションをして行く予定です。

次回に続く:「自由の中から産まれるアイディアを大事にする」(6月26日公開)

Shing02

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カリフォルニアを拠点に活動するMC / プロデューサー。これまでに「絵夢詩ノススメ」「緑黄色人種」「400」「歪曲」を発表し、発案したfaderboardを取り入れたKosmic Renaissanceなど、国内外のコラボレーションをこなす。世界中のプロデューサーやミュージシャンとの競演を重ねながら、現代音楽としてのヒップホップを体現する。 2013年はミックスCD「FTTB4」「LIVE FROM ANNEN ANNEX」を発表し、DJ $HINとアルバム「1200 Ways」をリリースする他、日本語盤の「有事通信」も控えている。



ドミニク・チェン

ドミニク・チェン

1981年、東京生まれ、フランス国籍。博士(学際情報学)。NPO法人コモンスフィア(旧クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)理事。株式会社ディヴィデュアル共同創業取締役。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)非常勤講師。インターネットにおける自由文化(フリーカルチャー)の構築を目指すクリエイティブ・コモンズの活動を継続しながら、ウェブサービスやスマートフォン用アプリの開発を行っている。著書に『オープン化する創造の時代ー著作権を拡張するクリエイティブ・コモンズの方法論』、『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック クリエイティブ・コモンズによる創造の循環』がある。
Photo: Kenshu Shintsubo, 2013



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