第30回:山口ゼミスペシャル座談会:「2016年最新! DAWソフトを使いこなせ! ~あなたに合うDAWって?~」レポート

WEB版 職業作曲家への道 by テキスト:編集部 2016/03/14

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プロの創作の秘密を伺っていくこのWEB連載、今回は趣向を変えて山口哲一氏主宰の作曲家養成講座「山口ゼミ」で行なわれた座談会の模様をお届けしよう。クリエイターチームCWFのメンバーが浅田祐介氏、藤本健氏というDTM/DAWの巨星と交えたリアルな会話は、多くの作家志望者の参考になるはずだ。

「山口ゼミ」とは、プロデューサーの山口哲一氏が主宰するプロ作曲家養成のための少人数精鋭講座。2013年1月にスタートし、既に100名以上の卒業生が誕生し、卒業生のみから成るCo-Writing Farmというクリエイターチームを形成し、数多くの作品を世に送り出している。

そんな山口ゼミではさる2016年2月6日に、スペシャル座談会「2016年最新!DAWソフトを使いこなせ!~あなたに合うDAWって?~」を開催した(会場:東京コンテンツプロデューサーズ・ラボ)。ゼミ生・卒業生対象のクローズドなイベントながら、ゲストにサウンドプロデューサーの浅田祐介氏、DTMステーションの藤本健氏が登壇し、貴重な意見交換が行なわれた。せっかくなので、その様子を少しだけお見せしていきたい。

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まずは会場でのDAWシェア調査

座談会に参加したのは、司会進行の小谷哲典氏、そしてパネリストの瀧口系太、no_my、永野小織のCWFメンバー各氏に加え、先述のように浅田祐介氏、藤本健氏という豪華な布陣。浅田氏は山口ゼミのフェローとして、惜しげも無くDTMテクニックを披露するなど、同ゼミとの関係が深い。またゼミ生へのアンケートでは、情報の入手先サイトとしてDTMステーションがトップだったということもあり、藤本氏の参加となったようだ。一方パネリストは、作曲家のno_my氏、トラックメイカーの瀧口氏、DAWが苦手な永野氏という、バラエティに富んだ布陣となった。

一通りの挨拶の後、始まったのはDAWシェア調査。会場に集ったゼミ生・卒業生に、挙手で「いまメインで使用しているDAWソフト」を確認するというものだ。結果は、やはりCubaseユーザーが一番多く、続いてLogicがランクイン、あとはかなりバラバラというものであった。ちなみに藤本氏によれば、2015年にDTMステーションで行なったアンケートでは、Cubase(25.8%)、Sonar(15.2%)、Logic(14.5%)、Studio One(13%)……という順位だったとのこと。浅田氏が愛用するStudio Oneが、急伸している現状が伺えた。ここで、登壇された方々の使用DAWソフトの話になったが、no_my氏:Cubase、瀧口氏、Studio One、永野氏:Pro Toolsということで、制作環境は各人各様ということが伺えて興味深かった。

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左からパネリストの永野小織、瀧口系太、no-myのCWFメンバー各氏、そしてゲストの藤本健、浅田祐介両氏を挾み、司会の小谷哲典氏(CWFメンバー)

それぞれのDAW事情、盛り上がるDTM懐古話

こうした前提をもとに、いよいよ座談会が開始となった。司会の小谷氏(Cubaseユーザー)がDAWの乗り換えを考えていることもあり、各ソフトのメリット/デメリットを討議しようと考えたという個人的な理由が、今回の座談会の発端になったこともここで明かされた。

「既にある程度の進化を遂げた各ソフトには、スペックに大きな差異は無い」(藤本氏)としながらも、やはり実際の使用法を話していくと、それぞれに個性のあることが分かってくる。

浅田「Studio Oneはとにかく音が良くて、使うようになったんですよね」

藤本「でもCubaseなんかに比べると、MIDIの機能が弱くないですか?」

浅田「確かにそうですけど、僕の場合は手弾きも多いので、そんなにステップ入力も使わないんですよ。そう考えると、手弾きをエディットするので十分だったりする。まあ、ステップ入力はできるようになったんですけど」

藤本「機能が横並びになったとはいえ、やはり打ち込み派なのか手弾き派なのかで、使うDAWは変わってくるということですね」

などなど、実際に使用しているユーザーならではの、リアルな話が続く。

また登壇者の中には、LiveやFL Studio、Bitwig Studioなどのループやダンスミュージックに強い系DAWへの興味も多く見られた。いわゆる「正統的な」ツールではないだけに、J-POPへの導入は幾つかのハードルもあるようだが(変拍子でいかに使うかなど)、「CubaseとLiveをReWireでつないで、エフェクティブな音をLiveで生成して、Cubaseのトラックに録音する」というような実践的な使い方も紹介され、印象的であった(これは会場にいたhanawaya氏の発言)。

このほか、Cubaseのコードトラックという機能が便利だ、Studio OneのプレイバックサンプラーSample Oneがすごい、IZOTOPE Vinylはフリーでダウンロードできる、DAWによって音の違いがあるなどなど、さまざまな意見が交換された。また藤本、浅田両氏によるDTM懐古話もおかしく、会場の笑いを誘うなど、終始リラックスしたムードであった。

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コーライティングでのDAW使用法

山口ゼミで推奨されている、コーライティングという共同作業での作曲におけるDAWの使い方も、同ゼミの座談会ならではのトピックと言えるだろう。

プラグインやセッションファイルの構成などがそれぞれ違うため、no_my氏曰く「同じソフト同士でも、結局のところはMIDIファイルとMP3(ラフミックス)に落ち着く」とのこと。瀧口氏も、「トップライナーとメロディメイカーというはっきりした役割でやることが多いので、メロのMIDIをもらって作る感じ。やりとりはFacebookのメッセージで」とのこと。ファーストデモをコーライトすることが多いという永野氏も、同様とのこと。クラウド上でファイルを共有するようなことは、まだあまり現実的ではないようだ。

そのほか、ハイレゾのこと、マキシマイザーのこと、納品のマナーなど、短い時間ながら活発な議論が交わされた。ここにはとても書けない話も多かったが、本音ベースでDAWのことを語っている諸氏の表情はとても楽しげであった。クリエイターのインキュベーションが難しいと言われる昨今、同じ目的意識を持った仲間と切磋琢磨していく場として、そしてプロのナマの声を聞く場として、山口ゼミの存在価値はますます上がっていきそうだ。

山口哲一(やまぐち・のりかず)

(株)バグ・コーポレーション代表取締役

『デジタルコンテンツ白書』(経済産業省監修)編集委員

音楽プロデューサー、コンテンツビジネス・エバンジェリスト。

国際基督教大(ICU)高校卒。早稲田大学在学中から音楽のプロデュースに関わり、中退。1989年、株式会社バグ・コーポレーションを設立。「SION」「村上”ポンタ”秀一」「こだまさおり」のマネージメントや、「東京エスムジカ」「ピストルバルブ」「Sweet Vacation」などの個性的なアーティストを企画しデビューさせる。プロデュースのテーマに、新テクノロジー活用、グローバルな視点、異業種コラボレーションを掲げ、音楽ビジネスを実践している。2010年頃から著作活動を始め、国内外の音楽ビジネス状況の知見を活かし、音楽(コンテンツ)とITに関する提言を続けている。エンタメ系スタートアップを対象としたアワード「START ME UP AWARDS」、ミュージシャンが参加するハッカソンとコーライティングセッションを同時開催する「クリエイターズキャンプ真鶴」をオーガナイズ。超実践型 作曲家育成セミナー「山口ゼミ」で音楽家の育成を、「ニューミドルマン養成講座」では、デジタル時代に対応した音楽ビジネスを担う人材の育成を行っている。2005年から2013年まで一般社団法人日本音楽制作者連盟の理事を、2011年から2012年に公益社団法人日本芸能実演団体協議会(芸団協)の理事を務める。

著書多数、最新刊は、全分野のコンテンツビジネスをIT視点でビジネスパーソンに説く『10人に小さな発見を与えれば1000万人が動き出す。』(ローソンHMVエンタテイメント刊)、『新時代ミュージックビジネス最終講義』(弊社刊)。

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