第22回:THE BIG PARADEセッション「21世紀に音楽を売るためのクリエイティブ」レポート

WEB版 職業作曲家への道 by テキスト:編集部 2014/10/24

THE BIG PARADEとは、トークセッション、ショーケースライブ、クラブイベントなどによる複合イベントで、2014年9月13日〜15日にかけて、東京・代官山エリアを舞台に開催された。数多くの興味深い企画が目白押しだったが、ここでは初日に行われた中村洋基氏と本山敬一氏によるセッションの模様紹介しよう。

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2014年9月13日、デジタル時代の新型ミュージックフェスティバルTHE BIG PARADE 2014の一演目として、広告をフィールドに活動するクリエイター2名によるトークセッションが行われた。

テーマは「21世紀に音楽を売るためのクリエイティブ」。ネットで音楽が無料で聴ける時代に、「クリエイティブ」の力で音楽を売ることができるのか? Digital Stageにてプレゼンバトル形式で行われた本セッションの内容をレポートする。

直接作曲家には関係の無い話題のようだが、広告フィールドのクリエイターによる予想外の方向からのプレゼンは、きっと創作意欲を刺激することだろう。頭を柔らかくするためにも、ぜひチェックしてみてほしい。

プレゼンバトル形式でのセッション

まずは両者の自己紹介から。

株式会社PARTYの代表を務める中村洋基氏は、トヨタのキャンペーン「TOYOTOWN」や3Dプリンターによる家族フィギュアの作成などを手がけ、音楽関連ではレディー・ガガの新譜プロモーションのための等身大試聴機「GAGADOLL」などを制作。好きなアーティストは、たま、アンダーワールド。

一方、株式会社SIX代表の本山敬一氏は、Google Mapsとポケモンのコラボ「Pokemon Challenge」、PlayStation 4の日本ローンチプロモーションなどを手がけるほか、音楽に関するものではGoogle Chrome初音ミク編などを担当。好きなアーティストは、大森靖子、amazarashi、カニエ・ウエスト。

広告ベースで仕事をしている両者が、「21世紀にクリエイティブで音楽を売る」ことを模索するこのセッションは、3つのテーマに沿った両者のプレゼンバトル形式で行われた。テーマは3つ。

  1. Viral Video 「口コミ」を広げるMVのアイデア
  2. Value Change 音楽に別の価値を付加するアイデア
  3. Live Experience より深いライブ体験を与えるアイデア

果たして異業種のクリエイターがどのような音楽プロモーションのアイデアを出してくれるのか? 進行も兼ねた中村氏によれば、「音楽愛」に溢れた本山氏と、「音楽愛」がそれほどない中村氏。両者の違いにも注目しながら、プレゼン内容を見ていただきたい。

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本山敬一氏(L)、中村洋基氏(R)

 01 Viral Video 「口コミ」を広げるMVのアイデア

  • 本人以外が歌うMVを自動生成(中村)

まず中村氏は、AKB48がファンによるマネを禁止するどころか奨励・誘発したこと、またOASISが新譜リリース前に、ニューヨーク中のストリートミュージシャンに歌わせるプロモーションを展開したことを踏まえて、「HUMAN MUSIC PLAYER」なるアイデアを提案。これは本物のアーティストの楽曲を流出させず、「本物以外の人が、本物の曲を聴きながら歌う」映像をつなぎ合わせ、いくつもの偽MVを自動生成する仕組み。

この「マネを誘発する仕組み」により、本物の楽曲が一度も聞こえてこないのに、有名な人や知り合いが多数出演しているいくつものMVを目にすることになって「本物への飢餓感」が生まれるというのが中村氏の説明だ。

  • ワゴンセールのCDをリサイクル(本山)

続いて本山氏は、MV制作においては、インサイトの強度と数──つまりいくつ映像の中に「見たい」欲求を重ねられるかが肝心と主張。想定ジャンルを「ネガティブロック」として、メジャーの象徴である朽ちていくワゴンセールのCDをスクラップ&ビルドする案をプレゼンした。

ワゴンセールのCDを買い占める→ベルトコンベアで流す→メディアシュレッダーが砕く→砕かれたCDから歌詞を自動生成という、「厨二病」ともとれるアンチメジャー層に絞って「見たい」と思わせることを突き詰めたアイデアと言える。

 02 Value Change 音楽に別の価値を付加するアイデア

  • タトゥーになる歌詞カード(本山)

子供を泣きやませる効果を入れたロッテのお菓子「カフカ」の映像が、1,000万再生を記録していることを話題に挙げた本山氏は、「ユースフル」な価値転換を軸に、タトゥーになる歌詞カードを提案。想定ジャンルを「ハードコアパンク、ヘビーメタル」と断った上で、タトゥーはハードコアに欠かせないが、タトゥーを入れると温泉に入れない──だからこそ、歌詞を入れたタトゥーシールをCDのブックレットにすれば、手軽にミュージシャンとのエンゲージメントが生まれる、という案。ちなみに、ハードコアは意外とナード(オタク)が聴いているので、タトゥーを入れればライブでなめられないという補足もあった。

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  • クラウドソーシャルアイドル(中村)

中村氏は、「そもそもCDなんて売れない」ので、CD=専用再生端末が必要なWAVデータという役割を拡張。原点に戻って『ドラえもん』のような正しくコンテンツにスポンサードされる仕組みを理想とすべき、と前置きして、世界初のクラウドソーシャルアイドル「SBY4∞」を発案。

アプリ形式で、曲が配信されてきたらユーザーが各々歌って送信すると、それらが勝手にミックスされて全員の合唱になり、それを販売するという。最後には『風の谷のナウシカ』の画像とともに「私たち人間は、増えすぎた」というキャッチフレーズが。

03 Live Experience より深いライブ体験を与えるアイデア

  • 一体感ボタン(中村)

ライブのアンコールで会場が一体感に包まれる──その体験をさらに強めるために中村氏が提案したのは、「一体感ボタン」。ライブ会場で観客全員がこのボタンが付いたスマホアプリを操作し、ボタンを押すとリアルタイムで数が増えるカウンターをステージに設置する。ただししばらくすると、数字の下に巨大なる分母が表示される。数字が分母の数になったら何かがあるはずと思わせるが、分母が大きすぎて到達しそうもない。そこでアプリの「MORE」を押すと、ボタンを押した数がお金で購入できるようになる──。とんでもない搾取アイデアだが、「握手券」以上の熱狂が生まれるかもしれない。

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  • ライブで音ゲー(本山)

こちらもライブの一体感を増強するアイデア。本山氏は、ライブで「にわかファン」が純度を下げているという個人的(?)な怒りから、ファンの熱狂度を数値化するために、リアルのライブで音ゲーをプレイする案をプレゼン。やはり観客全員がスマホを持ちアプリを操作するが、曲に合わせてスマホを「上に上げる」「回す」など実際の指示が表示され、それに従った観客が北朝鮮のマスゲームのような一糸乱れぬ動きとなり、圧倒的なスペクタクルを生むというアイデアだ。また、ゲームランキングを発表し、ランキング順に次回のライブで良い席が確保されるという厳しいルールもあり、ライブは弱肉強食の世界であることを強調した。

 21世紀に音楽を売るためにすべきこと

最後に両者から発表された「21世紀に音楽を売るためにすべきこと」は次の3つ。

  1. 世界初に挑戦する。
  2. デジタルの3大特性(インタラクティブ、ワールドワイド、リアルタイム)を生かす。
  3. 熱量を込める。努力する。

21世紀は莫大なバジェットを使ったキャンペーンだろうと、YouTubeの素人が撮った映像であろうと、ユーザーにとってすべてのコンテンツは等価である、だから玉石混交の無数のコンテンツに勝つクリエイティブを作らねればならない、という言葉でセッションは締められた。

今回のプレゼン内容は、実現可能かはともかく、既存の考えを打破するものということは間違いない。聴講者は両者のプレゼンに爆笑しつつ、クリエイティブの可能性と重要性を感じられたのではないだろうか。

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