第15回:「IZU Co-Writing Camp Vol.1」レポート!

WEB版 職業作曲家への道 by テキスト:編集部 2014/08/25

職業作曲家のインタビューをお届けしているこの連載だが、今回は新たな作曲手法として注目を集めている試み、コーライテイングキャンプの初(?)の国内事例をレポートしよう。

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欧米では既に浸透しているコーライティングキャンプだが、これはメロディメーカー、トラックメーカー、作詞家、アレンジャーなどが集結し、チーム分けを行なったのち、短時間で作曲をしていくというハッカソン的なイベントだ。共作=コーライティングが一般化している欧米では、新たな才能の発見の場として、音楽出版社の主催などにより、頻繁に行なわれているという。

このコーライティングキャンプが日本国内で、「IZU Co-Writing Camp Vol.1」として2014年5月5日〜6日にかけてキティ伊豆スタジオにて開催されたので、その詳細を見ていくことにしよう。

日本初?のコーライティングキャンプ

今回のコーライティングキャンプを主催したのは、CoWriting Farm。CoWriting Farmとは、『プロ直伝! 職業作曲家への道』の著作などでも知られる音楽プロデューサー、山口哲一氏のプロ作曲家育成セミナー“山口ゼミ”の卒業生のみが所属できる、コーライティングによる作曲のための組織だ。そのため、IZU Co-Writing Camp Vol.1ではオーガナイザーとして山口氏、チーフコーチとして山口ゼミ副塾長の伊藤涼氏が名を連ねている。

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会場となったキティ伊豆スタジオは、日本初の本格的なリゾートスタジオとして1977年12月に竣工以来、多数のヒット作を生み出してきたレジェンダリーな場所。宿泊施設も完備しており、NEVEコンソール、UREI 1176LN、1178、TELETRONIX LA-2A、EMT 140といったアウトボード類、そしてNEUMANN U47FETを始めとした貴重なマイク類を豊富に備えた、音楽を作るための聖地となっている。まさに、コーライティングキャンプには打ってつけのロケーションと言えるだろう。

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中庭から眺めたキティ伊豆スタジオ。最高のロケーションだ

DAY1 グループ分け〜目標設定

「IZU Co-Writing Camp Vol.1」に参加したのは、CoWriting Farmのメンバー18名。いずれも“山口ゼミ”を受講し、その後“山口ゼミextended”で実践的な指導を受けた、将来を嘱望される作曲家たちだ。

初日となる5月5日は、午前11時に現地集合となり、3人1組みでのグループ分けが発表に。そこで、各グループごとに目標を設定し、ワンハーフのデモを1曲作ることになった。締め切りは、翌6日の18時から始まる試聴会。約30時間という短い期間に集中して作曲に向き合うことで、どんな化学反応が起きるのかが、問われることになる。

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3人1組みでチーム分けをし、目標を設定

“山口ゼミ”の同じ釜の飯を食った仲同士とはいえ、3人1組みでの共同作業は、やはりいろいろ起こるもの。グループによっては、方向性が定まらずに、深夜まで打ち合わせを続けるケースも。宿に帰って、しっかり寝れたのは数名で、ほとんどが仮眠もしくは徹夜で朝を迎えたようだ。

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深夜にまで打ち合わせが及ぶグループも

DAY2 楽曲の作り込み

スタジオの宿舎と近所のペンションへの分宿。下の写真は、キティ伊豆スタジオでの賄いの朝食。寝不足の顔も多いが、朝ご飯は大切。迫る締め切りの緊張感に包まれつつも、仲間と食べる朝食は、やはり格別だ。この場では、下らない冗談に笑いが止まらない徹夜明けモードだった。

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さて、朝食後は早速制作の続きにとりかかることに。1人ノートPCに向かう者、生楽器のレコーディングをする者、手法はさまざまだが、キティ伊豆スタジオというぜいたくな環境を存分に使って、18時までのミックスアップを全員が目指す。

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ノートPCで1人制作に打ち込む

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キティ伊豆スタジオの設備でデモを録れるのは、貴重な経験!

コントロールルームでのプロエンジニアとの直のコミュニケーションも、この「IZU Co-Writing Camp」ならではかもしれない。プロデューサーやディレクターの存在を介さずに、直接エンジニアとやりとりすることは、後々大きな財産となるのではないだろうか?

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作曲者自身がプロデューサーとして判断を下していく

DAY2(続) いよいよ試聴会!

時の経つのは早いもの。気が付けば、あっという間に試聴がスタートする18時となっていた。ブースでのボーカル録音の順番が最後だったチームが、ミックスが終わらず、15分遅れたものの、なんとか全組が1曲のデモを作り上げた。18人がすし詰め状態のコントロールルームは、達成感と試聴会を迎える緊張感で一杯だ。

実際の楽曲に関しては、6曲が出来上がった。チーフコーチの伊藤涼氏によれば「全組が、他人に聴かせられるレベルのデモを作り上げたのは大きな収穫だった。何組かはこのままコンペに出したいクオリティだった。今後は喧嘩して完成しないチームが出てきても良いので、びっくりするような化学反応が起きたデモを聴いてみたい」とのことだ。

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コントロールルームに集合しての試聴会

まだ日本ではあまり実践されていないコーライティング(共作)という作曲手法だが、近年の欧米のヒット作のクレジットの長さを見れば、いかにコーライティングが一般化しているかが分かる。これは、トラックを作るのが得意な人、メロディを作るのが得意な人、詞を書くのが得意な人など、各人の突出した部分を化学反応させることで、1人では作り得なかった作品を生み出すというアプローチだ。このコーライティングを当たり前のものとする前提の上で、欧米ではコーライティングキャンプという試みが行なわれていることになる。

「IZU Co-Writing Camp Vol.1」は、そうした時代的な要請にこたえる形で開催された試みと言えるだろう。今回は“山口ゼミ”卒業生のみのクローズドなキャンプだったが、「今後は海外からの参加者も含めて、オープンな形で開催予定です」と山口氏は語っている。日本でもコーライティングという創作形式が根付くのは、そう遠くない未来なのだと期待したい。

■DATA

「IZU Co-Writing Camp Vol.1」

主催:CoWriting Farm

オーガナイザー:山口哲一

チーフコーチ:伊藤 涼

協力:キティ伊豆スタジオ

制作:MSMILE、TCPL(山口ゼミ)

(この項終了)

山口哲一(やまぐち・のりかず)

1964 年東京生まれ。(株)バグ・コーポレーション代表取締役。『デジタルコンテンツ白書』(経産省監修)編集委員。プロ作曲家育成「山口ゼミ」主宰。j-Pad Girlsプロデューサー。SION、村上“ポンタ”秀一など の実力派アーティストをマネージメント。東京エスムジカ、ピストルバルブ、Sweet Vacationなどの個性的なアーティストをプロデューサーとして企画し、デビューさせる。プロデュースのテーマに、ソーシャルメディア活用、グローバ ルな視点、異業種コラボレーションの3つを掲げている。2011年頃から著作活動も始める。2011年4月に『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ふくりゅうと共著/ダイヤモンド社)刊行。2012年9月に『ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略』(共著/小社)刊行。最新著作は2013年9月刊行の『世界を変える80年代生まれの起業家』(スペースシャワーブックス)

『プロ直伝! 職業作曲家への道』の詳細はこちら(リットーミュージック)

『ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略』の詳細はこちら(リットーミュージック)

『エンジニアが教えるボーカル・エフェクト・テクニック99』の詳細はこちら(リットーミュージック)

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