LOVE2:「LOVE」を使わずに募る想いを伝える方法

I LOVE YOUから始める英詩のレトリック by 中山美樹 2013/03/08

『I LOVE YOUから始める英詩のレトリック』、略して『LOVEレト』。欧米の新旧ヒット・ソングから隠れた名曲まで、特に印象的な愛の英詩を紹介するLOVEてんこ盛りなコラムの2回目はマルーン5の最新アルバム『オーヴァー・エクスポーズド』に収録の「デイライト」をピックアップ!

Maroon 5「Daylight」

マルーン5が自ら公式HPを通じて行った「DAY LIGHT PROJECT」によるPV。素材となる映像を世界各国のファンから投稿してもらい、集まった素材をマドンナやU2、レディー・ガガといったビッグネームたちとの仕事で知られるジョナス・アカーランド監督が映像化したもの。

一方こちらは、世界に平和や繋がりをもたらすことを目的とした「プレイング・フォー・チェンジ」というプロジェクトとコラボして制作されたバージョン。 人種、国境、文化、宗教を越えて音楽でつながろうというメッセージが込められているみたい。

この歌は、かつて愛着を持っていた対象への別れの歌。手放さなきゃいけない時がくるのを知っていても、実際にその時が訪れると「How did it come so fast?(どうしてこんなに早くやってくるわけ?)」と驚いてしまう。でも「When the daylight comes I’ll have to go(陽が登れば行かなきゃならない)」ものだから「But tonight, I’m gonna hold you so close(でも今夜は君をキツく抱きしめるよ)と。

う〜ん、これ、男女の別れをはじめ、いろんな別れの場面で使えそうなフレーズね。曲調によってはかなり未練タラタラな歌詞にも聞こえちゃうけど。

今回の注目フレーズは「I never wanted to stop because I don’t wanna start all over(やり直すのがイヤだから、一度もやめようと思わなかった)」と、その後に続く「I was afraid of the dark but it’s all that I want(前は暗闇が怖かったけど、今は欲しいのはその暗闇だけ)」。

ここでの「暗闇(the dark)」はこれからひとりきり(be on one’s own)で対峙する時間ともとらえられる。つまり、この歌の主人公はやり直すのが億劫で現状維持をしてきたけど、明日の陽の光の中でそれまでの状況にサヨナラして、その先が暗闇だろうと自分ひとりで頑張ってみる、と言っているとも解釈できるの。だからこの歌はただの男女のラブソングを越えるような、人生のあらゆる場面での「別れ」の歌として解釈できる余白を持っていると言えるわね。

この曲の特徴は、「LOVE」という単語が1度も出てこないところ。でも、幾つかのフレーズはもちろん男女のラブソングでも使えるわよ。「This is my last glance that will soon be memories(すぐに思い出に変わる僕の最後の眼差しがこれさ)」なんてクールな別れのセリフになるもの。

慣れ親しんで愛着を感じる状況を維持することも悪くはないわ。でもその状況に違和感を感じるのであれば、この曲のように明るくサヨナラして、新たな一歩を踏み出すことも時には大切よね。

中山美樹(Miki Nakayama)

ミュージシャンの取材に特化した通訳/翻訳というマニアックな仕事を1980年代終わりから続けている。これまで取材通訳、電話取材、インタビュー翻訳をしたアーティストは数知れず。歌詞対訳したアルバムも数多く、近年は日本人アーティストから歌詞英訳の依頼もしばしば舞い込み、レコーディング時の発音指導も行っている。その愛情あふれる通訳/翻訳でミュージシャン、ライター、編集者からの信頼も厚く、取材現場やライブ会場で仲良しミュージシャンとハグする姿がしばしば目撃される。書籍『ミック・カーン自伝』(リットーミュージック刊)の翻訳も行っている。

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