LOVE30:言葉を越えて……

I LOVE YOUから始める英詩のレトリック by 中山美樹 2014/04/26

欧米の新旧ヒット・ソングから隠れた名曲まで、特に印象的な英詞を紹介するLOVEいっぱいのコラム『LOVEレト』。30回目はEXTREMEの「More Than Words」。1990年リリースの2枚目のスタジオアルバム『Extreme II:Pornograffiti』から1991年にリリースされたシングル曲で、アメリカのチャートで初めて1位を獲得した大ヒット曲よ。アコースティック・ギターと歌というシンプルさゆえに心に染み込むパワーが倍増って感じなの。

「More Than Words」 by EXTREME

曲同様にシンプルなMV。曲が良ければムダな演出は要らないという見本のようなMVね。

 

この曲を作った理由を尋ねられたヌーノは「I love youが意味のない言葉になっているから」と答え、その理由をこう述べたらしいの。

“People use it so easily and so lightly that they think you can say that and fix everything, or you can say that and everything’s OK. Sometimes you have to do more and you have to show it—there are other ways to say ‘I love you.’”
(みんな、あまりにも簡単に、あまりにも気軽に「I love you」という言葉を使っているから、この言葉を言いさえすれば何でも解決できるとか、何でも大丈夫みたいになっている。時には言葉以上の行動をして、それをちゃんと見せないとダメなのさ。「I love you」と言う以外の方法があるんだよ。)

はい、ごもっともです、ヌーノさん! とは言え、21世紀になっても相変わらず「好きだ」すらちゃんと言わずに「気持ちを察してくれよ」タイプの男性が多い日本では、「言葉以上の愛情表現」なんて期待するだけムダという気も若干するけど。

……なんてグチはさておき、歌詞を見て行きましょう。

What would you do if my heart was torn in two
(僕の心が真っ二つに引き裂かれたら君はどうするの?)
More than words to show you feel
(言葉を越えたやり方で)
That your love for me is real
(君の愛が本物だと教えてくれるかい)

What would you say if I took those words away
(僕がその言葉を削除したら君は何と言うの?)
Then you couldn’t make things new
(だってもう何も新しくできないんだよ)
Just by saying “I love you”
(「愛している」って言うだけじゃ)

そして「僕が欲している言葉以上の愛情表現」は……

All you have to do is close your eyes
(やるべきことはひとつだけ その目を閉じて)
And just reach out your hands
(その手を伸ばして)
And touch me
(僕に触れて)
Hold me close, don’t ever let me go
(抱きしめて、絶対に離さないこと)

何をして欲しいのか、ちゃんと「僕の取り扱い方」を示している点が優しさだと思うわ。求めるものを示さないで「察してくれ」とか「空気を読め」と相手に強要するのはいただけないでしょ?

言わなくても伝わることもある。でも言わないと伝わらないこともある。歌詞のある楽曲は歌詞と音楽の相乗効果で作者の思いが伝わり、記憶に残るものになると思うの。言葉が伝えられない感情が音にこもっていれば、どんなにシンプルでも、人々の琴線に触れる良い楽曲になるはず。曲も愛も独りよがりはダメってことね。

中山美樹(Miki Nakayama)

ミュージシャンの取材に特化した通訳/翻訳というマニアックな仕事を1980年代終わりから続けている。これまで取材通訳、電話取材、インタビュー翻訳をしたアーティストは数知れず。歌詞対訳したアルバムも数多く、近年は日本人アーティストから歌詞英訳の依頼もしばしば舞い込み、レコーディング時の発音指導も行っている。その愛情あふれる通訳/翻訳でミュージシャン、ライター、編集者からの信頼も厚く、取材現場やライブ会場で仲良しミュージシャンとハグする姿がしばしば目撃される。書籍『ミック・カーン自伝』(リットーミュージック刊)の翻訳も行っている。

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