LOVE27:君の瞳を覗き込むと……

I LOVE YOUから始める英詩のレトリック by 中山美樹 2014/03/29

欧米の新旧ヒット・ソングから隠れた名曲まで、特に印象的な英詞を紹介するLOVEいっぱいのコラム『LOVE レト』。27回目はFIREHOUSEの「When I Look Into Your Eyes」。この曲は1992年6月発売の2枚目のスタジオ・アルバム『Hold Your Fire』収録で、ビルボードのアルバム・チャートに30週も居座った大ヒット・アルバムからの6枚目のシングル。聞いていて気持ちが良いほど「これぞ、王道!」といえるロック・バラッド曲よ。

「When I Look Into Your Eyes」 by FIREHOUSE

 

「I see forever when I look in your eyes」(君の瞳の奥に永遠が見える)で始まり、ラブソングの定番フレーズが続く「ラブソングのお手本」と言える歌詞なの。ソロ・ピアノで始まり、下記の歌詞の冒頭でギター・コードが加わり、最後のフレーズで他の楽器が入るというinstrumentationの流れも王道バラッドのそれ。

 

Here we are face to face(ここで顔と顔を向き合わせ)
Heart to heart(心と心を通わせる)
I want you to know we will never be apart(君に知って欲しい 絶対に離れないと)
Now I believe that wishes can come true(望みが叶うって信じているんだ)
‘Cause I see my whole world(だって僕には世界全部が見えるから)
I see only you(君しか見えないから)

「face to face」「heart to heart」の「〇〇 to 〇〇」は「to」を挟んで「〇〇」が向き合って調和するイメージね。相手が誰かハッキリさせたいなら「with 〜」と後ろに付ければOK。他には「eye to eye」(目と目を合わせる)という言い方もあるわ。ただ、「eye-to-eye」というようにワンワード化して副詞として使う場合には意味が「真心で」となるの。ハンムラビ法典(Hummurabi’s Code of Laws)の196番で有名な「eye for eye」(目には目を)と混同しないでね。

そして相手の目を見るとこんなことになる……

I can see how much I love you(僕がどれだけ君を好きなのか分かるし)
And it makes me realize(だから気付くんだよ)
I see all my dreams come true(僕の夢が全部叶うって)

これは「When I look into your eyes」をフックとして歌詞の中に入れ込むやり方。これを抜き出すと上のように「何をrealizeするのか」が分かるわけ。日本語詞の場合はフックとなる歌詞を外国語にして日本語詞の意味を浮き立たせる手法をよく使うけど、全編英語にしたいときにはこんな方法もアリよ。

「君の瞳の中に」とくると「how much you love me」が続くのが王道なのに、あえて「how much I love you」と「自分の愛情の深さが見える」としているあたりは、目はその人の感情を表す心の窓であり、それを見つめている相手の感情を映す鏡でもあると知っている粋なヒネリだと思うな。

 

「ロック・バラッドはこうでなくちゃ!」という安心&安定の1曲。多くの人の心を掴む曲を作るヒントがここにあるんじゃないかしら。

中山美樹(Miki Nakayama)

ミュージシャンの取材に特化した通訳/翻訳というマニアックな仕事を1980年代終わりから続けている。これまで取材通訳、電話取材、インタビュー翻訳をしたアーティストは数知れず。歌詞対訳したアルバムも数多く、近年は日本人アーティストから歌詞英訳の依頼もしばしば舞い込み、レコーディング時の発音指導も行っている。その愛情あふれる通訳/翻訳でミュージシャン、ライター、編集者からの信頼も厚く、取材現場やライブ会場で仲良しミュージシャンとハグする姿がしばしば目撃される。書籍『ミック・カーン自伝』(リットーミュージック刊)の翻訳も行っている。

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