LOVE26:ロック愛を刺激してやる!

I LOVE YOUから始める英詩のレトリック by 中山美樹 2014/03/01

欧米の新旧ヒット・ソングから隠れた名曲まで、特に印象的な英詞を紹介するLOVEいっぱいのコラム『LOVEレト』。26回目は欧米を離れて、地元日本の新生ロックバンドQUORUM(クオラム)のファーストCD『QUORUM』収録の「QUORUM」。平成生まれの若い世代だけじゃなく、青春時代にリアルタイムでロックの進化を見てきた昭和生まれのオトナ世代の心も鷲掴みにするクールなバンド。これからの成長がとても楽しみね。

「QUORUM」 by QUORUM

 

今回は「俺たち参上! お前ら、覚悟はできているか?」的に、世間やロックファンに向けて自分の存在を知らしめる、ロック好きのロック愛を刺激するという意味で無理やりラブソングと捉えてみたの。そう、100%こじつけよ(笑)。でもそう思ってしまうほど衝撃的にカッコいい(LOVEレト担当編集者の談)バンドだもの!

 

上のMVでも分かるように、彼らの歌詞は全曲英語。当然「QUORUM」も英詞で、基本的には同じ歌詞を2度繰り返しているわね。韻という点ではネイティヴのそれとはまったく違うけど、シラブルを無視することなく、単語がしっかりとメロディ・ラインに乗っているのがミソ。どんなふうに歌詞を作って行ったのか、ソングライターに訊いてみたいものだわ。

The time has come(機は熟した)
Look at me(俺に目を向けろ)
And there is no one that even can touch me(誰も俺に触れることすらできないぜ)
The loud music riding the wind(風にのって運ばれるラウドな音楽が)
That is dried and high, just get ready(乾いて熱を帯びている 覚悟してくれ)

笑顔になってしまうほどロックなイメージの歌詞でしょ? そして……

He calls me quorum baby(ベイビー 俺のこと“えり抜き”ってヤツは呼ぶ)
You must come to know this name(この名前 覚えておかなきゃな)
Hey man, can you run (なあ、お前、走れるか?)
Faster than I’m doing here(ここでやってる俺より速く)

音との兼ね合いを考えて、とてもシンプルなイメージで、シンプルな単語を綴っていったんだと思う、たぶん。小難しい単語がひとつもない分だけ、歌詞も容易に聞こえてくるし、そこに脳みそを使わなくてもいい分だけ、演奏もしっかりと耳に入ってくる。

普段から表意文字を使って生活している日本人が英語で歌詞を書くときに、まず意味を考えてしまう→直訳しちゃう→残念な英詞になっちゃう……という状況に陥ることが多いの。残念な英詞とは、メロディに乗らない、シンガーが上手く発音できないというリスナーにアンフレンドリーな歌詞のこと。それを打破するには、柔らか頭で表現したいことのイメージを広げて、シンプルな単語で書くことがベストよ。

 

自己顕示欲は、利口に見えそうな言葉や単語を並べるんじゃなくて、音楽を演奏することで発揮してこそクールなミュージシャンと言えるんじゃないかしら? だってplaying music is what a musician is all aboutでしょ?

中山美樹(Miki Nakayama)

ミュージシャンの取材に特化した通訳/翻訳というマニアックな仕事を1980年代終わりから続けている。これまで取材通訳、電話取材、インタビュー翻訳をしたアーティストは数知れず。歌詞対訳したアルバムも数多く、近年は日本人アーティストから歌詞英訳の依頼もしばしば舞い込み、レコーディング時の発音指導も行っている。その愛情あふれる通訳/翻訳でミュージシャン、ライター、編集者からの信頼も厚く、取材現場やライブ会場で仲良しミュージシャンとハグする姿がしばしば目撃される。書籍『ミック・カーン自伝』(リットーミュージック刊)の翻訳も行っている。

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