LOVE20:疲れた心が解き放たれると……

I LOVE YOUから始める英詩のレトリック by 中山美樹 2013/11/23

欧米の新旧ヒット・ソングから隠れた名曲まで、特に印象的な英詞を紹介するLOVEいっぱいのコラム『LOVEレト』。20回目はグリーン・デイの「オー・ラヴ」。2012年リリースのアルバム『Uno!』からのファースト・シングル曲よ。彼らがタイトルに「love」という文字を入れるのは珍しいかも。

「Oh Love」by Green Day

みんな(特に若い男子)が「絶対にこうだろう! いや、こうであってくれ!」と想像&切望する典型的なロックスターの生活の一コマ。タトゥー入りのセクシーお姉さんたちが惜しげもなく悩ましい表情とポーズを見せてくれるビデオね。こんなセクシーお姉さんたちに囲まれるロックスターになるには実力と運だけじゃなくて「人徳」も必要不可欠って知ってるかしら?

 

タイトルであり、初っ端から繰り返される「Oh love」。普通は「おお、愛よ」みたいな大きなイメージで捉えがちけど、「love」は愛情という意味だけではなく、愛する相手そのものを指したり、愛する人に呼びかけたりするときにも使うの。どうもここでは恋人ではない近くにいる素敵な相手のことっぽい。

「愛する人」を直訳すると「lover」だけど、実は「love」と「lover」の区別はけっこうビミョー。一般的には、loveは精神的な結びつきの強い本物の恋人で、loverは肉体的な結びつきに重きを置いている相手というイメージかな。

さて、「Oh Love」の歌詞を見ていくと……

まずは王道のパワーポップソングに清々しいくらい気持ちよく英単語が乗っているのが分かるでしょ? 英語が苦手な人でもラクに歌えるはず。単語の音節と音符がキッチリ合っているのが理由のひとつで、歌い易いということは歌詞も伝わり易いということ。love、life、ride、stopのように同じ単語を2回繰り返したり、nooseとloose、loserとchooserのように末尾の音を同じにしていたりを繰り返すことで、韻を踏んでいない部分も逆に引き立っているの。

内容は「I’m wearing my heart on a noose」(俺の心にはしめ縄が巻かれている)だけど、「Waste away tonight」(今夜はヘトヘト)だから、「Tonight my heart’s on the loose」(今夜の俺の心は解き放たれている)。「ん? 何だ、これ?」と思った君! MVを思い出してみよう。

wearing my heart on a noose→ロックスターだもの恋人やパートナー(=しめ縄さん)がいるわよねぇ。
waste away→ロックスターの1日はthe dog years(1年に7つ年をとる)並みに過密スケジュールで疲労困憊!
my heart on the loose→疲れ果てて頭が回らないから気分はフリーダム!

そんな心理状態のときにセクシー女子がいたら、「Talk myself out of falling in love」(恋に落ちちゃダメと自分に言い聞かす)も、「Won’t you rain on me tonight?」(今夜、潤いを注いでくれないか?)とか、「Won’t you take me closer to you」(君の近くに引き寄せてくれないか?)になっちゃうのは致し方なし。「Don’t stop when the red lights flash」(赤信号でも止まらないで)ってな勢いで行くでしょ!

……とは言え、この曲、見方を変えると、仕事で遠くに離れている恋人に「君に会いたい」と訴えている歌とも解釈できるの。さて、君たちはどっちの解釈がお好みかしら?

中山美樹(Miki Nakayama)

ミュージシャンの取材に特化した通訳/翻訳というマニアックな仕事を1980年代終わりから続けている。これまで取材通訳、電話取材、インタビュー翻訳をしたアーティストは数知れず。歌詞対訳したアルバムも数多く、近年は日本人アーティストから歌詞英訳の依頼もしばしば舞い込み、レコーディング時の発音指導も行っている。その愛情あふれる通訳/翻訳でミュージシャン、ライター、編集者からの信頼も厚く、取材現場やライブ会場で仲良しミュージシャンとハグする姿がしばしば目撃される。書籍『ミック・カーン自伝』(リットーミュージック刊)の翻訳も行っている。

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