LOVE12:穏やかな曲調の裏には……

I LOVE YOUから始める英詩のレトリック by 中山美樹 2013/07/27

欧米の新旧ヒット・ソングから隠れた名曲まで、特に印象的な英詞を紹介するLOVEいっぱいのコラム『LOVE レト』。12回目はポリスの1983年のアルバム『シンクロニシティ』収録の「見つめていたい (Every breath you take)」。今ではストーカー・ソングとしても知られている名曲よ。

「Every breath you take」by THE POLICE

モノクロで雰囲気のあるMV。珍しくスティングはアップライト・ベース(double bass)を弾いているわ。ちなみにアップライト・ベースはstring bass、bass fiddle、contrabassなど、呼び方がいろいろあるの。

 

曲調の穏やかさと愛情たっぷりに聞こえる歌詞のせいで、ポジティヴなラブ・ソングととらえている人も多いみたいだけど、スティング自身がBBC Radio 2でMVの表情の険しさを訊ねられて、こう答えているの。

「I think the song is very, very sinister and ugly and people have actually misinterpreted it as being a gentle little love song, when it’s quite the opposite.」
(これはとても邪悪で醜い曲。みんな優しいラブ・ソングと間違った解釈をしているようだけど、本当はそれとは真逆の曲だよ。)

この曲を作ったときに彼の頭の中にあったのは「Big Brother、surveillance、control」とのこと。この「Big Brother」とはジョージ・オーウェルの小説『1984』の登場人物のひとりで、ヨシフ・スターリンがモデルと言われているの。surveillanceとcontrolは自分で調べてみてね(初宿題!)。

さて、歌詞はとてもシンプルで基本的には「Every 〇〇〇 you □□□」という言い回しが続き、締めが「I’ll be watching you」(君を見ているよ)。何をやっていても“君を見ている”人をポジティヴに解釈すれば、the Divine(神聖な存在=神)だったり、亡くなった肉親だったり、側にいるパートナーだったり。そう考えれば素敵なラブ・ソングなんだけど……

「Oh, can’t you see, You belong to me, How my poor heart aches, With every step you take」(君には分からないのかい、君は僕のものだって、僕の可哀想な心が痛んでいるって、君が一歩踏み出すたびに)と、なんだか雲行きが怪しくなり……

「I dream at night, I can only see your face, I look around but it’s you I can’t replace, I feel so cold and I long for your embrace」(夜に見る夢は君の顔だけ、周りを見渡しても君だけがいない、心が凍えて君の腕のぬくもりに思いを馳せる)と、もう常軌を逸したところまで一方的な想いが募っているわけ。

鬱陶しいほどの愛情と独占欲がお好み人にとっては問題ないだろうけど、これがsecret admirer(密かな崇拝者)とか、government(政府)だったら……その恐怖たるやneedless to say(言わずもがな)よね。

この曲をウェディング・パーティーで流すときには要注意!(笑)

中山美樹(Miki Nakayama)

ミュージシャンの取材に特化した通訳/翻訳というマニアックな仕事を1980年代終わりから続けている。これまで取材通訳、電話取材、インタビュー翻訳をしたアーティストは数知れず。歌詞対訳したアルバムも数多く、近年は日本人アーティストから歌詞英訳の依頼もしばしば舞い込み、レコーディング時の発音指導も行っている。その愛情あふれる通訳/翻訳でミュージシャン、ライター、編集者からの信頼も厚く、取材現場やライブ会場で仲良しミュージシャンとハグする姿がしばしば目撃される。書籍『ミック・カーン自伝』(リットーミュージック刊)の翻訳も行っている。

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