LOVE11: 激しい愛はドラッグのように……

I LOVE YOUから始める英詩のレトリック by 中山美樹 2013/07/13

欧米の新旧ヒット・ソングから隠れた名曲まで、特に印象的な英詞を紹介するLOVEいっぱいのコラム『LOVEレト』。11回目はリアーナのアルバム『アンアポロジェティック』収録の「ダイヤモンズ」。相変わらずの迫力ある歌声でラブソングを歌っているリアーナ。ゴシップ好きの標的となることの多い彼女だけれど、実力、才能、セルフ・プロデュース力は相当なものよ。

「Diamonds」by RIHANNA

MVの後半は水・大地・馬という柔らかくて有機的で解放されたイメージ。最初の閉塞感が途中で出てくるオーロラで一変。このオーロラが相手との初対面のイメージなのかも。

 

こっちはリリック・ビデオ。MVとは異なるダイアモンドらしい硬質でキラキラした雰囲気のCG。これはこれで面白いわ。

 

「Shine bright like a diamond」(ダイアモンドのように輝いて)で始まる、恋に落ち、すべてが輝いて見える瞬間を切り取ったような情景が目の前に広がる歌詞。

「You’re a shooting star I see」(あなたは私に見える流れ星)とか「A vision of ecstasy」(エクスタシーの情景)とか「When you hold me, I’m alive」(あなたの腕の中で私は息衝く)とか「We’re like diamonds in the sky」(空に輝くダイアモンドのような2人)とか、「I saw the life inside your eyes」(あなたの瞳に生命を見て取ったの)とか、相手が自分にとって最高の人で、特別な存在……という心情を言葉を尽くして歌っているの。

注目フレーズは「You and I」(あなたと私)の「I」の部分。これ、普通は「You and me」になるので、どうして「I」なの?と思う人もいるはず。このパートの歌詞を順を追って見てみると……

So shine bright(だから明るく輝くの)
Tonight(今夜は)
You and I(あなたと私)

……声に出して歌ってみると分かるけど、「bright/night/and I」と「アイ」という音を重ねているわけ。これが「me」だと「イー」という直線的な音になり、輝きや夜という広がりを持つイメージが続かないから、わざと「I」にしたと思うの。基本的に歌は耳で音を感じながら意味も聞き取るものでしょ? だから言葉の音が持つイメージや感覚が歌の雰囲気をも左右することがあるわけ。

ただ、この曲には裏の面もあるの。タイトルのdiamond、途中に出てくるecstasyやmollyという単語を聞いてニヤリとしている人もけっこういるはず。だってecstasyやmollyはMDMAを、diamondはアンフェタミンやMDMAを表す隠語でもあるから。それを知っていればMV中のリアーナの口から出てくる白い煙が何を表しているのかを想像するのは簡単よね?

またdiamonds in the skyはThe Beatles の「Lucy In the Sky with Diamonds」を思い起こす人も多いはず。ジョン・レノンは「偶然だ」と言ったらしいけど、頭文字をつなげればLSD。サイケデリック音楽の典型的な曲だから、drugでtripした状態での幻覚を歌ったものとも言われているの。

そんな小ネタを知ってからMVを見ると見方が変わってくるかもしれないけど、激しい愛は麻薬のようなもの。周囲に反対されるような相手を好きになったら……違法ドラッグをやるようなものとも言えるかもしれないわね。

中山美樹(Miki Nakayama)

ミュージシャンの取材に特化した通訳/翻訳というマニアックな仕事を1980年代終わりから続けている。これまで取材通訳、電話取材、インタビュー翻訳をしたアーティストは数知れず。歌詞対訳したアルバムも数多く、近年は日本人アーティストから歌詞英訳の依頼もしばしば舞い込み、レコーディング時の発音指導も行っている。その愛情あふれる通訳/翻訳でミュージシャン、ライター、編集者からの信頼も厚く、取材現場やライブ会場で仲良しミュージシャンとハグする姿がしばしば目撃される。書籍『ミック・カーン自伝』(リットーミュージック刊)の翻訳も行っている。

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