LOVE9:恋はある日突然に……

I LOVE YOUから始める英詩のレトリック by 中山美樹 2013/06/14

欧米の新旧ヒット・ソングから隠れた名曲まで、特に印象的な英詞を紹介するLOVEいっぱいのコラム『LOVE レト』。その9回目はクレイグ・デイヴィッドの2000年リリースのデビューアルバム『ボーン・トゥ・ドゥ・イット』からの2枚目のシングル「7デイズ」。同アルバムからのファーストシングル「フィル・ミー・イン」よりもヒットし、彼にとっては最もヒットした曲となったの。2ステップ(2-step garage)の世界的な認知度を上げたR&Bアーティストのひとりよ。

「7Days」by Craig David

 

「I met this girl on Monday」(月曜日に彼女と出会って)「Took her for a drink on Tuesday」(火曜日に飲みに誘って)「We were making love by Wednesday」(水曜日には愛し合っていて)「And on Thursday, Friday and Saturday」(木曜日も金曜日も土曜日も愛し合って)「We chilled out on Sunday」(日曜日に落ち着いた)という、なんとも早業なラブソング。

 

そんな早業に持って行けた理由は、初対面で「She asked me for the time」(彼女が時間を訊いた)時に「I said it’d cost her her name, a six digit number and a date with me tomorrow at nine」(教える代わりに名前と電話番号と明日9時からのデートの約束が欲しいと言った)から。こういうことをサラッと言って退けちゃうと巷では「チャラ男」と呼ばれるらしいけど、思わずそう言ってしまうほどの何かを感じることってないわけじゃないわよね? 運命の出会いってそういうものなのかも。

 

注目すべきは「Since I met this special lady, I can’t get her off my mind」(この特別な人にあってから、彼女が頭から離れないんだ)から始まる歌詞。ここにはラブソングによく登場するフレーズばかり。

 

前出の「get A off B’s mind」は直訳すると「AをBの心から取り出す」、それが「can’t」(できない)のだから、転じて「Aが頭から離れない」という意味になるの。そして「one of a kind」。これは「比類のない」という形容詞。「be about to〜」は「まさに〜しようとしている」で、この「ain’t」は日常会話でよく使われる「am not」「are not」「is not」「has not」「have not」の短縮形。これらの単語の音節の数と合わせようとする音数が合わない時に使うと便利よ。「It’s a special kind thing with you」は「君とのことは特別なのさ」と歌っているの。ベタだけど実際に言われたら嬉しい言葉ね(笑)。

 

蛇足だけど、MV後半の理髪店での会話の中に「petro」という単語が出てくるけど、これはガソリンのこと。理容師のおじさんが「You ran out of petro?」(ガス欠だったのか?)と訊いているのが聞き取れるかしら?あっ、アメリカでは「gas」という方が一般的。でもねぇ、カノジョに会いに行こうと思ったら車がガス欠……本人にとっては一大事でも周囲の顔馴染みにとってはクスっと笑っちゃう話よね。

 

 

中山美樹(Miki Nakayama)

ミュージシャンの取材に特化した通訳/翻訳というマニアックな仕事を1980年代終わりから続けている。これまで取材通訳、電話取材、インタビュー翻訳をしたアーティストは数知れず。歌詞対訳したアルバムも数多く、近年は日本人アーティストから歌詞英訳の依頼もしばしば舞い込み、レコーディング時の発音指導も行っている。その愛情あふれる通訳/翻訳でミュージシャン、ライター、編集者からの信頼も厚く、取材現場やライブ会場で仲良しミュージシャンとハグする姿がしばしば目撃される。書籍『ミック・カーン自伝』(リットーミュージック刊)の翻訳も行っている。

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