LOVE5:Love of My Lifeに出会ったら……

I LOVE YOUから始める英詩のレトリック by 中山美樹 2013/04/23

欧米の新旧ヒット・ソングから隠れた名曲まで、特に印象的な英詞を紹介するLOVE盛り盛りコラム『LOVE レト』。その5回目は7年ぶりに新作『The 20/20 Experience』を発表したジャスティン・ティンバーレイクの同作収録曲「Mirror」をピックアップ。ちなみにアルバム・タイトルの「20/20」というのは視力のレベルで、日本で言えば1.0程度。転じて「正常な視力」という形容詞にもなってるの。

Justin Timberlake「Mirror」

 老夫婦の顔や手のシワが本当に美しいと思える素敵なオフィシャルMV。酸いも甘いも噛み締めた2人の歴史がシワの一つ一つに刻まれていて、不安な時期に揺らぐことがあっても続いた愛情がそこに見て取れるわ。

 

この曲は歌詞がいっぱい(笑)。どれも興味深いので注目すべき歌詞が決まらなくて、今回は全部等しく注目! でも「the love of my life」(生涯の恋人、一生続く愛)を表すにはこれだけあっても言い足りないのかもしれないわね。生涯貫く愛を確信した主人公がパートナーに「It’s like you’re my mirror」(君は僕を映す鏡のようなもの)と一生懸命伝えているの。

そして「I couldn’t get any bigger with anyone else beside of me」(他の人が寄り添っていても僕は大きくなれなかった)、だって「(You’re)My mirror staring back at me」(君は僕をじっと見返す鏡だから)と。

相手の瞳の中に映る自分に嘘偽りがないことを確信したからこそ、君は僕の鏡だと言えるんじゃないかしら?言い換えれば、主人公がそれまで見ていた鏡(=かつてのパートナー)は白雪姫の継母が大好きな魔法の鏡のように、どんなに愛し合っていても、自分が見せたい自分しか映してくれなかったってこと。真実は痛みを伴うことがあるけど、その痛みが逆に現実だったりするから、嘘偽りのない自分をちゃんと見てくれる(そして見せてくれる)パートナーであれば「この人と生涯を共にする」と言えるんだと思うわ。

「And now it’s clear as this promise that we’re making two reflections in to one」(2つの反射像をひとつにしていくというこの約束のように今では明らかなんだ)と続くわけ。ここで明らかな事柄は、主人公自身の愛であり、パートナーに対する信頼であり、生涯続くという確信であり……いろんなことを「it」で表していると思うの。

もちろん「Yesterday is history, tomorrow is a mystery」(昨日は過去、明日は謎)だけど、自分を見続けてくれるパートナーに「Keep your eyes on me」(ずっと見続けてくれ=僕から目を逸らさないで)と伝えている。これは形を変えた深い愛情表現ね。ここで動詞の「look」や「stare」を使わないのは「eye」が「mirror」だからだと思うわ。

前回のP!NK姐さんの歌詞にもあったけど、ラブラブな蜜月期間を経た愛情は綺麗事だけじゃないわけ。それでもずっと愛していきたいと思える相手が「the love of my life」ってことね。みんなもそんな相手を見つけたら、お互いに目を逸らさずに愛し続けてね!

中山美樹(Miki Nakayama)

ミュージシャンの取材に特化した通訳/翻訳というマニアックな仕事を1980年代終わりから続けている。これまで取材通訳、電話取材、インタビュー翻訳をしたアーティストは数知れず。歌詞対訳したアルバムも数多く、近年は日本人アーティストから歌詞英訳の依頼もしばしば舞い込み、レコーディング時の発音指導も行っている。その愛情あふれる通訳/翻訳でミュージシャン、ライター、編集者からの信頼も厚く、取材現場やライブ会場で仲良しミュージシャンとハグする姿がしばしば目撃される。書籍『ミック・カーン自伝』(リットーミュージック刊)の翻訳も行っている。

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