ローレル・ヘイロー―サンプラーを主軸としたオール・アナログのミニマル・テクノ・セット

Live Machine Report by 伊藤大輔 2014/03/27

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Live Machine Report第二回目は、1月末に開催されたベース・ミュージックの注目レーベル=HYPERDUBのパーティーにて、多数のアナログ機材を持ち込んだスペシャルなパフォーマンスを敢行したローレル・ヘイローを紹介します。コード9やDJ ラシャド、アイコニカなどの豪華なメンツが揃ったイベントは大盛況となったこのイベント、その東京公演であるUNITのステージより、ローレルのマシーンの詳細をお届けしましょう!

  • Artist:Larel Halo
  • Date:2014.01.29
  • Venue:UNIT

今回使われていた機材

  • AKAI PROFESSIONAL MPC 1000(サンプラー)
  • ACCESS Virus C(シンセ)
  • ELEKTRON Machinedrum(リズム・マシン)
  • KORG Volca Bass(ベース・シンセ)
  • ALESIS Q25(MIDIキーボード)
  • VERMONA ENGINEERLING Mono Lancet(シンセ)
  • ELECTRO HARMONIX Memory Man(エフェクター:ディレイ)
  • MOOGER FOOGER MF-104M(エフェクター:ディレイ)
  • MACKIE 1402-VLZPRO(ミキサー)

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こちらはローレルのライブ・スペースの全景。中央に置かれたAKAI PROFESSIONAL MPC 1000を核に、ACCESS Virus C、KORG Volca Bass、VERMONA ENGINEERLING Mono Lancetと3台のシンセに加えてELEKTRON Machinedrum、エフェクター・ペダルを2台併用するという“オールアナログ”のセットです。赤いヘッドフォンを使っているあたりが女の子らしいですね。

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ライブ・セットの左側を見ていきましょう。写真の左側には上からACCESS Virus C、VERMONA ENGINEERLING Mono Lancet、ELEKTRON Machinedrum、KORG Volca Bassが見られます。ちなみにVirus Cはモジュール・タイプのバーチャル・アナログ・シンセで、Mono LANCETは2基のオシレーターを搭載したアナログモノシンセ、Volca Bassはステップ・シーケンサーを装備したベース・シンセです。これらのシンセはAKAI PROFESSIONAL MPC 1000からMIDIで接続されており、MPC 1000に追随させているとのこと。MachinedrumもMPC 1000にテンポシンクさせています。

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ライブセットの右側にはローレルのセットの中心的な役割を果たすAKAI PROFESSIONAL MPC 1000があります。先述したように各シンセのサウンドもここでコントロールされるほか、楽曲と骨格となるようなメロディもMPCから出力されます。これらの信号はMPCの隣にあるミキサーMACKIE 1604-VLZ3へと接続。Volca Bassの上にはエフェクター類が見られますが、こちらはELECTRO HARMONIX Memory Man、MOOGER FOOGER MF-104Mと、ディレイ系ペダルを2台使用しています。

ベース・ミュージックの中で一際存在を放った
陶酔的なミニマル・テクノ・セット

オールナイトで開催されたイベントの中でローレルは12時過ぎに登場。ベース・ミュージックのイベントということもあり、ただでさえ音響面に優れたUNITのフロアにはサブ・ウーファーを追加で増設しており、各アーティストが地響きのような低音を轟かせていたのに対して、ローレルが表現した4つ打ち主体のミニマルかつアシッディなサウンドは、イベントのなかでも一際存在感を放っていました。Virus Cによる軽やかでトランシーなシンセ、MPC 1000で鳴らされるパーカッション、Machinedrumの丸みのあるビートが一体となって生まれるサウンドは、サイケデリックなミニマル・テクノといった印象。ただしダンス・ミュージックと言えど、踊らせるよりも独自の世界観で圧倒するような、ローレルらしいパフォーマンスでした。音数を抑えながらも陶酔感を描き出す“マシン捌き”はさすがの一言、最新アルバムの音源同様にやっぱり只者じゃないですよ、この方。

それでは最後に、ローレル本人から機材の話を聞く機会をもらえたので、今回のライブセットの機材について、さらには新作のことを語ってもらいました。

録音でもライブでも
ハードウェアを用いた方が良い音が出せる

●今回の来日公演で持ち込んだ機材の中で中心となるものはどれですか?

MPC 1000。私のセットの“MIDIブレイン”で、他のシンセなどをMPCに追随させているほか、パーカッシブな音やメロディックなサンプリングなど、曲の骨格となるサウンドもMPCで鳴らしているわ。

●数あるサンプラー/シーケンサーの中でMPC 1000を選んだのはどうして?

数年前まで私はELEKTRON Octatrackを使っていたんだけど、もっとフレキブルにMIDIで外部機器をコントロールできるサンプラーが欲しくなったのよ。それに加えて私が持っていたOctatrackはその頃の最新モデルだったせいかバグもあったから、Octatrackの代わりにMPC 1000を使うようになったわ。MPCはOctatrackよりもメモリーできるデータ容量は少ないんだけど、サウンドや使い勝手も好きだし、全体的にも私のスタイルに合っていると思うわね。

●ライブ機材の接続はどのようにしていますか?

至ってシンプルよ。パーカッションやメロディックなサンプルはMPCでプレイして、ライブ中にリズム・パターンを組み上げるMachinedrumは、MPCのテンポにフィードさせているわ。あとベースや他のシンセもMPCからMIDIを送って鳴らしている。これらをミキサーにつないでセンド/リターンでディレイ・ペダルを2つ重ねて使っているわ。

●ちなみにあなたが最初に買った制作用の機材は何?

最初に音楽を作り始めたときはお金が無かったから、MIDIコントローラーとラップトップ・コンピューターだけで、クラックのソフトシンセやプラグインをたくさん使っていた。そのあとでROLAND Juno-106とOctatrackを使ったのをきっかけに、初めてハードウェアでのサンプリングにのめり込んだの。

●あなたの最新作『チャンス・オブ・レイン』でアナログ機材を多用した理由は?

すでに自分のトラックをライブで演奏するようになっていたから、アルバムはそれらの機材を使って制作したのよ。今でも作曲にはたくさんのソフトウェアを使っていて、そこに外部シンセのパートやエフェクトを足したりしている。でも、アルバムで聴けるほとんどのサウンドは、ライブで使っているセットアップをSSLのミキサーに接続して、アウトボードのコンプレッサーもしくはフィルターを通してレコーディングしているわ。

●もともとコンピューターを主体に制作をしていたあなたが、次第にアナログの機材に魅了されていった理由は何だったのですか?

私にとってはハードウェアの方が音楽的に感じられるからよ。今でもソフトウェアを使った方が早く曲は書けるし、ドラムのプログラミングも複雑にできるけど、ハードウェアだと長い時間をかけてもシンプルな音楽しかできない。それにも関わらずハードウェアを使った方が自分としては満足できるのよ。たぶん理由は録音でもライブでも、ハードウェアを用いた方が良い音が出せるからだと思うわ。だから私はハードウェアとソフトウェアをミックスして使って、より良い活用法を見つけようとしているの。それもあって今年はミキサーやオーディオ・インターフェース、モニター・スピーカーといったプライベート・スタジオの機材をアップグレードするまでは、新しいシンセやエフェクターを1つも買ってはいけないって自分に言い聞かせている。とは言っても、もしかするとペダルを一台か2台買ってしまうかもしれないけど、それは仕方ないわね(笑)。

 

いかがでしたでしょうか? ローレルは1stアルバムのリリース後にライブを行うようになったのがきっかけで、DAWベースよりもサンプリング・マシンをベースした制作へとシフトしたようですが、制限のある中での制作に創造性を刺激されるという言葉が印象的でした。とは言え、メインのマシンがほぼ10年前にリリースされたMPC 1000とは、ちょっと驚きです。DAWやソフトシンセなどを使った制作から、実機を使った音楽制作へと傾倒していくというのは、今を体現するエレクトロ・ミュージシャンらしい流れとも言えると思います。

Laurel Halo

Photo:Ismini Adami

Photo:Ismini Adami

ローレル・ヘイロー●ミシガン州アナーバー出身。19歳で音楽制作を開始し、2010年にヒッポス・イン・タンクスより『King Felix EP』をリリース。その後はコード9が主宰するレーベル=ハイパーダブへと移籍し、2012年にデビュー・アルバム『クァランティン』を発表。そのカラフルでポップなサウンドはチル・ウェイヴ~インディ・ダンス系の新旗手として高く評価され、日本の現代美術家である会田誠の「切腹女子高生」を採用したアートワークでも話題となった。昨年11月にリリースされた2nd『チャンス・オブ・レイン』は大きく方向性を変え、アナログ機材による即興演奏を中心に据え、ボーカルを排除したテクノへとフォーカス。独自のサイケデリック感をまとったダンス・ミュージックは各方面から賞賛を浴びた。

http://www.laurelhalo.com/

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