「ネットにいても、一緒にいる人の顔が見える」クリエイティブ・コモンズ ドミニク・チェン&Grow! カズワタベとのよもやま話(3)

コラム by 土屋綾子(RandoM編集部) 2012/12/13

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第1回、第2回では、インターネットで「創作活動」というものの可能性を広げる取り組みやサービスを行う2人の現場の話を中心に聞いてきた。話題はネット上のコミュニケーションや著作権の現状へと移っていく。

創作活動を通して起こる
コミュニケーションを重視する

ドミニク:Into Infinityの企画でループ音源をいろんなアーティストの方から集めて、今後どんな展開があるだろうと話していたんですが、例えばそのループ音源を使って楽曲を作ることもOKとして、その楽曲が売れた時にはループ音源の製作者にもいくらか還元されるといいよね、っていうアイデアがありましたが、そのときクリエイターの1人が言っていたことが印象的でした。「お金が入ってくるのも良いけれど、それよりもコミュニケーションが欲しい。それがあると次の曲を作る原動力になる」と。Twitterで拡散されるだけではない、それ以上のものとして自分の作ったものに対するフィードバックや意見をもらえるということでも、コミュニケーションの充足が起こるのではないかと考えています。

ちょうど今日はInto Infinityに実際に参加されているビート・メイカー/DJのAZZURROさんが同席されているので伺いたいのですが、Into Infinityに関しては、8秒間のループ音源を作るという点で、「お題」感というか、それに対する反応や、どう使われるんだろうというところを製作者も前提としている部分が強いように思います。参加されてみたところはいかがでしたか?

AZZURRO:IntoInfinityの場合は特にそうでしたね。ループを提供してお金をいただくというよりも、これをどう使ってもらえるか、どんな反応があるかに興味がありました。
いいか悪いかは別として、昨今は音楽を作るモチベーションが「これでお金を稼ぐ」というところにはない人も増えている。では何に動機付けられて音楽を作っているかと言うと……「LOVE」をもらうとモチベーションは上がりますね。
ステージだったら観客のダイレクトな反応があるけど、ネットを介しても発表した楽曲に対しての質の高い反応をもっと得られるシステムがあると、やる気が出るのではないでしょうか。

ドミニク:Grow!もお金が入るという側面だけじゃなくて、コミュニケーションできる、コミュニティが作れるという側面で使われるといいですね。
作ることにフォーカスしつつコミュニケーションにも意識を注ぐにあたって、TwitterやFacebookは過剰になりがちだと個人的には思っていて。なのでGrow!のような仕組みはものを作るうえで金銭的かつ精神的充当を得る場という意味でバランスがいいと思いますね。

―そういう意味での緊張感というのはありますか?

ドミニク:あぁ、ありますねぇ。いい緊張感が。質問が来たときには「あっ、すぐに答えなきゃ!」って(笑)。これはすべてを優先して答えねばって最初はなりましたけど、1週間くらいして肩の力が抜けてきたところです(笑)。

ワタベ:ミュージシャンに置き換えると、ファンの方からのフィードバックが欲しい、もしくは相談したい機会ってあるんですよね。
例えばライブのセットリストやアルバムに収録する曲とかですね。ただ、それをファンにあまねく聞くっていうのはやりづらい。でも、すでにサポートしてくれている人たちだったら聞きやすい。人数もちょうどファミリーっぽいというか、そういうサイズ感ですよね。この「枠」が作れる仕組みは今までなかなかなかったように思います。

ドミニク:「こんな感じの曲作っています」って出してみて、反応を見て「あ、この路線もいけるな」ってやったり。確かに全員に聞こうとしてしまうとノイズも拾ってしまうので、対象をしぼって意見を集めるのはいいですね。

ワタベ:Twitterも含めてですが、SNSの初期ってユーザーも少ないので結構そういう感じなんですよ。コアなユーザーしかいないので、投げた球に対して返ってくるものの精度が良い。人が増えるとどうしても変な返球が増えてきます。例えばTwitterとかも、有名人に対して表に出ていない罵詈雑言とかすごいんですよ。褒められてる数と比例して批判も受けている。で、やめちゃう人いるじゃないですか。あれはよくないですよね。

ドミニク:Grow!でもサポーターが1000人を超えたりしたらそういうことって起こり得ますよね?

ワタベ:そうですね、そういう人をリジェクトする仕組みは規模が大きくなるに連れて需要が生まれてくると思います。基本的にはあまり規制とか作りたくはないんですが、そこは柔軟に対処していこうと。

―FacebookかTwitterかメールアドレスで、相手の顔が見えるのはいいですね。

ワタベ:今のところFacebookのアカウントを使って登録する方が多いですから、余計に顔が見えやすいですね。やっぱり実名で、顔が見える人にサポートされると嬉しいですよ。あとはこのサポーターが外から見えるっていうのも特徴ですね。興味をひきますよね。「あの人がサポートしてるんだ、じゃあ入ろうかな」と。
あと機能面で言えば、サポートしているコミュニティに投稿があったときにくる通知が、メールだけでなくFacebookにも届くようにもなっています。

ドミニク:仲俣暁生さんの投稿すごいですね、ものすごい量書いている……。

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フリー編集者 仲俣暁生氏のGrow!コミュニティ

ワタベ:仲俣さんのコミュニティは僕もサポーターになっているんですが、投稿の量も質も素晴らしいですね。Grow!ではこの情報が欲しくてサポートしているので問題ありませんが、Twitterでこれだけ連投するとちょっと嫌がられるかもしれませんね(笑)。

ドミニク:Twitterはそういう風に設計されてないですし、Facebookでもガチなことばかり書くというのもまたちょっと違いますよね。自分の関心あるテーマにフォーカスして物事を考えられるっていう意味で言うと、自分自身が書き手であったら、書く内容にも影響すると思うし、仲俣さんはもしかしてそういうところまで感じてやられているのかも知れないとも思いました。

例えば、共同で新しいアルバムを作るので参加権やリミックス権を売るっていうのも、アーティストの自己管理ではあるけど、そういうやり方もいいのかな?

ワタベ:そうですね。こちらで提供している機能で可能な範囲で自由にやってもらえればと思っています。サポーターへの特典も、人によって求められているものが違うでしょうし。サポーターとの距離感も人それぞれ。Grow!の機能をどう活用して、どんな効果があるかもそれぞれ違うと思うので、運営しながら最適なやり方を探していってもらえればと思います。

ドミニク:CCでも、サポーター限定のイベントなども開催したいですね。グッズを渡すとか、イベントの優待とか。あとCCについて書いてもらうブロガーも組織したいと思っているんです。

ワタベ:ここだからこそできるってことがありますよね。

ドミニク:自分達でシステム組む必要もないし。

ワタベ:そうですね。自前でやろうと思ったら初期コストだけで結構なものになりますよね。だったらGrow!使っちゃえばいいやって思ってもらえたら良いですね。完全に無料ではじめられるので。Twitterやブログをやる感覚でGrow!を始めてもらえたらと思います。

有名な人も、既存のファンクラブがあっても両方やれば良いんですよ。運営コストもそこまでかからないですし、収益チャネルは増えますから。Grow!はミュージシャンにとっては活動する上で今までなかなかできなかった領域をカバーしていますので、ぜひYouTubeのアカウントを作る感覚でGrow!というサービスを使ってくれたら嬉しいです。

ドミニク:やってみて分かったんですが、数分で登録できるんですよね。

ワタベ:5分はかかるかもしれませんが、そんなものです(笑)どちらにせよ赤字になることはないので、気軽に始めてほしいですね。

ドミニク:ドネーション(寄付)というやり方だと敷居が高いと思われることがありますけど、Grow!だと1週間で20人以上参加して頂いたので、支援する側の敷居も低くなっているのかなと感じました。新しい経済圏をつくる上でも、ぜひより多くの人に参加してほしいです。

―Grow!内でCCライセンスを使ったコラボレーションをしていくのも楽しそうですね。

ドミニク:ちょうど今考えているのは、アーティストの方にCCコミュニティにコンテンツ(楽曲)を寄付してください、それをダウンロード特典でサポーターにあげます、それにCCライセンスをつけてリミックスするなり配布する……というものです。

このように、提供するコンテンツのここからは無料、ここからは有料っていうデザインを個人や企業がそれぞれ設定して提供できたら良いなと思っています。

全員がリスナーでありプレイヤーになれる
そんな時代だから仕組みも柔軟にしていきたい

―フリーカルチャーやCCに関してはまだ知られていないなっていう感覚がお2人の中ではあるんでしょうか?

ドミニク:そうですね、まだまだ普及が足りていないと思っています。二次創作やCGMという言葉が広まっているとしても、一部の有名人がコンテンツ業界を作っていて、それを受け取る人はものづくりをしないという認識が既得権益を持っている人たちの間にはまだ根強いのかなと感じます。一方で、初音ミクをきっかけとしたボカロPとかYouTubeで有名になる人は、ネットが発達すれば絶対に生まれるし、実際に新たな文化や経済圏を確実に形成している。この新興の文化が社会の中で一般化していくところにCCも引き続き参加していければと思います。

ちなみに先日永田純さんとTOKYO BOOT UPでも話したのですが、よくある誤解として、CCは著作権を否定しているわけでは決してありません。著作権という利益配分や作者を保護するシステムを肯定した上で、社会と作者の利益のバランスをとりましょう、 もしくは権利を持っている個人なり企業にとっても有益な権利の開き方や守り方を議論しましょうと言っているんです。たとえば著作権管理団体で信託契約しているアーティストが、多くの人に広めてもらおうと思って一部の曲にCCライセンスをつけられるようにするだけで、アーティストや事務所、レーベルがより自発的かつ柔軟にプロモーション戦略を立てることができるようになります。

ワタベ:作り手、買い手、払う人、貰う人みたいなカテゴライズが行き過ぎているんじゃないでしょうか。熱心なリスナーはつくり手である場合も多いですから、そちらを増やす施策を考えることも大事だと思います。つくり手になるであろう人たちが、のびのびと創作を行える環境を作って行きたいですよね。

ドミニク:そうですね。僕らは0か1かという話をしたい訳ではなく、その間の多彩なグラデーションを考えたいんです。

ワタベ:二項対立じゃないんですよね。インターネットが普及して、誰もが発信側にも受け手側にもなる中で、今までの規制を一般化していいのか?というのを議論していかなくてはいけません。現存する社会の仕組みや制度は、多くが何十年も前に定められたものを増改築を繰り返して今の形となっています。それが現代に、そしてこれからの世の中に最適化されているかというと、十分にされてないのは当然のことです。

そして、それをドラスティックに変化させるのは行政の側のアクションとしては起きづらいのもまた仕方ありませんから、民間で、市民の側からそういったアクションを起こしていって、そのフィードバックをもとに全体に適用させていく。そういうストーリーを僕たちは描いて、オルタナティブを作っている。フリーカルチャーの考え方をベースに持っているのは、こういうことなんです。

ドミニク:うまくまとまりましたね(笑)!

―ありがとうございました。まだまだ話は尽きないですが、今回はこのあたりで。このよもやま話で出てきたいくつかのトピックは、今後改めてじっくり聞かせてください!

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3回にわたり、インターネットで醸成されたフリーカルチャーのムーブメントとそれをベースに作られたさまざまなサービスや仕組みについて話してきた。
新しいキーワードや難しい話もあったが、2人の考えや活動を通して、自分の創作活動を広げるヒントが見つかった方がいれば幸いだ。

ドミニク・チェン&カズワタベとのよもやま話

(1)「音楽や創作物を介して、人がいかに交流するかを考えている」

(2)「”その人が好き”というところに価値が見出せる」

(3)「ネットにいても、一緒にいる人の顔が見える」(この記事)

information:クリエイティブ・コモンズ10周年を記念するライブイベントが12月22日に六本木superdeluxeで開催!
http://creativecommons.jp/cc10/

 

ドミニク・チェン(DOMINIQUE CHEN)

1981年東京生まれ。2004年よりメディアアートセンターNTT InterCommunication Center研究員として映像アーカイブの構築や美術展示企画に携わりながら、日本におけるクリエイティブ・コモンズの立ち上げに参加し、2007年よりNPO法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパン設立理事。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを採用した多数のプロジェクトの立案・企画・支援に従事してきた。2012年5月に初の単著となる『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック- クリエイティブ・コモンズによる創造の循環』をリリース。また、2008年には自身のウェブサービス開発会社ディヴィデュアルを共同創業し、様々なサービスやコミュニティの開発運営に携わっている。

カズワタベ

1986年4月松本生まれ。洗足学園音楽大学総合音楽科在籍時に始めたクラブジャズバンド「Tough&Cool」にてリーダー/ギタリストとして活動。2009年にリリースしたアルバム『encounter』はタワーレコード渋谷店、新宿店、難波店、福岡店にて展開されるなど大きな反響を得る。その後、2010年にクリエイターの活動を健全化することを目的としたウェブサービス『Grow!』をローンチし、それと同時に設立したGrow! Inc.にてChief Creative Officerに就任。現在までその運営を続けている。また、2012年9月にはテレビ朝日による自身の楽曲の著作権侵害を告発、10月にはクリエイティブ・コモンズ・ジャパンのフレンドに就任するなど、コンテンツ・ビジネス、創作文化振興に関する活動を行っている。

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