成功できるバンドの条件とは?名門ライヴ・ハウスの ブッキング・マネージャーに聞いた!

コラム by 編集部 2012/09/28

バンドマンであれば、誰でも”音楽でメシを食う”ことを夢見ているはず。しかし、最初はそんな志で始めたバンド活動も、気がつけば、代わり映えしない週1回のスタジオ練習、流されるままのライヴ出演というマンネリ化したものになっていないだろうか? ここでは、ライヴ・ハウス下北沢屋根裏のブッキング・マネージャーとして、日々、数多くのバンドと接している味間正樹氏に、どうすればバンドは成功できるのか? そのコツと条件を聞いてみた。

目指すべき最終型を持ててこそ
バンドはスタートラインに立てる

バンド活動で重要なのは
しっかりとしたコンセプト

──ブッキング・マネージャーの仕事内容について教えてください。

ひと言で言えば制作の仕事ですね。ライヴ・ハウスを運営していくうえで、毎日のイベントを作っていくのが基本的な仕事になります。それ以外にも、出演してくれているバンドを成長させてあげたいという気持ちがあって、ライヴを観ていくなかでいろいろとアドバイスをして、バンドを応援するというのも、僕の仕事だと思っています。

──ブッキング・ライヴの編成も、業務のなかで大きな割合を占めるのでしょうか?

もちろん、そうですね。僕が働いている下北沢屋根裏は、だいたい金・土・日はバンドからの持ち込みイベントで埋まっていますが、平日はほとんどこちらで編成するブッキング・イベントなんですよ。そこに出演しているのは、日曜日の昼の部に行なっているオーディション・ライヴで合格したバンドたちです。

──オーディション・ライヴで合否を分けるポイントは?

もちろん演奏力も大事ですが、そのバンドにやる気があるかどうかというのが第一です。僕はそこに将来性を感じます。

──逆に興味が持てないのはどういったバンドですか?

観ていて残念だなと思うのは、何をしたいのかがよくわからないバンドですね。“こういうことを表現したくてバンドをやっています”ということが伝わってこない、コンセプトを強く持てていないバンドなんです。単純に”曲が5、6曲できたし、ちょっとライヴをしてみようか”というようなバンドは、ぜひ自分たちのなかでしっかりとコンセプトを持ってから活動してほしいと思います。仮に演奏力が伴わなくても、やりたいことが明確に伝わってくるバンドには、”こういうことがしたいのなら、こういう練習をしないといけないよ”とか”こういうライヴを目指すなら、ここを鍛えるといいよ”というふうに、僕たちも的確なアドバイスをしてあげることができるので、そういうバンドは成長がすごく早いですよね。

お客さんを意識することが
良いライヴのポイント

──日々、多くのバンドのライヴを観ていて、見せ方が上手なのは、どんなバンドですか?

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まず、自分たちがお客さんからどう見られているのかを、きちんと意識できているバンドですね。表現者であれば、誰しも”やりたいこと”が少なからずあると思いますが、それが一方通行になってしまっているバンドが多いんです。でも、ライヴがうまいバンドというのは、お客さんがどんなふうに受け取ってくれるかということまで考えているんですね。たとえばMCひとつにしても、タイミングと話す内容でお客さんに何が伝わるか、ということまで考えてライヴをすることが、すごく大事だと思います。

──演奏中に注意すべき点はどんなことでしょう。

お客さんの視線を意識しながら演奏することですね。もちろん、お客さんは自由なので、どこを見ていてもいいわけなんですけど、テレビの音楽番組でカメラがどこを中心に追っているかを考えれば、やはりみんな歌っているヴォーカリストの顔を見ていると思うんです。一方、ギタリストがソロを弾いているときは指板上の指の動きやピッキングしている右手、あるいはギタリストの顔がテレビに映るはずですし、とにかく、そういった感じでお客さんの視線の移り変わりを、バンド側が意識して見せてあげるのが大切だと思います。特に、ヴォーカリストが歌っているときは、顔のなかでも”目”を見ていると思うんですね。理想を言えば、ヴォーカリストには、目を見たら今どんな曲を歌っているのかがお客さんに伝わるようになってほしいと思います。”目は口ほどに物を言う”って言いますよね。ただ、それができているバンドはすごく少なくて、たとえばギター・ヴォーカルのバンドの場合、演奏に気をとられて指板上をずっと見ながら歌ってしまっていたり、意図的な場合もありますけど、前髪を伸ばしていて目そのものが見えなかったり……。せめて自分たちの曲ぐらいは、前を向いて演奏できるようになってほしいですね。

──ライヴ前には、曲の練習以外でどんなことを準備しておけば良いでしょうか。

ライヴに対するイメージの共有をメンバー内でしておくことが大切だと思います。曲ごとやライヴ全体の盛り上がりどころを共有したうえで、そこを最大限によく見せるためにはどうすれば良いか、逆に抑えるところをどういうふうに作っていくか、きちんと考えてメンバー同士で共有しておくことがすごく大事なんですよ。映画もそうですけど、最初から最後までずっと走り続けているようなものだったら途中で飽きますよね。日常生活とアクシデントの繰り返しがあるから面白いのであって、ライヴも同じように起伏を作り、緩急をつけて、全体を通してお客さんを飽きさせないものにすれば、それが結果として良いステージにつながると思います。

1年間本気でがんばれば
バンドはものすごく伸びる

──現在、活動が停滞してしまっていると感じているバンドがすべきこととは何でしょうか。

自分たちの目標を立てることが大事だと思います。1ヵ月後、1年後にどうなっていたいとか、次のライヴをどういうふうにしたいとか。そうすれば、そのためには今、何をすべきかが自然にわかるはずなんです。ものごとには順番があって、表現者というのは、目指すべき最終型があって始まりがあると思うんですよ。こういうふうになりたいから、そのためにはどういう曲を作って、どういう練習をしてというように。最終型がないバンドは、もうスタート地点にも立てていないと思いますね。僕がブッキング・マネージャーとしてバンドと接するときに、重要視しているところでもあるんですけど。

──普段、接しているバンドたちは、皆さんその最終型を持てていますか?

基本的に、最初に音楽を作りたいと言っている時点で、みんなおぼろげながらに持っているはずなんですけど、“じゃあ、どんなことをしたい、どんなライヴが理想なの?”って問いかけても、ひと言で”こういうことがしたい”と返してくれるバンドは少ないですね。だから、バンドにはまずそこを考えてほしいと思いますね。ダラダラと活動してしまっているバンドマンというのは、基本的にそういう意識がものすごく希薄な場合が多いような気がします。

──何もせずにチャンスが来るのを待ってしまっている感じでしょうか。

そうなんですよ! キツい言い方になってしまいますが、”あわよくば”というのは、今の音楽業界にはないんです。”あわよくばどこかから良い話が舞い込んでこないかな”なんて考えながらダラダラと活動しているバンドには、僕は絶対に未来はないと思います。自分たちから仕掛けていって、いろいろなことを全力でやってこそ、チャンスは巡ってくるものなんです。バンドマンはそのことを知って、まずは目標を立てることから始めてほしいですね。

──厳しいと言われる音楽業界で、これからのバンドに必要なのは何でしょう?

音楽で成功する、音楽を仕事にしたいというバンドマンにとって、何が大事かと言ったら、何はともあれ野心だと思うんですよ。”絶対にやってやる、絶対に音楽でメシを食ってやる”みたいな。僕たちが接しているバンドでも、野心のあるバンドというのは練習もすごく真面目にやるし、ライヴが終わったあとにアドバイスを真剣に求めてくるし、そういうバンドは毎回のライヴでちゃんと成長していきます。バンドって1年間本気でがんばれば、すごく変わるんですよ。毎回のライヴで課題や反省点を出して、修正していくことを繰り返していけば、1年でものすごく伸びるんです。もちろん、バンドにもいろいろあって、ただ楽しむためだけの、音楽を仕事にすることを目標にしているわけではないバンドもいると思います。でも、自分たちのやりたい音楽がレベルの高いものになったり、良い曲が作れるようになったほうが絶対に楽しめるはずなんです。だから、しっかりと目標を持ってストイックに活動してほしいと思いますね。

味間正樹(みま まさき)

高校時代にドラマーとして地元・滋賀県でバンド活動を開始。その後、27歳で上京し、ギタリストに転向。バンド活動と並行して、着物の染織家の弟子入り、鉄工所、レコーディング・スタジオ、金融会社などでの仕事を経験する。2006年から下北沢屋根裏のブッキング・マネージャーを務め、数多くのバンドを見てきた経験から、出演バンドにアドバイスと励ましの言葉を送り続けている。

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ライヴ・ハウス「屋根裏」

1975年にオープン。現在は渋谷と下北沢の2店舗で営業している老舗ライヴ・ハウス。古くはRCサクセション伝説の4DAYS(80年)が行なわれ、メジャー・デビュー前のミッシェルガンエレファントが頻繁に出演していた場所としても知られる。近年はブレイク前夜の神聖かまってちゃんが動員記録を更新し話題となった。

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