「絶対音感がないからダメ」は大間違い。絶対”音程”感を身につけて音楽をもっと楽しもう –『大人のための音感トレーニング本』 著者・友寄隆哉氏に訊く

コラム by 小野寺志光(ミュージックトレード) 2012/03/16

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理論書(メソッド)といえば堅苦しさや敷居の高さが付きまとうものだが、昨年4月に発売された『大人のための音感トレーニング本』は、著者が自らの経験から得た独自の理論により、音と音の関係である”音程”の感覚を付属CDを併用した具体的なトレーニングで実践的に鍛えることで、誰もが効率的に体得できる内容。全楽器・全年齢を対象に書かれており、巷ではカラオケが上手くなりたいという社会人にも人気とか。その秘密を探るべく、著者である友寄隆哉氏に話を伺った。

理論は全て独学で習得

—- まず友寄さんと音楽との出会い、音楽活動、理論を学ぶきっかけなど教えていただけますか?

友寄 音楽を始めた一番最初の記憶は、6歳の頃にヤマハのエレクトーン教室に通っていました。しかし長続きせず、幼少時代は専ら野球少年。小学生の時にレコードプレーヤーを買ってもらい、小林旭(思えばギターの格好良さに目覚めたのはこの時だったかも!)のレコードをよく聴いていました。
ギターは、小6の時に叔母の店にあったフォークギター(ニセの田端義夫のサイン入り!)をもらって始めました。それからありとあらゆる通信講座を通じて独学でギターの練習を始めたんです。沖縄では当時、教えてくれる教室などなかったですからね。
中学生になるとフォークやロックのコンサートを開いて演奏するまでに。理論を学ぶきっかけは、グレコの「EG800」というエレキギターに付いていた成毛滋のロックギターカセットの初級編。その内容に感動して、続いて上級編も注文したところ、これが難しくて、とにかくまず和声学をしっかりやらなくてはダメだと……。それまで友達に自慢してたことも全部否定されてしまい(笑)、”誰にでもわかるギターのためのやさしい和声学”みたいな本を購入して独学で始めたのが最初です。

絶対”音程”感は誰でも体得可能

—- 友寄さんが提唱している絶対”音程”感について解説してください。

友寄 絶対”音程”感とは、私が論理的な帰結に基づいて名付けたもので、”絶対音感”とも”相対音感”とも違い、多くの方が実は持っている、あるいはこれから鍛えることで十分身に付けることができる感覚のことです。
例えば、ドもミもラの音も全然覚えていない人が独唱しようとする場合に、試しにドでもラでも最初の基準となる音(=僕らはGIVE音と呼んでいるんですが)、を与えると、しっかりと歌えてしまうのはどうしてでしょうか? それはつまり、最初に与えられた音を手がかりにして、正確な”音程”をしっかりと探し出しているからです。
ここまでを今までの人達は相対音感と言うのですが、実際には相対音感の人というのは、伴奏の和音が変わったりすると、それに釣られて歌えなくなってしまうのです。ところが、ジャズなどでは移調があったり、コード進行が途中で即興的に変わることなどは頻繁に起こるし、複雑で高度な和音伴奏がいくらでも出てくる。それでも平気で歌える人達が大勢いるわけです。じゃあ伴奏を全く聞いてないのか、絶対音感があるのかというと、そんなことはない。その人達はドもミも全然覚えていない。でもどんな伴奏でも、最初の音さえあれば、きちんと歌うことができるのです。
今までは音楽をやろうと志す多くの人達が、”自分には絶対音感がない”というコンプレックスを感じていたと思います。でも実際には、これとは別に絶対”音程”感という能力が存在するのです。

これも同じく音程に関わることですが、”ハーモニー感”というものがあります。タテ(コードとメロディの関係)、ヨコ(コード進行)の二つの流れがあって、これを嗅ぎ分ける能力を鍛えることで、歌を聴いてなんとなくこんなコードかなとか、ある程度聞き取れるようになります。
例えば、Cのコードに任意の一音をメロディとして鳴らしただけで、そこからどんな曲が思い浮かぶか、というトレーニングをすると、タテの感覚のハーモニー感が鍛えられます。”音感”と”音楽性”は直接関係ないけれども、こうした感覚を養うことは武器になる。演奏したり、歌を歌ったりする時にたいへん役に立つのです。

 

音感は身に付く。実践あるのみ

—- さて、今回執筆された「音感トレーニング本」は具体的にはどういった内容の本なのでしょう。

友寄 僕は独習でやってきたけれど、いまだに音程以上に難しい理論はないと思っているんです。これまでコツコツと書いてきた通信講座のテキストの中に音感トレーニングに関するノウハウがあちこちにあるので、これをなるべく分かりやすい形で多くの方に伝えたいと思いました。
世の中には、いわゆる”音感コンプレックス”の方が多いと聞きます。本書は、その音感を鍛えるために、CDを聴きながら実践的にトレーニングしていただこうというものです。
実際のバンドマンには音感というものがすごく要求される。一生懸命学校で理論を勉強してきたとしても、現場では通用しないケースがあるのです。知ら ない曲をすぐに伴奏してくれとか、せっかく覚えてきた曲を、その場でキーを変更してやってみようとか……、そういうバンドの現場でも使える実践的な内容にしたつもりです。

—- 本書の効果的な活用法は?

友寄 本書の中から何か1つ、毎日実践できることを見つけ、その1つを夢中になってしっかりやること。難しいと思ったら実践からやればいい。付属のCDをドライブしながらとか、何気なくでも繰り返し何度も何度も聴くうちに自然に入ってくるものです。
あと皆さんが試して面白いと思うのは、歩きながらでも鼻歌を使って即興で作曲をしてみること。音程をなるべく外さないように気を付けてね。ドからラに飛ぶのは難しいと思ったら、そこをしっかり練習するとか、そういう日頃のトレーニングが、音感を養う基礎作りになります。

—- 本書を通じて最も伝えたかったことは?

友寄 絶対音感がないからダメという思い込みは大きな間違い。絶対音感幻想の洗脳と言ってもいい(笑)。そのコンプレックスから挫折してしまった人達に、音楽を学ぶことの楽しさを知ってもらい、その人達に自信をもって欲しいんです。これまで絶対音感は子どもの頃じゃないと身に付かないとされていて、それをしなかった人達は諦めるしかなかった。ところが、絶対”音程”感は大人になってからでも十分身につけることができるということを、多くの人に知って欲しい。つまりこの本は、私に言わせれば、絶対音感の幼児教育至上主義に一石を投じる革命的な本なのです(笑)。
もう1つ強調したいのは、でもこの本はゴールではないということ。この本に書いてあることをうまく使って、多くの人に音楽をより楽しんで欲しいですね。

—- 音感トレーニングの第二弾も執筆中とか?

友寄 次の本はやや難易度を下げ、より多くの方に親しめる内容になると思います。よく聞かれるんですが、”音痴”というのはまた別の次元の話なんです。どんなにきちんと音程を理解していても、発声は別の問題。ではどうしたら歌が上手く歌えるようになるか、その辺りも第二弾では触れていますので、お楽しみに。あとはリズムについても書きたいことが山ほどあるので、将来はそんな本も書いてみたいですね。

—- ありがとうございました。

※本インタビューは『ミュージックトレード2012年3月号』からの転載記事となります。

大人のための音感トレーニング本

友寄 隆哉

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1959年8月4日、沖縄県那覇市生まれ。ジャズ・ギタリスト、作編曲。クラシック・ギターを大沢一仁氏、ピック奏法による現代ギター、音楽全般を高柳昌行氏、作編曲を佐藤允彦氏に師事。1984年~1989年ジャズ、ロック・ギター教室”SUN POWER MUSIC”を主宰。1994年より、全楽器対象のジャズ・アドリブ・トレーニング教室として再開。2000年より、ホームページ「友寄隆哉のジャズはなぜ死んだか?」を展開。2002年より全国へ向けて、全楽器対象のジャズ・アドリブ・トレーニング通信講座を開始。自作CD『友寄隆哉作品集全4集』、『The Old Songs』などを著者ホームページ及びCD BABY(米国)からの通信販売、iTunes Music Storeのダウンロード販売にて発表。2010年、ホームページ名を「友寄隆哉 and all that”JAZZ”」に改称。沖縄在住。

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