さっき聞いた曲の記憶が消されてしまうような、ラビリンスを仕掛けた―伊藤ゴロー『POSTLUDIUM』インタビュー

コラム by 土屋綾子 2013/12/04

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伊藤ゴローが12月4日(水)にSPIRAL RECORDSよりソロ・アルバム『POSTLUDIUM』を発売する。銘打たれた「透徹」という言葉にふさわしい、冬の朝のように凛とした雰囲気がありながらも、同時に降りしきる雪の中を漂泊するような気持ちにもさせられる美しいインストゥルメンタルだ。今回、伊藤ゴローにインタビューを行い、『POSTLUDIUM』制作の裏側やその意図などについてお答えいただいた。

―まずは『POSTLUDIUM』制作のきっかけについてお聞かせください。前作『GLASHAUS』は全員ブラジル人ミュージシャンが参加されていましたが、今回はSOIL&“PIMP” SESSIONSの秋田ゴールドマンさん(b)、丈青さん(p)、またドラマーの千住宗臣さんなど日本のミュージシャンが主に起用されている点について、その理由や経緯などがあればお聞かせください。

SPIRAL RECORDSでのアルバム制作は、何処でなにを録るか?という原理原則のもとにプロジェクトを進めています。
今回は自分の住む東京をレコーディングの場所として選びました。よって、必然的に東京のミュージシャンにお願いしようということになりました。またチェロは韓国でいつも一緒に演奏している素晴らしいチェリスト、Choi Jung Wookを起用しました。
今回のメンバーである秋田くん、ドラムの池長さんとはこれまでも何度か一緒にレコーディングやライブで共演していますし、千住くんは4年前の原田知世さんのツアーで一緒に演奏したことから、今回もお願いしました。ピアニストの澤渡くんとクラリネットの好田くんとは共演は初めてでしたが、随分前に一度彼らの演奏を聞いたことがあって、今回のアルバムには絶対に参加してほしいと思っていました。ソイルの丈青くん、鳥越くんはSPIRAL RECORDSから今回のアルバムのイメージと合うのではないかと、提案をされました。

―前作『GLASHAUS』に続き、静謐な楽曲がそろったアルバムになっていますが、前作との対比として意識していることはありますか?

『GLASHAUS』との対比は特に意識していたわけではありませんでした。ただ今回は、統一感のあるアルバムにしたいということを少しだけ意識しました。『POSTLUDIUM』は曲作りの隠しテーマみたいなものがあって、倚和音(いわおん)や変位されたハーモニー(テンション・コードという解釈ではなく、揺れるコード)などを澤渡くんと探りながら録っていきました。

―楽曲を聴かせていただいて、まさに「透徹」という言葉がピッタリと思いました。それは同じモチーフが繰り返され変化していくというクラシック的な手法が効果的に取られていながらも、インプロビゼーションの要素を含ませているためなのではと思いましたが、曲作りでこういった「緻密さ」と「即興性」をどのように同居させ構築していったのでしょうか?

「Opuscule」と名前を付けた曲は僕のギター、ピアノ(澤渡くん)、チェロ(チェさん)、バスクラリネット(好田くん)のカルテットで、フリー・インプロビゼーションで録ったものを断片化し作品にしました。前述のように、これはアルバム全体を一つの固まりに戻すための仕掛けのようなものです。つい先ほど聴いた曲の記憶が消されてしまうような、そんな錯覚を味わってほしいな、と思いました。ラビリンスを仕掛ける感でしょうか。

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―レコーディングの際、ギターを曲によって使い分けたりなどはしましたか?またお使いのギターは何でしょうか?

全曲デヴィッド・デイリーというアメリカのルシアーのギターを使っています。

―「POSTLUDIUM EP」ではスパイラルホールでライブ・レコーディングされていますが、この会場を選ばれた理由とレコーディングで意識された点をお聞かせください。

スパイラルホールは多目的なホールで、音楽専門のホールのような音響は得られませんが、この天井が高くて四角い空間には独特の響きがあり、DSDレコーディングのチャレンジに適しているのでは? ということで選びました。
時間を割いたのは楽器の置き場所ですね。録った音を確認しながらピアノを移動したり、エンジニアの奥田くんとホールの中をあちこち移動し、試行錯誤するのにレコーディング時間のほとんどを使った気がします。

―タイトルの『POSTLUDIUM』とは「後奏曲」、礼拝後の退場曲などという意味がありますが、このタイトルにした理由をお聞かせください。

まず一番には語感です。また、POSTLUDIUMという文字の並びも、「後奏曲」という意味以上に僕を刺激する言葉です。
そして、僕が好きなシルベストロフというウクライナの作曲家がPOSTLUDIUMという曲をいくつか作っていて、以前僕のソロアルバム『Cloud Happiness』でカバーもしているのですが、それに影響されたところもあります。

―ありがとうございました。

Goro Ito《POSTLUDIUM》

  • 発売日:2013.12.4
  • 定価:2,857円(税別)
  • レーベル:SPIRAL RECORDS

Goro Ito《POSTLUDIUM》EP

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※店舗・ライブ会場限定シングル

  • 発売日:2013.11.13
  • 定価:1,000円(税別)
  • レーベル:SPIRAL RECORDS

伊藤ゴロー

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作曲家・ギタリスト・プロデューサー

布施尚美とのボサノヴァ・デュオnaomi & goro、ソロ・プロジェクトMOOSE HILL(ムース・ヒル)として活動する傍ら、映画やドラマ、CM音楽も手掛け、国内外でアルバムリリース、ライブを行う。また、Penguin Cafe Orchestra《tribute》《best》、原田知世《music & me》《eyja》、ボサノヴァの名盤《Getz/Gilberto》誕生から50年を記念したトリビュート盤《ゲッツ/ジルベルト+50》など、アルバムのプロデュースも行う。また、故郷の青森にある青森県立美術館5周年を記念した『芸術の青森展』の「私を青い森へ連れてって」に「TONE_POEM青の記憶サウンド・インスタレーション」で参加、2012年同館で開催された『Art and Air ~空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語』のサウンドトラックを担当する。2012年に〈SPIRAL RECORDS〉からリリースした《GLASHAUS》は高い評価を獲得、ロングセラーとなる。同年の年末には『伊藤ゴロー with ジャキス・モレレンバウム スペシャル・デュオ・コンサート』を草月ホールで開催。近年は原田知世と歌と朗読の会「on-doc.」での全国ツアーや、詩人の平出隆との「Tone Poetry」を開始するなど、多岐にわたる活動を展開している。2013年12月、3rdソロ・アルバム《POSTLUDIUM》を発表。

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